お酒
ぶどうジュースのような果汁感と細胞に染み入る豊かな味わい
レ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュ2016
[今週の家飲みワイン]
2018.12.14
![ぶどうジュースのような果汁感と細胞に染み入る豊かな味わい<br>レ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュ2016<br>[今週の家飲みワイン]](http://p.potaufeu.asahi.com/86ae-p/picture/14508151/10f676c02cefda679816dcebd7d3fcd0.jpg)
ひと口飲めば、あふれるような果汁感に驚き、飲み進めば、奥行きのあるぶどうの味わいに再び驚かされる「レ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュ」。ボージョレ・ヴィラージュとは、ブルゴーニュ地方ボジョレー地区のなかでもさらに限られた村だけが名乗ることができるAOC。
ところで、多くの日本人はブルゴーニュの代表的な品種ピノ・ノワールに比べて、ガメイは一段劣るぶどうと思っている。しかし、それが明らかに食わず嫌いであることは、レ・プレミスを飲めば瞭然である。それほどに、このレ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュはおいしい。
![0U5A0133](http://p.potaufeu.asahi.com/a4c0-p/picture/14508149/e613b59aa8438328988ed18cc62aae60.jpg)
「たまたまボージョレのテロワールがガメイを育てるのに適し、そのほかの多くのブルゴーニュの土壌がピノ・ノワールに合うというだけのこと。優劣ではないんです。むしろ、国際的にはガメイのほうが優れたワインを造り出している産地の例も少なくありません」と梁さんは言う。しかも、ボージョレは、自然派ワインのなかでは最も安定した酒質を誇るエリアとも言われる。
「ボージョレの魅力は、まずなんといっても、飛び抜けて素晴らしい才能のある若手のナチュラルワインの造り手が集中しているところにあります。世界を見渡してもそんなワイン産地はなかなかありません。よりクラフトなワインを造ってきた父親世代が、若手にそのスピリットを伝えながらしっかりと教育することで、一人ひとりの才能を開花させているという、ワイン産地としては理想的なスパイラルがおこっています。レ・プレミスの造り手であるレミ・デュフェイトルはそうしたボジョレーの若手のなかでも間違いなく三指のひとりに入る俊英。生き生きとした香りと味わいがありながら、酸が突出することのない、卓越したバランス感覚。亜硫酸を使っていない自然派ならではの丸みのある飲み口は細胞のひとつひとつに染み入るようです。こうしたワインが造れるというのは、まさにセンスしかないなと、つくづく感じます」と梁さんは絶賛する。
![0U5A0137](http://p.potaufeu.asahi.com/5303-p/picture/14508150/442f9621b01e0d1e43ad83dfc369f456.jpg)
ライトでありながら、なめらかで深みのある独特の飲み口は、ボージョレワインがセミ・マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸潤法)という手法で造られることにも起因する。ぶどうの房は破砕せずに、縦型の大きなステンレスタンクに入れられる。するとタンクの下のほうのぶどうは重さでつぶれ、果汁が流れ出て自然に発酵が始まる。次第にタンク内には炭酸ガスが充満し、つぶれていないぶどうの中にある酵素と反応して発酵が進む。こうして早飲みに向くワインができるのだが、同時にリンゴ酸が分解されることで優しい味わいになり、炭酸ガスで酸化が防止されるためにフレッシュさが残る。レ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュも、セミ・マセラシオン・カルボニックのメリットをうまく生かしたワインと言える。それこそが梁さんが言うところの“センス”なのかもしれない。
「フランスワインで安くていいものを買おうと思えば、もっともっとボージョレワインに注目すべきです。ヌーヴォーだけではない、魅力にあふれた産地であることを実感してもらうためにも、レ・プレミス ボージョレ・ヴィラージュ2016はぜひ飲んでもらいたい一本ですね」と梁さん。間違いなくボージョレワインに対するイメージを変えてくれるに違いない。
Photograph:Makiko Doi
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