旬のおすすめ
これは、買っていい。
[第2回]ライカCL
2017.12.27
ある写真家が言った。「写真には2種類ある。ライカで撮った写真とそれ以外だ」……なんていうのはうそだけど、ライカ好きならきっとそう思っているに違いない。
確かにライカの写真には味がある。それは性能だけでなく、独特な撮影スタイルにもよるのかもしれない。基本的にライカは右目でファインダーをのぞき、左目は被写体を実像で捉える。こうすることでシャッターチャンスを逃さないと同時に、相手と視線を合わせることで威圧感を与えない。それが優しい表情を引き出すのだろう。新作のライカCLもそんな自然体の撮影が楽しめるカメラだ。
マニアにはM信奉派も多いが、僕はこの手のひらにも収まるような軽快なサイズが好きだ。APS-Cフォーマットに電子ビューファインダーを装備する。これは視度調整もでき、のぞき込めば老眼を周囲に悟られることもない。Lマウントのバヨネット方式なのでSLレンズをはじめ、アダプターを使えば交換レンズのバリエーションはさらに広がる。
早速、台湾旅行に試用機を連れ立った。極彩色の寺や闇に浮かび上がる夜市、しっとりとした茶芸の席などそれこそ使い倒してみてわかったのが、これが最高の“旅カメラ”ということだ。写真のクオリティーはもちろんのこと、たすき掛けにしておけばいつでも撮影でき、重い一眼レフを提げるようなストレスもない。スナップ撮影をはじめ、パンフォーカスも使えるのでじっくり撮影するのもいいだろう。何よりも提げているだけで熱い視線を感じ、時には「いいカメラだね」と話しかけられる。ライカは万国共通のコミュニケーションツールのようだ。
どうやらこれは愛機になりそう。でもいつからこの企画は“買っていい”から“買ってしまった”になったのか。この先が思いやられるなぁ。
プロフィル
柴田 充(しばた・みつる)
フリーライター。コピーライターを経て、出版社で編集経験を積む。現在は広告のほか、男性誌で時計、クルマ、ファッション、デザインなど趣味モノを中心に執筆中。その鋭くユーモラスな視点には、業界でもファンが多い。
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Mitsuru Shibata