お酒
アルザスを代表するビオの造り手の渾身の一本
ジェラール・シュレール リースリング グランクリュ プェルシック ベルグ
[今週の家飲みワイン]
2018.05.25
「ジェラール・シュレールが管理する畑では、何十年ものあいだ除草剤も化学肥料やを一切使っていないそうです。酸化防止剤も最小限に抑えたその手法は、アルザスにとどまらず、フランスを代表する自然派ワインの造り手のひとりとして注目されています」と大橋さんは言う。
「しかも、いかにもビオというワインの仕上がりではなく、きちんとアルザスらしい特徴の出たワインに仕上がっていること、それが何より素晴らしいですね」とも。決して自然派のワインが多くはないアルザスのなかで、大変な注目を集めている、評価の高いドメーヌなのである。
ではアルザスらしいワインの特徴とは何か。冷涼な気候が生むきれいでしなやかな酸と豊富なミネラル感、白い花にとたえられるようなエレガントな香りだろう。つまり、雑味も魅力のうちというニュアンスのある自然派の側面よりも、クリーンな味わいに仕上がっているということであろう。
また、シュールリーといって発酵終了後、澱(おり)引きせずに、タンク内に数カ月間置いたのち、上澄みだけを瓶詰めする製法で造られる。そうすることで、沈殿して澱となった酵母からアミノ酸が溶け出すため、ワインにコクや深みが付加されるのだ。結果、清冽な酸が奥行きのある果実味をしっかりと支えて、豊かなミネラル感と相まって、絶妙のバランスを生み出している。
「今回の4本のなかでも、5000円台とやや高価ですが、それだけのことはある実にいいワインです。しっかりとしたミネラル感と、相反するエレガントできれいな余韻を併せ持つ一本ですから、魚介類全般によく合いますが、これからの季節、わたのホロ苦みを楽しむ鮎の塩焼きには最高ですね。肉なら鶏肉や豚肉など、白い肉の料理にもよく合います」
今日はちょっといい魚を買ってきた、おいしいシャルキュトリーを取り寄せた、などという日にはぴったりの一本である。
Photograph:Makiko Doi