紳士の雑学
良いオーダースーツ店の選び方と注文時の基礎知識
2019.04.02(最終更新:2020.03.24)
既製のスーツではどうしても満足できない、そんなときはオーダーを試してみては? 最近は比較的リーズナブルな価格のものが増えています。サイズ感はもちろんのこと、生地やボタンなどの細かい部分にこだわれるのもポイント。
サイズと着心地の悩みを解決するならオーダースーツで
スーツで欠かせないのはサイズ感。でも既製服の直しにはどうしても限界があります。たとえばアスリートの場合、ジャケットに合わせるとパンツの腰回りが小さい、また逆にパンツのサイズで買うとジャケットが大きすぎるなど、いろいろ不都合はあるもの。このように極端でなくても、上下でどこかに不満があることは少なくありません。オーダーならその悩みにも対応できます。
ただ難点は、仕上がりまで時間がかかること、そしてこだわるほど割高になること。また、慣れていないと仕上がりがイメージできず、迷うことが少なくありません。オーダーは着る人のサイズ、体型、さらに体の特徴に添って服をつくること。すなわち採寸と完成まで時間がかかることが既製品との違いです。
オーダーと一口に言っても、その方法、値段はいろいろ
そしてひと口にオーダーといっても、生地のクオリティ、技術、完成までにかける時間と手間によって金額にはかなり差があります。大まかに言って、パターンオーダー、イージーオーダー、フルオーダーの3種類に分けられます。以下にその特徴を解説します。
手軽で安価なパターンオーダー
パターンオーダーは、あらかじめショップが用意したゲージ服というサンプルを着用して採寸、サイズに合わせて既定のパーツが選ばれて機械縫いとなります。納期は2週間~ひと月と短く、価格も3万~5万円と手頃です。最近ではファスナーを使ったゲージ服での試着など、より立体的に体の特徴を図ることで誤差が少なくなるようにしているお店も増えてきています。
メリット :納期が早く、値段がリーズナブル。
サンプルがあるので完成形がイメージしやすい
デメリット:サンプル数に限界があり、細かな修正・補正には対応できない
パターンとフルのいいとこ取り、イージーオーダー
イージーオーダーは、ショップで採寸後、縫製工場でいちばん近い型紙が選ばれた後、顧客の体型に合わせて修整されます。現在、CADと呼ばれるコンピューターソフトでかなりの部分がカバーできるため、肩や胸回りなどスーツのフィット感に関わる箇所の変更にも対応します。納期はひと月以上、7~10万円くらいが相場で、マシンメイドになります。
メリット :パターンオーダーよりもアップしたフィット感
細かな箇所も修正可能
デメリット:パターンオーダーに比べて割高、時間もかかる
既成の型紙でつくるため、完全ではない。
唯一無二のフィット感が得られるフルオーダー
フルオーダーがパターンオーダー、イージーオーダーと異なる点は型紙から起こすこと。既成のものに合わせるのではなく、採寸してから裁断、縫製を始めます。通常仮縫いがあり、そこでさらに調整することでよりフィットした仕立てとなります。また生地やボタン、ポケットの仕様も細かくオーダーできます。ほとんどの工程がハンドメイドとなるため、納期は2~3ヵ月、価格も20万~50万円と高額になります。またある程度、服に関する知識が必要でしょう。
メリット :自分の体型に合ったフィット感
細部まで自分の嗜好が反映される
デメリット:パターン、イージーオーダーに比べて高価、納期まで数か月と長期間に
注文時の採寸、ヒアリング、仮縫いなどの手間がかかる
訪問から納品まで。オーダースーツはこうして完成
当然ながら、オーダーはただお店に頼むだけではありません。既製服の購入よりも自分がどういうものを着たいかをイメージし、正しく伝えることが大切です。今回はフルオーダー、パターンオーダーを例に解説します。
オーダースーツができるまでの流れ
1.予約
2.ヒアリング
3.生地選び
4.デザイン選び
5.採寸
6.仮縫い
7.縫製
8.納品
1.予約
注文には時間がかかります。1時間程度取れる日時を指定しましょう。イージーオーダー、フルオーダーの両方を手がけているところであれば、最初にどちらを考えているかを伝えておきましょう。また希望の納期、予算もあらかじめ確認を。特に前者について、フルオーダーであれば実際に着用する時期の数か月前に発注する必要があります。
2:ヒアリング
どんなときに使うか、どんなものが欲しいかを正しく伝えることが大切です。仕事で使うスーツであれば、実際に着るシチュエーションをより具体的に。既製のスーツに不満がある場合も、率直に相談してください。もちろん持参すればベター。また、合わせる靴やシャツを持っていくとより効果的です。
3:生地選び
生地は通常スワッチと呼ばれる布の見本を綴じたものから選びます。このなかからテーラー側が顧客の希望に沿ったものをピックアップして提案してくれます。ただこのとき、小さな見本では仕上がりのイメージがつきにくいのが難。たとえばストライプやチェックは、生地では小さく見えてもスーツとなると意外に目立つもの。鏡の前で顔に近づけると肌との相性を確認することもできますが、基本的にテーラーのアドバイスに従うのが賢明です。初心者であれば、まずはネイビーやグレーの基本色から試してみましょう。
4:デザイン選び
生地選びと並行して行われるのがスーツのシルエット選び。スーツも決して流行とは無縁ではないですから、どの程度の流行を取り入れるかは難しいところ。できればサンプルやテーラーがつくった完成品を見せてもらうと完成形をイメージする一助となります。
5:採寸
肩幅や胸回り、裄丈、腰回りや股下を図ります。ベテランのテーラーであれば、同時に肩が胴体に対して前側、後ろ側のどちらについているかなど数字にならない特徴もチェックし、より理想的なバランスになるように留意します。
6:仮縫い
寸法に合わせて裁断した布をいったん縫い上げ、試着して調整を行います。体に添わせることで微差をさらに調整し、完成度を高めます。
7:縫製
フルオーダーではハンドメイドが基本。イージーオーダーでは一部機械を使われることもあります。これに比べてパターンオーダーはほぼ全行程でマシンメイドを採用することでコストを抑えています。
8:納品
完成後は必ず試着してください。素材によってテーラーの注意点があれば必ずチェックしてください。また、不具合があればたいていは無償で修正してくれることが多いようです。
良いオーダースーツ店の選び方
オーダースーツ店は、既製品と違い商品自体が飾ってあるわけではありません。よって決め手となるのは口コミ、テーラーとの相性。特にコミュニケーションの深さは出来上がりに確実に反映されます。
これ以外に以下の項目がチェックポイントになります。
トレンドを押さえているか
先述した通り、スーツも流行によってシルエット、仕様が変わります。そのあたりを把握しているかも大切です。雑誌等で見つけた好きなスーツの写真を見せながら、それに沿ったアドバイスをもらえればベター。
生地見本はそろっているか
いいテーラーであれば、素材への研究は怠りません。季節ごとに生地をそろえているか、それなりの量を揃えているか、その特徴を把握して説明できるかがポイントとなります。お店の規模にもよりますが、人気店ではスワッチだけでも数千から万単位の生地を揃えています。また小さな生地見本だけでなく、反物という切り取られる前の長い状態の生地があれば、さらに信頼度がアップ。生地を広げて肩から掛けてみることができるので、スーツサイズになった時の柄が想像できます。
道具は整理されているか
道具の管理はいい職人の必須条件です。ちゃんと整理整頓されているかをチェックしましょう。
料金の見積もり、納期の説明があるか
料金、完成の時期は大切なこと。顧客に懸念や不安を持たせないよう、わかりやすく説明をしてくれるコミュニケーション能力も大切です。
まとめ
オーダースーツを賢く利用すれば、おしゃれはもっと奥深く、楽しくなります。財布の事情を鑑みながら、少しずつトライしていきましょう。
①既製のスーツのどこに不満か、あるいはどんなスタイルにしたいかを明確に
②パターン、イージー、フルオーダーそれぞれのメリット、デメリットを正しく把握
③どのタイプのお店でも自分の希望を臆せず伝えることが大切。
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)