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映画『Michael/マイケル』に見る伝説のファッションアイテムとは?
ファッショントレンドスナップ 222
2026.06.16
映画『Michael/マイケル』が日本でも公開され、そのすさまじい盛り上がり方が個人のSNSや各メディアで日々拡散されています。生前のマイケル・ジャクソンを知っている世代も知らない世代も一緒になってヒートアップしているのを見ると、キング・オブ・ポップスの称号がこれほどふさわしい人はいないと断言できます。
今回は、SNSやTVなどではあまり触れられていない映画『Michael/マイケル』のなかで使われた衣装、ファッションアイテムについてフォーカスしてみたいと思います。
マイケル・ジャクソンのコンサートの衣装については、曲とセットになりマイケルのスタイルを作り上げていました。そのパフォーマンスをミュージック・ビデオ(以後MV)や今回の映画『Michael/マイケル』で見直すと、彼や衣装デザイナーが足元の演出(スタイリング)にこだわっていたことがわかります。有名なのは、キラキラ光る白いソックスと黒い靴。
※アルバム「スリラー」が発表されて時点ではクリスタルのついたソックスは履いていない
映画『Michael/マイケル』では、「今夜はビート・イット」「スリラー」のMV撮影シーンのなかで、明らかに足元の動きとマイケルの存在感を強調するスパイスとして白いソックスと黒い靴が使われているように見えます。暗くなりがちではっきりしない足元の動きをこのコントラストが、際立たせていました。
こちらは、映画『Michael/マイケル』の中で「今夜はビート・イット」を歌うシーンの足元のクローズアップ。
ネット検索すると、マイケル・ジャクソンがMVで履いていたのは、アメリカの靴ブランドG.H.BASS社という記述が上がってきます。またアメリカのフローシャイム社の靴も使われていたという記述も。「スリラー」のMVでは甲の部分が深いタイプのローファーを履いていたように見えます。ここだけ見るとG.H.BASS社の代表的なローファーとはデザインが違うような気がしますが、断定はできません。
ちなみにアメリカのG.H.BASS社のオフィシャルサイトには、スリラーのMVのオープニングで使われたとの表記がありますが、肝心の掲載画像を見ると、これが真実かどうかは疑問が湧きます(オフィシャルサイトの画像ではパンツの色が黒。スリラーでマイケル・ジャクソンは赤いジーンズをはいていたはず?)https://www.ghbass.com/pages/our-story
ただ、私的には映画での青年期のマイケル・ジャクソンの自宅でのファッションを見ると、典型的なアメリカのティーンエイジャーのスタイル。ブルー ジーンズに黒い靴にシャツというコーデだったので、靴は当時において最も流通し、人気の高かったG.H.BASS社のローファーを普段から愛用していたのでは?と勝手に想像しています。
映画『Michael/マイケル』のなかの「今夜はビート・イット」のシーンでは、明らかに黒い典型的なデザインのローファーを履いているのがプレス用の画像から判断できます。これが仮にG.H.BASS社のものだとしたときに、ではこのデザインのローファーが過去に存在したかというマニアックな疑問が湧いてきます。
上にある映画『Michael/マイケル』のなかでの「今夜はビート・イット」の画像をもっとクローズアップするとローファーの足の甲のサドルに空いている穴飾りのデザイン(半月ではなく、鳥が飛んでいるようなデザイン)で、その両端にビーフロールと言われる縫い目が無いモデルは、現在のG.H.BASS社の日本の公式オンラインショップには存在しません。ここまで、盛り上げておきながらの、大どんでん返し!
私が個人的に調べると、謎が解明。実は80年代前後に映画と同じデザインのG.H.BASS社のローファーを発見したのです(上の画像)。
この映画は、街並みや家のなかのインテリア、登場人物の容姿から体型、服など細かく再現していると聞いているので、この靴をあえてこのシーンで履かせているのは、当時のマイケル・ジャクソンが似たものを履いていたと考えていいと思います。
ここで、あの激しいダンスに革靴のローファーをなぜ履くのかという疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。黒いスニーカーでもいいのではないかと考えるのは自然です。
私なりのこの答えのひとつが、G.H.BASS社のローファーは履き込むとソールも甲の革もとても柔らかくなるので、激しいダンスに使ってもスポーツソックスを履いていればそれほど足に負担がないのでMVで履いてもOKではないかという考え方。この柔らかい履き心地を生むのは、G.H.BASS社のローファーが独自の足を包み込むような独自の製法で作られているからで、特に80年代のものは、底材がラバーだったものがあり、スニーカー感覚に近い感覚ではけたのでは?とも考えられますが、裏付けになるものはありませんので、あしからず。
こちらが現在日本で手に入るG.H.BASS社のローファーの代表的なモデル。ソールはレザー(革)になっています。
左が最も有名なデザインのローガン、右はサドル(甲の部分に付いた革のパーツ)の両端が丸められ太い縫い糸で留められたラーソン。
最後に、ステージ衣装についての小ネタを。映画『Michael/マイケル』では、彼は士官クラスが着るクラシックな軍服(軍人用の礼装に近いものでナポレオンジャケットなどと呼ばれることも)をアレンジした衣装がたびたび登場します。
私は、このチョイスは、ステージ上でマイケル・ジャクソンが、自分が指揮官であるということ、特別な存在であることを暗に示したいからなのではないか?と想像しています。それと痩せている体のラインを隠し、ステージで見栄えが良く、りりしく、気品の高さまで伝えることができるのが気に入っていたのではないかとも……。
※本人がそうしたことを発言した記録を見つけたわけではなく、あくまで私の妄想に過ぎません。
マイケル・ジャクソンが着ていた軍服をアレンジした衣装は、専属のデザインチームがオリジナルで作っていたものがほとんどで、その際使っていたトルソー(衣装製作やディスプレーで使う足と頭がないマネキン)がネット上で確認できますが、そこにはサイズが36と印刷されています。メーカーによって実寸サイズは異なりますが、60〜70cmくらいと言われていることを考えるとかなり痩せていたことがわかります。
※身長は約175cmくらいと言われています。
アメリカの雑誌「Esquire The BIG BLACK BOOK」には、マイケル・ジャクソンが1988年のロンドンのコンサートの前に、車でサヴィル・ロー通りの角に立つ老舗の仕立屋ギーブス アンド ホークスの前を通り過ぎたとき、ショーウィンドーに飾ってあった本物の外交官用の礼服(宮廷服や軍服をアレンジしたデザイン)に感動し、それを元にアレンジした礼服をオーダーしたという記事が掲載されていました。インタビューに答えたのは、当時その製作に携わったギーブス アンド ホークスのギャリー・カー(Garry Carr)で、なんと彼のウェストは当時28インチ(約71cm)で、宿泊先のホテルのスイートルームで10分ほどで採寸とディテールを確認したと語っています。
マイケル・ジャクソンがオーダーしたジャケットとパンツは、金糸を豊富に使った最上級仕様の軍用礼服をアレンジしたオリジナルデザイン(軍服を民間人がオーダーすることは原則できない)だったとか。これをなんと約2週間で仕上げて納品したと書いてあります。
このギーブス アンド ホークスの仕立てた衣装は、明らかにほかのステージ衣装とは全く違うオーラが出ています!
※英国海軍や陸軍の一般的なユニフォームのオーダーでさえ最低約8〜10週間はかかる
映画公開情報
<タイトル> Michael/マイケル
<配給>キノフィルムズ
<公式HP>https://www.michael-movie.jp
<公式X>https://x.com/michaelmovie.jp
全国公開中
Photograph & Text:Yoichi Onishi