旅と暮らし

東京の真ん中、上野の森。近代建築を巡る大人散歩
その④　国立国会図書館国際子ども図書館

2018.04.24

当時の姿をいまに伝える、明治から昭和にかけての建築。上野公園のエリアに連なるそれらを巡れば、時間や時代を飛び越えたかのような錯覚に浸れる、いわばタイムトラベル的な散歩になる。今回は、国立国会図書館国際子ども図書館へと足を運んだ。

国際子ども図書館は、国内外の児童書を所蔵。児童書を専門にそろえる図書館だ。1906年（明治39年）に帝国図書館として建てられ、1929年（昭和4年）に増築された建物を引き継ぐこの図書館。明治期ルネサンス様式の建築、その美しさを存分に楽しめる。当時の姿を残す「レンガ棟」は、東京都選定歴史的建造物に指定。平成期に増築のガラスボックス内から、当時の外壁を間近に観察できる。

正面の入り口から足を踏み入れた瞬間、美しい姿の階段が迎えてくれた。
1階から3階まで約20mに及ぶ吹き抜け。階段の優れた意匠のひとつひとつに感銘を受けながら3階まで上っていく。細かなデザインの鋳鉄製の手すり、シャンデリア、ケヤキの扉など、100年以上前の創建当時のものが残っているというから驚きだ。

3階の「ホール」と呼ばれる天井が高く明るい空間へ。ガラスに囲まれた張り出し窓を設けていて、建物の外壁やレリーフ彫刻（メダリオン）に触れることさえできる。

「本のミュージアム」と名付けた、3階のもうひとつのスペースも、この建物のハイライトのひとつ。消石灰や貝灰などによる純白の漆喰装飾が施された天井や壁。その美しさには誰しも思わず息をのむはず。

室内と書庫とをつなぐ出入り口として使われ、木製建具とコリント式の柱が残るエディキュールの箇所では、レンガ棟建物の構造体に用いられた100年以上昔の赤レンガをまのあたりにできる。

2階の「児童書ギャラリー」は、明治から現代までの児童書（児童文学と絵本）の流れを追うことのできる常設の展示室。資料を手に取って見ることができ、建築だけでなく児童書の歴史にも感心する。部屋の中央にある4本の柱は漆喰の化粧柱で、「竹小舞」という技法でやわらかな曲面に仕上げられている。

外壁は、明灰色の白丁場石（しろちょうばいし／安山岩の一種）とベージュ色の化粧レンガ（ゴマ掛けレンガ）が印象的。レンガは、縦・横を交互に重ねていく「フランス積み」と呼ばれる技法によって積まれている。

国際子ども図書館は、ここを訪れるためにわざわざ上野に足を運びたくなる、そんな魅力にあふれる場所。入館は無料。2015年（平成27年）に加わったアーチ棟も含め、新旧が共存する趣も楽しい。訪問したことがずっと記憶に残る、実にすてきな施設だ。

＜訪れた場所＞
国立国会図書館国際子ども図書館
現在のレンガ棟の建物は、1906年（明治39年）に帝国図書館として建設され、1929年（昭和4年）に増築。1949年（昭和24年）、国立国会図書館の支部上野図書館に。そして2000年（平成12年）、国際子ども図書館として生まれ変わった。安藤忠雄建築研究所と日建設計により設計、鴻池組による改修が行われ、2002年に完成した。旧建物の内外装の意匠を生かしながら、2つのガラスボックスを増築。結果、レンガ棟は明治・昭和・平成の3つの時代に造られた建物が一体になった。貴重な建築遺産を保ちながら、新しい機能と空間を融合した図書館として再生しているのが興味深い。館内には、中庭のテラス席に出て軽食やドリンクを楽しめるカフェテリアも設置。天気のいい日は、とても心地のいいスペースだ。

開館時間：9:30～17:00
休館日：月曜日、国民の祝日・休日（5月5日のこどもの日は開館）、年末年始、第3水曜日（資料整理休館日）
入館料：無料
東京都台東区上野公園12-49　03-3827-2053
http://www.kodomo.go.jp/

ジャケット￥85,000／スタジオイプシロン、シャツ￥16,000／トゥモローランド、パンツ￥26,000／セラードアー、シューズ￥46,000／ソロヴィエール（すべてトゥモローランド丸の内店 03-5220-2391）、メガネ￥36,000（サヴィルロウ／ブリンク外苑前 03-5775-7525）、バッグ￥92,000（ダニエル＆ボブ／八木通商 03-6809-2183）

掲載した商品はすべて税抜き価格です。

<<その③はこちら
 番外編はこちら>>

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Styling:Tomohiro Saitoh(GLOVE)
Hair & Make-up:Ryo(COME HAIR)
Edit & Text:Haruhiko Ito(office cars)