旅と暮らし
サウナの聖地で体験
このホテルのスパ施設こそ、まさにオアシス!
2017.09.01
Brenners Park-Hotel & Spa(ブレナーズ・パーク ホテル&スパ)
ドイツ/バーデン=バーデン
ドイツのフランクフルトから鉄道で約90分の場所にあるバーデン=バーデンは、ローマ時代から栄える温泉保養地。バーデン=温泉地を意味し、つまりは“温泉・温泉”と街の名物そのものが地名となっている。街には12の源泉があり「カラカラ・テルメ」と「フリードリヒスバード」という2つの温泉施設が名所。前者は温泉と8つのサウナからなり、後者は17種類の温泉、サウナ、シャワーを巡る、いわば温泉ホッピングといった内容だ。
大のサウナ好きの私にとって、バーデン=バーデンは長年憧れの地であった。何種類ものサウナや水風呂を好きなだけ堪能できるとは、サウナ好きの天国。そう思い焦がれていたところ「ブレナーズ・パーク ホテル&スパ」というホテルの存在を知り、渡航を即決した。「ブレナーズ・パーク ホテル&スパ」は世界の厳選されたラグジュアリーホテルを集めた「オトカ―コレクション」に加盟しており、期待が高まったからだ。そして結果的に、同ホテルへの滞在はバーデン=バーデンの旅を“お後が最高”に終わらせてくれたのだった。
旅の前から、2つの温泉名所が混浴であることは知っていた(曜日によっては男女別)。それでも自分は平気だと思っていたし、むしろそれが本場のサウナだと郷に従う気持ちだった。実際に行ってみると、サウナに存分に入る快楽たるや……。特に「カラカラ・テルメ」で屋外に設置されたロッジ型サウナと外のデッキチェアを繰り返すことにははまった。冷気は10℃以下。肌に感じる温冷の差は、いまでもその気持ちよさを思い出せる。
しかし、全裸混浴については無理をしたなというのが正直なところ。恥ずかしがるほうが不自然という空気感のなか、時間は長く感じた。現地らしさはあったけれど「ブレナーズ・パーク ホテル&スパ」のスパ施設のほうがやはり快適だったのだ。そして何より、このホテルは美しかった。
「ブレナーズ・パーク ホテル&スパ」の歴史は1872年にさかのぼる。“ステファニー温泉”と呼ばれた施設を宮廷の服飾デザイナーだった男性が買い取り、ホテルを開業させた。丁寧にメンテナンスされているものの、本館に大きなリノベーションはない。145年間受け継がれる貴婦人のような外観は、眺めているだけで“ここに泊まっている”という満足感でゲストを満たす。
抜群のロケーションもホテルが美しく見える大きな理由。街のシンボルである公園、リヒテンタラー アレーに面し、ホテルのプライベートガーデンも広大だ。訪れた11月前半は紅葉の時期。落ち葉のじゅうたん越しに眺める古きよき建築は、コーヒー片手の散歩をドラマチックにした(恋人と来るのがベスト!)。部屋のテラスに出ると小川の向こうに色とりどりの木々が茂っていた。回想すると、次は新緑の季節に行こうかと再訪への気持ちが高まるのだ。
そして、ここには世界トップクラスのスパ施設がある。2014年にはスパ専用棟「ヴィラ・ステファニー」がオープンし、トリートメントはもちろん、減量プログラムやキックボクシングの体験、医師や歯科医による診断を受けることも可能。足の爪から歯までピカピカになれるので、1週間ほどかけてスッキリ生まれ変わりたい人はお試しを。
私は「ヴィラ・ステファニー」ではなく本館に泊まったものの、スパのトリートメントが素晴らしかった。施術をしてくれたのは同スパで25年働くという女性。実はスパに対して少し苦手意識があるため、最初は緊張していたものの、肉厚な手で肌をなでられるとすぐに心がほどけた。いぶし銀のマッサージの気持ちよさに寝落ちし、起きると副交感神経が活性化されたのか妙にご機嫌に。この方には再会したいと思う。
お待ちかねのサウナは大好きなスチームサウナを含めて3種類があり、サウナ後にマストの水風呂、天井からのかけ水、シャワー、リラクゼーションスペースと申し分ない構成。しかもシャワーにあったアメニティーは英国のオーガニック スパ ブランドのバンフォード。さすが、サウナの聖地にある最高峰のホテルだ。街のサウナと同じく混浴だけれど、タオルを巻いて入れるので気持ちは楽。翌週にでも「ブレナーズ・パーク ホテル&スパ」に戻りたいくらいのサウナ体験だった。
朝食ビュッフェでは15種類以上のパンが並び、特に酸味の利いた黒いドイツパンはひときわおいしい。ほかにドイツらしいニシンの酢漬けやコールドミートなど、朝でもお酒が欲しくなるなあ……と感じていたら、しっかりゼクト(ドイツのスパークリングワイン)もビュッフェ台に並んでいた! 庭園の隣にはミシュラン二つ星の「ブレナーズ・パーク レストラン」もあるので、こちらも見逃せない。
2泊3日の滞在でたくさん食べていたにもかかわらず、チェックアウト時には体重が減っていた。サウナ、万歳!である。フランクフルトはヨーロッパのハブ空港なので、欧州旅行の前後にまたバーデン=バーデンに足を運びたい。身体と心のデトックス効果を考えると、それは価値ある寄り道だ。
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。