特別インタビュー

サステイナブルを着る時代。
エコアルフ創始者のミッションとは?

2022.07.11

サステイナブルを着る時代。<br>エコアルフ創始者のミッションとは?
ブランドキャッチコピーのひとつ、Be part of the changeの前に立つハビエル・ゴジェネーチェ氏。「大切なのは、ストーリーテリングではなくストーリードゥーイング。行動あるのみです」。心揺さぶられる言葉だ。

2022年6月のピッティでも、会場目抜き通りにはサステイナブル系ブランドの大型ブースが目立ち、クラシックブランドでもSGDs的エレメントは必須となった。そのなかでも「BECAUSE THERE IS NO PLANET B®(第2の地球はないのだから)」という直球ブランドメッセージで躍進を続けているのがスペイン発のエコアルフだ。

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エコアルフのブース前。コロナ後のピッティ再開以来、同社はピッティスタッフ全員にブランドメッセージが大きくプリントされたユニフォームを提供しつづけており、会場全体にサステイナブルな空気を送り込んでいる。

次世代の地球のために

創業者のハビエル・ゴジェネーチェ(以下ハビエル)氏は、世界で2番目に地球を汚染しているのがファッション業界であることを憂い、子息たちの誕生を機に「真にサステイナブルなブランド」を目指して2009年にエコアルフを起業。100%再生&持続可能な素材使用のファッショナブルなカジュアルコレクションを展開してきた。近年、マテリアル業界でも開発が進んでいる再生技術を採り入れながら画期的な新製品を世に出しつづけ、創業13年目にして全世界の取り扱い店舗数は直営店含めて1500軒を見込むほどに成長した。

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創業12年目の昨年にリリースされたプレミアムラインのEcoalf1.0。 水素を利用した最新技術によるシリコンフリーの糸など進化しつづけるリサイクル素材は、単純に美しい。タイムレスなデザインでサステイナブルがスマートに着られそう。

海洋ごみを自ら回収、再生

その成長のカギはハビエル氏の真っすぐなビジョンと大胆な行動力だろう。まずは毎年800万トンものゴミが捨てられるという海洋ごみにスポットを当て、UTO(アップサイクリング・ジ・オーシャンズ)の名の下に2015年にエコアルフ財団を設立。スペイン海域の漁業関係者に呼びかけプラスチックやナイロン廃棄物を回収・分別・再生し、製品化するというリサイクルプロジェクトを組み立てた。次に2018年には世界の海洋ゴミの60%が滞留しているというアジアの海をターゲットにタイ政府協力のもとに同様の活動が始まり、2019年には日本にもその輪が広がっている。

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再生糸製造のパイオニア、The Loop™とのコラボにより再生コットン100%のTシャツとスエットが今期からエントリー。地中海風なブルーやオレンジと思いきやLost Colorsがテーマの気候変動により消えつつある珊瑚や青い海だそう。

リサイクル素材の魅力と可能性は無限大

展示場にはリサイクル繊維以外にも、古タイヤからサンダル、コーヒー粕からマルチ防寒ジャケット、サトウキビからスニーカーなど、まるでナゾ解きみたいに洗練された製品からユニークな原料名が飛び出してくる。「再生素材で美しい服作り、が当社のミッションです。作ることでゴミが減り、売れることでさらに地球をキレイにできます」と教えてくれるハビエル氏の頭脳は高速回転しているのだろう、驚くほど早口だ。

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こちらはサトウキビの靴底、アッパーには海洋から回収&アップサイクリングしたナイロンやポリエステル繊維使用のスニーカー。パイナップル使用のスニーカーなどもある。

透明性と共感の先にある未来

同社が力を入れているもうひとつのミッションが知識の共有だという。ハビエル氏は年間200以上の会議やセミナーに参加し、最新技術の情報などを積極的に公開している。その透明性は一ブランドを超えた価値を生み出し、共感を呼び、人類のサステイナブルな未来につながっているに違いない。

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会場内で行われたイべントでは、気候変動や海底汚染の驚くべき現状、2030年カーボンフリー達成目標にコミットするエコアルフ財団の活動などについてハビエル氏が明瞭な映像と数値で解説。軽快な語り口にみんなが引き込まれた。

Photograph:Mitsuya T-Max Sada
Text:Michiko Ohira

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