紳士の雑学

「社員に目いっぱいチャンスを与えたら、会社はどこまで成長できるか。」
エブリー代表取締役吉田大成インタビュー[後編]

2018.04.19

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毎月1500本以上の動画を配信し、国内のレシピ動画メディアとして最大規模を誇る『DELISH KITCHEN』やメイクやファッションなど女性のための動画『KALOS』などの動画コンテンツを手がける「エブリー」。代表取締役の吉田大成氏は、急成長を遂げる会社の経営者としていま何を見ているのか、何に時間をかけ、どのようなサービスをつくろうとしているのかを語ってもらった。

<前編はこちら>

何が正解かわからない未来の仕事。成し遂げるために必要な能力とは。

愚直にユーザーに求められていることをやりたかったという吉田氏。人の生活の役に立つ動画、生活そのものが少し変化するようなコンテンツ、そしていつしか生活必需品になるメディアになっていきたいと言う。何より大切にしているのがユーザーからの“信頼”。「そのために、手間に思えることにこそ、徹底的に時間をかけて力を注いでいます」と話す。

「インターネットでサービスをつくると言うと、一見効率化が大事なように思われますが、それは技術面での話。ユーザーからの信頼や安心を得る部分には“どれだけ手間をかけて面倒なことを進んでやるか”が大事です。たとえば『DELISH KITCHEN』ならレシピのチェック、手順の確認、料理の仕方やわかりやすい見せ方など。肉にきちんと火の通る時間は何分で、この食材のゆで時間は何分と素材ごとにすべて決めて随時メンバーと話し合います。おいしいだけでなく、衛生面にも安心感をもってもらうためには、この部分には効率化を求めず時間を使うことを惜しみません」

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創業時4名のメンバーが2年半後の現在は200名。創業当時の2LDKに収まるはずもなく、会社は六本木へと移った。吉田氏がいま一緒に働きたい人とはどんな人だろう。面接時にはどんなことを尋ねるかと聞くと「趣味や休日の過ごし方など、仕事とは関係ない話を聞くことが多いです」とのこと。見ているのは「巻き込み力」。

「自分の好きなことをどんなふうに語るのかを見ていると、その人がどれだけ客観的に“良さ”を伝えられる人かがわかります。僕たちはベンチャー企業ですから、新しい未来をつくっていくのがミッションで、もちろん前例もありませんし、この道が正解だという保証もありません。不確定要素が多いなかで、他人が協力してくれたり、一緒にやろうと仲間になってくれるのは、その人が楽しそうに未来を語っている姿に触発されるからです。

“こんな未来をつくりたい”と語る人の熱意が力となって、人を巻き込んでいく。なので、趣味や自分の好きなことを熱く語り、それ楽しそうだなと相手に思わせられる人は、きっとのめり込めるミッションややりがいのある仕事に対しても、いろいろな人を巻き込んでいけるんじゃないかと思っています」

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メンバーに権限を渡してどこまで会社は成長できるか。僕の挑戦です。

当の吉田さんの休日の過ごし方はというと……。
「僕は──家に引きこもっています(笑)。土日は、テレビ、雑誌、ネットメディアを48時間ずっと見ている感じです。ドラマはそのクールに放送しているものすべて録りだめているので、テレビをつけっぱなしにしながら、パソコンを開き、本を読んでいる状態(笑)。ドラマも特に自分が好きというよりは、視聴率の動きを予測して、実際のものと照らし合わせるのが好きなんです。いまはこういう構成でこういうストーリーが世の中に受け入れられているんだと分析しながら見るのが趣味ですね。視聴率の予測ですか? もう数十年やっているライフワークなので、驚くほど当たりますよ(笑)。

こうやってテレビや雑誌を見まくるのも理由があります。この業界にいてその界隈の人と話していると、どうしても未来の話が多くなり頭の中が5年後10年後のことでいっぱいになってしまう。気持ちや考えが先に進みすぎて、“いま”をおろそかにしてしまうのは、実はすごく危険なことです。僕らが向き合うべきユーザーが求めているのはいまや明日の幸せなのに、僕の感覚が“いま”からズレれば、きっとサービスの内容も求められているものとかけ離れたものになってしまでしょう。コンテンツが大好きで、ずっとネットやテレビを見ていたいというのもありますが、週末は今の情報を得ることで感覚を戻す時間でもあるんです。たまにありますよね、あえて電波の入らない場所でゆっくり温泉に浸かって日頃の疲れを……みたいな宿。僕は無理ですね、もう居ても立っても居られず早く帰ろう!ってなります(笑)」

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最後にリーダーとして何を心掛けているか聞くと「社員に目いっぱいのチャンスを与えること」という回答が返ってきた。「よく社員を育成するなどと言いますが、僕は結局のところ、人が人を育成することはできないと思っています。成長する人を見ていると、誰かに育てられたのではなく、与えられたチャンスを生かして自らの力で育っているんですよね。

チャンスとは、責任を含めて権限を与えて、自分の裁量で判断して結果を出す機会のことです。成長を望む人にはその機会を与えないと、チャンスを求めてほかの会社に転職してしまうのも当たり前の時代。ですから、リーダーやマネージメントに携わる人間にできることは、成長したりチャレンジする場をひたすらに与え、その人が自ら育っていくのを見守ることだけ。

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実は、昔は陰で独裁と言われるくらいトップダウンで仕事していました。でもそのやり方では、急成長はしてもどこかで限界がある、頭打ちになってしまうんです。社員に全力でチャレンジさせられているか、人に権限を渡して会社はどこまで成長できるか。これは僕にとっての大きな挑戦でもあります。いまは独裁時代が思い出せないくらい、社員が喜んでいる姿を見ることが何よりうれしい。彼らとこの先10年20年一緒に働いていけたら幸せですが、もしそうでない道を選んだ人も『エブリーの卒業生は、どの業界にいても活躍するね』と言われる存在になってほしい。僕の目標です」

Photograph:Shota Matsumoto
Text:Noriko Ooba

プロフィール
吉田大成
2005年4月ヤフー株式会社に入社。2006年10月グリー株式会社に入社後、モバイルSNS事業、モバイルゲーム事業、プラットフォーム事業を事業責任者として立ち上げる。2010年12月 同社執行役員、2012年9月 同社 取締役執行役員常務に就任。2015年9月株式会社エブリーを創業。『Forbes JAPAN 2018年1月号』掲載の「日本の起業家ランキング2018 ライジングスターアワード」にて、第1位に選出。

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