紳士の雑学

株式会社リブセンス 代表取締役社長
村上太一インタビュー[後編]

2018.01.18

19歳で起業し、史上最年少の25歳で上場したリブセンス村上太一社長。成功報酬型の求人サイトの出発点は「もっと便利にできるはず」。以降も、社会課題を解決するためさまざまなITメディアを運営してきた。31歳、次のステージに立つ村上に話を聞いた。

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決めてるんです、リブセンスをもっと伸ばしてやるぞと

売上が上向きはじめたのはそのすぐあとだった。

2011年12月、村上は史上最年少の25歳1カ月で東証マザーズ(翌年、東証一部に市場変更)に上場した。創業から5年、初年度450万円だった売上高は15億を超えるまでになっていた。しかも、リブセンスは成功したベンチャーには珍しく外部からの資金調達を受けていない。急成長した要因を村上は次のように語る。

「社会人なら土日は休むのが普通ですが常識にとらわれることもなく僕らは土日にいちばん働いていた。学生ならではの勢いもあり、仲間とピュアに集中しきれた気がします。逆に言えば、大学生らしい生活は一切していませんけどね。起業するにはほかを全部捨ててでもやる、こうありたいを貫き通すことが大切なのかもしれません」

3年目で1億5000万円の利益を出したがその数字のすごさを実はよくわかっていなかったとも。コピー機すら当時は置いていなかった。「だって、カラー印刷はインクジェットプリンターがいちばん安いんですよ」と笑う。コストカット意識は常に高かった。「上場して変わったことはそれほどないんです。本でしか知らないような人たちと出会えるチャンスは増えましたけどね。あとは社員から『結婚を許された』『住宅ローンが組めるようになった』という声を聞いてうれしかったです」

創業から11年。多数の事業を展開してきたが、そのトリガーとなるのは社会の〝歪み〟の部分だ。たとえば、住宅購入は人生のビッグイベントなのに不透明な部分が多い。これを解決すべくスタートしたのが不動産情報サイトの『イエシル』だ。3000万件にのぼる売買・賃貸履歴などのビッグデータを活用することで物件の市場価格やその推移、推定される賃料などをはじき出す。先ごろは不動産の危険度や液状化リスクのツールも業者向けにスタートした。

「実際に始めてみて求められていたんだなという感触がありました。当社はビッグデータの解析に非常に力を入れているんですけど、データの使い方次第で改善できるものはたくさんあると考えています。新規事業は命を削るような作業ですから、次々というわけにはいきませんが今年は社内で事業案募集を再開する予定でいますね。もちろん、いまある事業もより使いやすいものへと進化させていきたい」

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Picture:名和晃平 Direction#160 2016
paint on canvas h.200 × w.200 × d.6 cm

2017年9月に「ジョブセンス」を「マッハバイト」に名称変更した。10年で浸透した名を変えることにためらいはなかった。というより、村上からして「まだ浸透しているとはいえない」。求人掲載数は9月現在で17万5000件、累計会員登録者数約168万人の業界最大級の情報サイトながら認知勝負では後手に回っているとも。ブランディングを再強化するとともに、従来約2週間要していたお祝い金を最短で採用翌日に贈呈することに。村上はこうも言う。

「最適化は社内も同様です。その人の強みを生かすタレントマネージメントをしっかりやっていく。これからの10年はチームで勝つこと、いかに強くてよい組織を作るかにも重きを置きたい。会社をより大きくしていくために変えていくところととらえています」

あるセミナーで村上は起業して九割八分はつらいことが多い、けれど、残りの二分がそれを凌駕すると語っていた。それを問うと「九割八分はさすがに盛りすぎたかも。いいことも一割くらいはあったと思います」。されど九割、それでもビジネスが楽しいと思う心は10代から変わらない。その熱量はどこから来るのか? 「多分まだダメだと思っているんでしょうね。何かが足りないと思っている。歪みを見つければ正したいと思う。自分が手がけた事業で『おっ、ハマった!』と思える瞬間は言葉では言い表せないものがあります」。それからと村上は続ける。「決めてるんですよ、リブセンスを続けてもっともっと伸ばしていくぞ、と。初年度の教訓じゃないですけど人は迷うとパフォーマンスが落ちます。逆にやろうと決めてしまえば楽なものです。あとは、どう努力していくかだけ」

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趣味でも最適を探す、徹底して追求するスタンス
料理好きが昂じてアヒージョにハマる

取材の合い間、村上は大阪出身の編集者に黒門市場について質問していた。「旅行して町の移り変わりとか観光産業の成り立ちがどう変わっていくかとか考えるのが楽しいんです」と言う。趣味もとことんまで追求する。スペインに旅したときは一日にアヒージョの店を4軒もハシゴし、料理好きが昂じていまはアヒージョ作りに凝っている。ベストな火加減は?相性のいいオイルはどれか?──ここでも最適を探している。

ともあれ、終始ニコニコと話す村上は実に幸せそうでその笑顔を見ると自然と笑みがこぼれてくる。幸せから生まれる幸せ──、社長自身がそれを体現する、これほどの経営理念があろうか。同世代にあたるアエラスタイルマガジンの読者へアドバイスをと言えば少し照れながら答える。「軸をもって生きることですかね。自分が何をやりたいか決めて突き進むこと」。30歳になったとき、目標をメモに記したという。空気を読みすぎないこと、けれど社員にもっと気を掛けること、自分の通知表をつけてもらうこと、英語力をアップすること──。「まだまだです。でも、挑戦しつづけることを大切に、カッコいい男を目指していきます」、村上はまた破顔した。

プロフィル
村上太一(むらかみ・たいち)
1986年、東京都生まれ。05年早稲田大学政治経済学部入学。同年、早大主催の「ベンチャー起業家養成基礎講座」を受講し、同ビジネスプランコンテストで優勝。06年2月、大学1年生で株式会社リブセンスを設立する。「幸せから生まれる幸せ」を経営理念にさまざまな社会課題を解決するITメディアを運営。09年大学卒業。11年、史上最年少で東証マザーズへ株式上場した。料理、絵画、スポーツ、釣り、酒蔵めぐりと多彩な趣味をもつ。先ごろは宮崎で行われたトライアスロン大会にも出場した。なお、いい意味で経営者らしからぬ(?)人を和ませる笑顔は母親譲り。その母はビジネスプランコンテスト開催の情報を息子に伝えたり、売上が立たなかった初年度、事務所に大量の食料品を送ったりと陰の立役者でもあった。

インタビュー【前編】→

Photograph:Kentaro Kase
Text:Mariko Terashima

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