週末の過ごし方
アルゼンチンタンゴから学ぶいい男。哀愁を誘うジャンバラヤ
[喫茶店ランチを愛す]
2018.05.23
時代の荒波にもまれ、ニッポンのビジネスマンは今日も行く。だからこそ、ひと息つける安らぎの場所は確保しておきたい。そこで、喫茶店ランチである。心と体をほぐし、英気まで養える、そんな都会のオアシスを紹介していく。
ジャンバラヤである。パエリアでも、ピラフでも、チャーハンでもない、この素朴なケイジャン料理が食べたくなったら、向かう先は神保町である。タンゴ喫茶の名店「ミロンガ」の扉を開ける。
チリペッパーが効いているのだが、ピリ辛ではなくマイルドな辛さ。崩して食べる半熟卵やほの甘いコーンとあいまって、辛くてもどこか優しい味。しかし、なぜジャンバラヤなどを出しているのか。
「うちは喫茶店ですが、世界各国のビールもそろっているので、それに合うものという単純な理由で先代が始めたんです」と、店長の浅見加代子さん。炭火焙煎の香ばしいコーヒーとの相性は抜群だが、珍しいビールでのどを潤わせながらあじわうのも格別だ。
「まずはジャンバラヤとビールを堪能して、食後にコーヒーを頼んでくつろぐ男性も多いですね」。完璧なフルコース。どちらかではなくどちらも選べばいいのだ、大人は。
さて、ごはん、ビール、コーヒー、そしてもうひとつ、じっくりと味わいたいのがタンゴである。ここはヨーロピアンタンゴではなく、アルゼンチンタンゴ。その魅力はどこにあるのだろうか。
「センティミエントと言えばいいのでしょうか。日本人なら誰でもわかる“哀愁”という感覚が呼び覚まされる音楽かもしれません」
だからこそ訪れてほしい。年齢を重ねた、いい男が必ずまとっているもの=哀愁と考えるのは短絡的すぎるだろうか。
Photograph: Ryo Yonekura
プロフィル
本庄真穂(ほんじょう・まほ)
神奈川県生まれ。編集プロダクションに勤務のち独立、フリーランスエディター・ライターとなる。女性誌、男性誌、機内誌ほかにて、ファッション、フード、アート、人物インタビュー、お悩み相談ほか、ジャンル問わず記事を執筆。記憶に残る喫茶店は、山口県・萩にあるとん平焼きを出す店名のない喫茶店。福岡県・六本松の『珈琲美美』、神奈川県・北鎌倉の『喫茶 吉野』に通う。