オーツカの靴。
[世界が見ほれる、日本の逸品。]

2024.12.02

日本最古のシューズメーカーが、技術の粋を集めた本格紳士靴。

日本の逸品2_オーツカの靴 400_1
写真右のM5-300は、端正なたたずまいに加え、底付けの縫い糸を目立たせない装飾的な「目付け」や、脱ぎ履きが多い日本の生活習慣を考慮したかかとの補強的意匠「半二重」など、細部にまで繊細な心遣いが見て取れる。左のM5-1503も内羽根のストレートチップだが、「150年ラスト」を採用した一足。明治から150年間、日本人の足を研究し、膨大なデータから導き出された靴型は日本人の70%超の足の形に適合する。 右:シューズ(M5-300) ¥88,000、左:シューズ(M5-1503) ¥99,000/ともにオーツカ エムファイブ(大塚製靴 03-6410-2760

いい靴を作るためには、
意匠に必然性がある

大塚製靴のルーツは、約150年前までさかのぼる。創業者である大塚岩次郎が、西洋靴の製造・販売店、大塚商店を構えたのが明治5年。新橋〜横浜間で日本初の鉄道が開通したのは同年10月で、郵便はがきの発行が翌年であることを考えれば、その先見性に驚かされる。西洋靴を履く習慣がない時代から「日本人にとって履き良い靴を作ること」を目指し、技術の習得に励むと後年、パリ万国博覧会に出品した靴が銀牌を獲得し、日本の技術力を証明した。

今でも日本人に合った靴作りという本質は不変で、〝匠の技〟は継承されつづけている。例えば、コバに刻まれた「目付け」は、底付けする際に生じる出し縫いのステッチを目立たなくする意匠。また、Uチップなどに用いられる、革の内部を手で縫い通す〝スキンステッチ〟等にも、受け継がれた高度な技術が見て取れる。しかし、それらは己の技能を誇示するものではなく、「いい靴を作るために、それを使うことが必然である」という原理原則に基づいている。大塚製靴を象徴するディテールのひとつ「矢筈(やはず)」仕上げも含めて、すべての意匠に意味と目的を内包する〝質実剛健〟さは、日本人の気風を映し出すものだ。

※下に本文が続きます

伝統を鮮やかに更新する
〝進取の精神〞とは?

大塚製靴の東京工場は、2017年に池上本門寺近くに移転。レディメイドのフロアには、平均年齢40代の若手スタッフが約20人、ビスポークのフロアは、50代を中心とした熟練工6人が作業を行う。既製靴であっても、ビスポークさながらのハンドメイドも多く、またひとりで複数の工程に携わるため、おのずと習熟度も深まる。ときには、同社出身の名工が指導に訪れるなど、伝統は連綿と受け継がれ、世代間の交流が職人の士気を高める一助となる。

伝統の継承と並ぶ大塚製靴のテーマに、〝進取の精神〟がある。常に挑戦しつづける姿勢は、日本における紳士靴のパイオニアとなった創業者と重なる。一例を挙げるとすれば、グッドイヤーウェルト製法で底付けする際、従来はリブテープが用いられていた。大塚製靴では、テープの代わりに革を中底に直接縫い付けることで、履きはじめから足になじむ方法を編み出したのだ。

また、今回紹介した「OTSUKA M-5」のような最上級ラインを展開する一方、ビジネススニーカーに代表される時流に合わせた靴もそろう。歴史や伝統におもねらず、柔軟に対応する〝進取の精神〟もまた、ブランドの根幹だ。

日本の逸品2_オーツカの靴 オーツカの作業風景7 1050_8

2017年に大田区に移転した東京工場では、レディメイド部門とビスポーク部門合わせて、20名弱のスタッフが作業に従事する。レディメイドに関しても単純な流れ作業とは異なり、ひとりで複数の工程を受け持つことも多い。美しい透明感と自然なムラ感を表現する仕上げの「手染め」加工や、グラインダーを使ってコバを慎重に削っていく工程など、職人の技量が仕上がりに直結するだけに、一瞬たりとも気が抜けない。先達の職人が後継者育成に努めており、歴史あるメーカーならではの優位性は、意欲的な若手が育つのに格好の環境と言えよう。

「アエラスタイルマガジンVOL.57 AUTUMN / WINTER 2024」より転載

Photograph: Tetsuya Niikura
Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: Ken Yoshimura
Text: Tetsuya Sato

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