週末の過ごし方

マッチこと、近藤真彦の現在地。
モータースポーツとエンタメに情熱を注ぐ男の横顔

2026.08.26

マッチこと、近藤真彦の現在地。<br>モータースポーツとエンタメに情熱を注ぐ男の横顔

近藤真彦の1年は、相変わらず飛ぶように流れ、またたく間に過ぎていく。

タレント、レーシングチーム監督、日本レースプロモーション会長という3つの仕事をこなしていけば、365日のスケジュールなんて簡単に埋まってしまう。ただ、そんな忙しさのなかに身を置くほうが、近藤にとっては、どこか快適でリズミカルに自身を保てるのだろう。スタジオ、サーキット、会議室と、どんな場所にいても、近藤の身体からは常にいい「気」が発散されつづけている。

この日、2026719日は、富士スピードウェイでモータースポーツに賭ける近藤真彦の「気」を見ることになった。

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    レース開始の数時間前から、サーキットは大盛況。
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    会場をチェックする近藤の周りは、いつも人だかり。

2000年に発足した「KONDO RACING TEAM」は、現在、国内最高峰の「スーパーフォーミュラ」と「スーパーGT」に参戦中。この日は、「スーパーフォーミュラ」の第3戦(悪天候で順延)と第7戦が行われることになっていた。モータースポーツの現場からは久しく遠ざかっていて、久しぶりに訪れた富士スピードウェイに入って私が驚いたのは、空間の華やかさだった。ひと昔前とは一変していた。パーキングやパドックをはじめ整えられた施設、多様な屋台ブース、開かれたイベント会場……。見事なエンターテイメント空間に生まれ変わっていたのだ。

そんな運営側の努力もあったのだろう、この3日間で56千人の集客に成功していた。

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    レースのゆくえは一瞬の判断に左右される。ゆえに表情は真剣。
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    近藤率いるプロ集団の動きには、まったくの無駄がない。

チーム監督であると同時にレースそのものを盛り上げる役割を背負っている近藤は、こう言う。

5年、10年前はお客さんが全然入ってなかったんです。でも、ピットとドライバーの無線(チームラジオ)をお客さんも聞けるようにしたり、車載カメラの映像を見えるようにしたり、いろんな工夫をみんなでしてきたんです。サーキットも非日常のエンターテイメント空間になってきて、どこかヨーロッパにも似てきた。おじいちゃんと孫が一緒に見に来るようなにぎやかな場所になってきたんですね」

会長就任3年目の近藤からすれば「早すぎる成長。もう少しジワジワといきたい」というぐらいの進化だった。

残念ながら、この日の「KONDO RACING TEAM」のレース結果はふるわなかったが、各所で熾烈(しれつ)なバトルが繰り広げられ、レース自体は大いに盛り上がった。チーム監督としては納得いかずとも、プロモーションとしては大成功というところだったのだろう

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この日のレースを終え、張り詰めた空気が少しほぐれる。その胸中は……。

ひとしきりレースの話を重ねたあと、近藤真彦の現在地について尋ねる。2年前のこの日、近藤は2日間の武道館ライブを行い、成功を収めていた。その日からちょうど2年、つまりはこの富士でのレースの日が62歳の誕生日だった。ピット前では、空き時間にバースデーケーキも手渡された。

60代に突入して丸2年、近藤はどんな日々を過ごしてきたのだろう。

「なんだかデビューした頃の2年間に似ていたかな。次から次へと仕事を消化している感じが。1718歳のときは、それこそ分刻みで仕事をしていて、『次の現場はどこ?』『次の仕事は何?』っていうのを繰り返していた。それと同じようなペースでこの2年も動いていた気がする。自分のプロダクションで、自分のレーシングチームで、契約や仕事の話をしていくわけだから、やはり忙しくなりますよね。
もちろん年齢的なこともあるから、17歳のときとは違います。あのときの勢いとも違うし。あの時代は、とにかく目の前のプログラムを消化していけば、たとえ雑な仕事をしていても、『マッチらしいね』なんて変な評価のされ方をした。でもいまは、雑な仕事をしたら、もう『マッチらしいね』はない。だからどこかで、『40年以上この世界に身を置いている人』と思われなきゃという意識がちょっと強くなっていますね」

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    インターバルに行われた近藤の誕生日祝い。多くのファンが詰めかけた。
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    用意されたバースデーケーキを前に近藤も笑顔。おのずと周囲も明るくなる。

エンターテイメントに対するスタンスも昔とは大きく変わったと言う。

「昔みたいにいい時間帯の番組だけを選んで、『こういうテレビ番組には出ない』みたいなのがなくなったんです。60歳を過ぎてそういう境界線みたいなのがなくなった。たとえば、ぶらり旅のような番組でも、若手芸人の人たちとやったりすれば、それはそれですごく刺激を受ける。自分で番組を持っているような芸人さんって頭の回転が早いから、カメラが回っているときなんかは彼らに僕が負けちゃうわけです。そういう番組もまたすごく勉強になる。昔はどこか斜に構えているところがあって出なかったわけですが」

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この日はレースの合間にトークショーにも登壇。まさに八面六臂(ろっぴ)の活躍だ。

いま近藤は、集中的に仕事を入れたあとは、「体が資本なんで、健康のことを考えるとさすがに休みなしで働くわけにはいかない」と、中2日空けて休むような日を設けている。そこも10代のときとは違うところだ。

「ただ寝るだけの日もあれば、運動する日、釣りに行く日、酒を飲むだけの日もあります。そんな自分の時間を作ることが次の仕事のエネルギーになっている。前後多少辛いスケジュールになっても、完全に自分を解放する日はすごく大事で、無理にでも作るようにしている」

この富士でのレースの翌々日から、近藤は、国際フォーラムでの2日間のライブを行うことになっていた。5千人を前にした大きなライブを控えながら、2日前のこの瞬間は、レースのことだけを考えている……。ライブに向けての準備や調整が心配になってくるが、百戦錬磨のマッチは、さりげなく言う。

「普通の人はたぶんそうかもしれない。でも、僕はこのリズムに慣れているから。そのかわり僕は風呂場まで使ってますよ。風呂場は僕のリハーサルスタジオなんです(笑)」

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近藤真彦(こんどう・まさひこ)
1964
年生まれ。歌手、俳優、レーシングチームオーナー兼監督、実業家。1979年テレビドラマ『3年B組金八先生』でデビュー。1980年以降はソロ歌手として、『スニーカーぶる~す』『ギンギラギンにさりげなく』『ハイティーン・ブギ』『ケジメなさい』『愚か者』などなど、ヒット曲を多数発表。現在もコンサートやディナーショーで多くの観客を魅了し、そのスター性は健在。小誌では「マッチと町中華。」でおなじみ。

一志治夫(いっし・はるお)
ノンフィクション作家。モータースポーツの著書として『たった一度のポールポジション』『デッドヒートは終わらない』(いずれも講談社)。89年より1年間イタリアに在住。80年代から90年代にかけてヨーロッパのスポーツを取材する。

Text: Haruo Isshi
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)

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