週末の過ごし方
俳優・大野拓朗氏に聞いた
名作戯曲『Love and Information』の見どころ。
2026.05.15
いつでもどこでも映画やドラマを観られる時代。劇場に足を運び、その場の空気や生の演技を通して作品世界に没入できる演劇鑑賞は、いっそう特別な体験になっている。
この週末には、イギリスの劇作家、キャリル・チャーチルの『Love and Information』が、日本で初めて一般向けに上演スタート。出演者のひとりである俳優・大野拓朗氏に、作品の見どころについて伺ってきた。
演劇界のピカソが放つ、想像力をかき立てる傑作。
『Love and Information』は、世界最高の劇作家のひとりと呼ばれるチャーチルが、2012年に発表した戯曲だ。7つのテーマに分けられた、50以上の短いシーンが次々と展開する構成が特徴。膨大な情報が飛び交う時代を映し出しながら、人と人とのつながりやコミュニケーションの本質を問いかける。
ユニークなのは、構成だけではない。作中には100人のキャラクターが登場するが、セリフの配役は明確に定められておらず、上演ごとに異なる解釈が可能となっている。演出家、俳優、観客それぞれに多様な読み取りを促す実験的な作品として、世界中で高く評価されている名作だ。
「今は1回目の読み合わせが終わったタイミング。正直な話、この作品で語られる“愛”については、まだ自分なりの解釈が整っていない状況です。でも、ネットで調べればなんでもわかってしまう今の社会において、わからないものと向き合う時間って有意義だなと、改めて思いました。自由度が高いからこそ、自分の頭の中で物語の世界を膨らませる楽しみがあります」
表情や手先の動かし方が物語を理解するヒントに。
今回はリーディング劇のスタイルで物語が紡がれていく。舞台美術や大掛かりな演出を用いず、俳優が台本を手にしながら朗読を行い、言葉と想像力で作品世界を立ち上げる上演形式のことだ。大野氏がリーディング劇に出演するのは初めて。目線や手先の動かし方で感情を表現する、そんな細かい芝居にこだわってきた大野氏の実力が試される。
「表情や動きを使って芝居をすることができないため、声の情報のみでお客様にこの戯曲を伝えなければいけません。細かい芝居をすることで役の背景を伝えることを得意としていたのですが、今回はそれが一切使えないので、自分自身新しい挑戦になると思います。」
演出を手がけるのは、演出家の桐山知也氏。大野氏とは、2025年に上演された劇『海と日傘』以来、2回目のタッグとなる。
「桐山さんは、方向性を示してくださりながら、俳優の意見を受け入れて作品をつくりあげていく演出家、という印象があります。自分なりの考えをざっくばらんにぶつけて、ひとつひとつのシーンの解像度を上げていきたいですね。それから共演するほかのみなさんが持つ各シーンへの解釈も参考にしたい。みんなでつくりあげていく、そんな公演になると思います」
想像力を刺激する、まだ見ぬ楽しさが待っている。
今作のタイトルは、日本語で『愛と情報』。私たちがこの作品から得られる新しい体験とは。
「僕は声を通じて、この作品に込められた“情報”を届ける役割。それを受け取ってくださるお客さまがどんなふうな感想を持たれるかは、今はまだ想像できません。未知な部分が大きいからこそ、それを確かめる楽しさがあると思います。ただ、確信を持ってお伝えできるのは、とにかく楽しい作品であるということ。空間と俳優たちの声に身を委ねて、ぜひ作品の面白さを感じてもらえたらうれしいです」
『Love and Information』
神奈川公演/2026年5月16日(土)~24日(日)
愛知公演/2026年6月5日(金)~7日(日)
会場(神奈川)/KAAT 神奈川芸術劇場 〈大スタジオ〉
会場(愛知)/穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
料金/S席8000円/A席6000円 B席5000円(全席指定・税込)
問/L&I制作部 https://r-plays.com/produce/L_and_I
Photograph: Shohei Ishida(Blue-ly)
Text: AERA STYLE MAGAZINE
大野拓朗さんとおしゃべりしました!
「アエラスタイルマガジンの談話室」は下記のリンクからお聞きいただけます。