紳士の雑学

原宿から世界へ 日本ポップカルチャーの旗手が語る
「人がメディア」の時代のカルチャーとビジネスと。[前編]

2017.08.29

原宿から世界へ 日本ポップカルチャーの旗手が語る<br> 「人がメディア」の時代のカルチャーとビジネスと。[前編]

2011年に自主イベント『HARAJUKU KAWAii!!』を全国で開催。13年には、きゃりーぱみゅぱみゅの世界ツアーを成功させ、14年からは『MOSHI MOSHI NIPPON FES』を行うなど、東京・原宿の街が生み出すファッションや音楽、カルチャーを発信し、世界に広めてきた。現在35歳の日本ポップカルチャーのキーマンであるアソビシステム代表取締役 中川悠介氏に、いまの時代とビジネスについて尋ねた。

ゴールは決めず、自分たちだからできることをする。

──まず、アソビシステム設立の経緯を教えてください。

高校生のときからイベントの企画や運営をしていたんです。大学生のころには先輩と一緒に会社を作ったんですが、あまりうまくいかなくて。
卒業後、25歳で自分の会社を立ち上げました。
就活もちょっとしてみましたよ。でも、それまで自分でイベントプロデュースなどをやってきて、明確にやりたいことがその延長線上にあったんですね。企業に勤めることと天秤にかけたときに、イベントをやりたい、人のプロデュースをやりたい、自分でやっていきたいという気持ちのほうが強かったんです。

──その後、急成長していった要因をご自信ではどう捉えていますか?

うーん、急成長とか自分たちでは思わないんですよね。何を基準に成長とか速いと言われているかわからないし。日々の積み重ねですよね。その結果がいまなので。
そもそも、自分たちでレールを敷いてゴールを決めるのはやめようと思ってるんです。
ノミの法則っていうのがあるんですけど、本来高くまでジャンプできるノミにコップをいったんかぶせてしまうと、その後コップをはずしてもその高さまでしか跳べなくなるって話です。
やらされているのではなく、自分たちでやっている会社なんで、勝手に決まった枠にはまらないというのは重要なんじゃないかと思っているんです。

原宿は場所ではなくカルチャー。

──枠を決めず、なんでも面白いことをやっていこうっていう感じですか?

こういう仕事なので「アソビシステムはなんか面白いことやってていいよね」なんてよく言われるんですけど、興味ありきで面白いことだけをやっているという意識ではないんです。それよりも「アソビシステムでないとできないこと」を意識しています。
たとえば、原宿の街でのイベントなんかは自分たちだからできるという思いはありますし、逆に言えば、漠然と面白くてもうかるってだけの理由では仕事にはしないですね。
所属のタレントにいくらよさそうな話がきても、その人がもっているカルチャーにはまらなければ出さないってことなんです。

──そもそも、なぜ、原宿だったのですか?

僕らが学生だったころって、渋谷がすごく盛り上がっていたんですよね。でも自分は原宿が好きだったんです。
原宿は、自由に表現できる、何かを作り出せる街。それが面白いなと。
たとえば、当時渋谷にいる女の子はルーズソックスにガングロとか、ひとつの決まりみたいなのがあった。けど、原宿は着ている服からやっていることから自由でバラバラ。バラバラだけど、でもなんかまとまっているものがあるんですよね。それが原宿ってところかなって。
それに、原宿って現在の所在番地にある地名じゃないんですよ。場所ではなくひとつのカルチャーのことだと思っているんです。

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『青文字系カルチャー』が生まれた背景。伝える力、うそがないストーリー。

──その原宿カルチャーを発信するときに考えていることとは?

それは、そのシーンをきちんと理解して伝えていくってことですかね。
たとえばかつて『JJ』『CanCam』などの「赤文字系カルチャー」がメインにあったんです。そこで僕らが発信する際に作ったのが「青文字系カルチャー」っていう言葉。
メインの反対側にあるファッションや人、そんなシーンのことを伝えたかったんですね。

メインのカルチャーって伝えるまでもなくみんなが理解できる、でもサブカルチャーって、自分たちにしかわからないからサブカルチャーなんですよね。
それを、どう表現したらわかりやすく伝わるかを考えることが大事な気がしますね。

そうやって発信することで小さな自分たちだけのサブカルチャーだったものが、カルチャーとして広がって根付いていくんだと思うんです。

──カルチャーとして根付くという意味をもう少し教えてください。

何かを発信するときは、ブームでなくカルチャーにしたいと考えているんです。
ブームって一過性なものですよね。
きゃりーぱみゅぱみゅの場合でも「ああ、はやってるよね」で終わりはなく、そこにうそがないストーリーがあって、ファンがちゃんといて、コミュニティーできる。そうやってカルチャーになっていくんだと思うんです。
うそがないってことが重要で、たとえば去年まで渋谷にいた子が「原宿KAWAii」ってデビューしたならうそですよね。ちゃんと原宿が好きで、そのスタイルに共感する人たちがいて、はじめてカルチャーができるのかなって。

後編へつづく>>

プロフィル
中川悠介(なかがわ・ゆうすけ)
アソビシステム代表取締役社長。1981年、東京生まれ。イベント運営を経て、2007年にアソビシステムを設立。「青文字系カルチャー」の生みの親であり、原宿を拠点に地域と密着しながら、ファッション・音楽・ライフスタイルといった、原宿の街が生み出す“HARAJUKU CULTURE”を、国内はもとより世界に向けて発信しつづけている。自主イベント『HARAJUKU KAWAii!!』を11年から全国各地で開催し、近年は、KAWAIIのアイコン・きゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーを成功させた。新プロジェクト「もしもしにっぽん」を発表し、日本のポップカルチャーを世界へ向け発信すると同時に、国内におけるインバウンド施策も精力的に行っている。また、きゃりーのプロデューサーでもある中田ヤスタカと共に未成年でも楽しめるクラブイベントを神社、世界遺産などさまざまな異色のロケーションで開催するなど、地方創生にも力を入れている。

Photograph:Shota Matsumoto
Text:Kota Shizuka

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