紳士の雑学
好感度がアップするスーツの正しい選び方
2019.03.05
ビジネスの世界では第一印象が大きなウェイトを占めます。だからこそ、スーツ選びには細心の気配りを。初対面の人に好感度を与えるスタイリングを考えてみましょう。
スーツ選びで大切なのはサイズ感
スーツで大切なのは何よりもサイズ感。これは新人もベテランも変わりません。体のシルエットに合ったジャケット、パンツは着る人を確実にスマートに見せてくれます。
逆にダブダブだったり、ぴったりし過ぎたりするものは悪目立ちしがちで、違和感のあるところばかりに視線が集まってイメージダウンに。スーツ自体ではなく、本人の内面を主張させるのがビジネスウエア本来の目的なのです。
年齢と仕事内容にふさわしい色のイメージを意識しよう
もちろん、ビジネスの場でただ素の自分を見せるだけでは足りません。年齢にふさわしい存在感が必要となります。20代はフレッシュさ、30代は信頼感、40代は安心感、50代は重厚感。こうした雰囲気を演出するのに効果的なのが色使いです。
ビジネススーツで使える基本色はネイビーとグレーのみ。特にネイビーは20代であれば必携です。深みのある青が若々しさと誠実さを表現します。
それに対してグレーがもたらすのは落着きと奥行き。自己主張を控えめにすることで大人っぽさを醸し出す効果があります。また一見すると地味でも、濃淡や柄などで微妙なニュアンスの差を感じさせるのもこの色ならでは。またちょっとハードルの高さを感じさせるチェックも、グレーであれば比較的合わせやすいでしょう。
この他の色を挙げるとしたらブラウン。ある程度年齢を重ねているなら、柔和な印象を与える効果があります。ただビジネスシーンであまり明るい色はふさわしくありません。グレー系の糸が入った落ち着いた色合いにとどめておくのがベターです。
正しいスーツのサイズを選ぶポイント
素材やトレンド感以上にいいスーツの条件は、着る人の体に合っていること。試着は必須ですが、どこを基準にすればいいかわからない人も多いのでは。ここではチェック項目を解説します。
■ジャケットを選ぶポイント
【肩幅 自分の肩の位置とジャケットの肩まわりが合うものを選ぶ】
肩は向かい合ったときに特に目立つ箇所です。ここがしっかりとフィットしていないのは問題外。最近は肩パッドがない、または入っていても薄いジャケットが多いので、肩がちゃんと収まっているかどうかがより目立ちます。また腕を下したときにしわが出ないかもチェックしましょう。
また見落としがちなのが肩と身頃のバランス。特に日本人は、胴に対して肩の位置が若干前向きになっている傾向があります。インポートものを選んだ際、肩が合わず、生地が前に引っ張られ、後ろに隙間が出てしまうことがあります。確認を忘れずに。
【後ろ襟 シャツの襟が見えるバランスが基準になる】
自分では見えない後ろ姿もポイントとなります。目安となるのはジャケットの襟から除くシャツの分量。ベストは1.5~2cmです。ジャケットの襟が浮いてしまったり、逆にシャツの襟が隠れてしまったりするのはサイズが合っていないからと考えていいでしょう。
【着丈 ヒップがかくれるかかくれないくらいの長さのものを選ぶ】
ヒップから太ももにかけての下向きの曲線がちょうど隠れる長さがベストです。長すぎると野暮ったく、まただらしなく見えます。逆にヒップが半分以上見える短さだと落ち着きがなく、アンバランスさを感じさせます。
【袖丈 シャツの袖が1~1.5cm出る長さがベスト】
シャツの袖は手首にかかるくらいがベストバランスです。そしてジャケットはカフスが1~1.5cmくらい見えるようにしてください。シャツが隠れるようでは長すぎ、またカフスがまったく見えないようでは短すぎ、スマートさに欠けます。
意外に見落としがちなのが左右の腕の長さ。まったく同じことは少なく、だいたい利き腕のほうが若干長い傾向があります。左右が同じ長さに見えるように、利き腕側の袖を少しだけ短めにカットして調整します。
【胸まわり ボタンを閉めてこぶしひとつ入るゆとりを】
ジャストなサイズ感のために身頃の大きさにも留意を。ジャケットのボタンを留めた際、片手のこぶしが胸元にひとつ入るくらいにしましょう。ここが大きいとウエストのシェイプがなく、ルーズに見えます。逆に入らないくらいのスペースだと脇下のあたりにしわができ、窮屈な印象になります。
■スラックス・パンツを選ぶポイント
【腰まわり 腰の骨にかかるのが正しいウエスト位置】
ウエストはおへそ周りではなく、へその下の腰骨に引っかかるラインを指します。ここに指が1本入る程度のゆとりがあるものを選びましょう。余裕がないと苦しいうえ、これ以上大きいと、ベルトをしたときに腰回りに見苦しいしわが出てしまいます。
【お尻まわり 縦、横双方にしわが出ないように注意】
お尻のカーブにフィットしていないとしわが目立ちます。大きい場合は縦に出て、お尻の下にたるみが見られます。逆に小さいと横に生地が引っ張られ、横方向にしわが出ています。動くとき以外にしわが合っていない場合はサイズを見直すか、補正を考えたほうがいいでしょう。
【裾丈 「長過ぎず、短か過ぎず」がビジネスの基本】
パンツの裾がもたつくようではシルエットが台無し。ビジネスマンに不可欠なフットワークを感じさせません。立った状態で靴下が見えないギリギリの長さ、あるいは靴で少し前がたわむハーフクッションが限度。試着の際には必ず靴を履いて裾の長さを決めたい。
フィット感にこだわるならオーダースーツという選択も
既製品のスーツの直しにはどうしても限界があります。なかなか満足できないようであれば、オーダーを試してみては? 最近は比較的リーズナブルな価格のものが増えてきているので選択肢としてはありです。サイズ感はもちろんのこと、生地やボタンなどの細かい部分にこだわれるのもポイント。
ただ難点は、仕上がりまで時間がかかること 。早くてひと月、仮縫いもある本格的なものであれば3か月くらいは待つことは普通です。そしてこだわるほど割高になること。また、慣れていないと仕上がりがイメージできず、迷うことが少なくありません。
初めてであれば、まずは決まったパーツを組み合わせたうえで調整するパターンオーダー をおすすめします。実際のサンプルを見ながらであれば、事前のイメージと仕上がりにさほど誤差はないはず 。
オーダーの際には、既成のスーツでの悩み、どんなシチューエーションで着るのか、自分をどう見せたいのかなどを伝えてみてください。それを親身に聞いてくれるスタッフに、最初は一任してみるのも手です。
スーツの購入時期や頻度の目安は?
スーツはビジネスのユニフォームであり、同時に消耗品とも言えます。ある程度着続けたら、買い替えの必要があります。修理の利かない傷みや落ちない汚れが出てきたとき、またサイズが合わなくなったときが買い替えのタイミングです。
長持ちさせるのは、高価でなくても上質な生地と縫製のものを選ぶこと。数着をそろえて着回すようにしたほうが、結局は経済的です。
また極端にモード感覚のスーツはビジネスシーンに向かないだけでなく、着るサイクルが短い難点があります。なるべくベーシックなスーツを選びましょう。
それでもスーツは流行とは無縁ではないので、ワードローブをすべて新調するのではなく、少しずつ旬なデザインのものを取り入れ、時間差で徐々に変えていくのが得策です。
まとめ
クールビズやビジカジ(ビジネスカジュアル)など、くだけたスタイルが許容されてきています。ただこれは文字にたとえれば草書。スーツという楷書を押さえてこそ、崩しもさまになります。サイズ、そして周囲からの視線を意識した着こなしをマスターしてください。
①スーツはネイビーとグレーが基本。色が醸し出す印象を活用する
②自分の体のサイズをしっかり把握。隠す部分と見える部分のバランスに注意を
③フィット感を目指すならオーダーメードにトライするのも選択肢のひとつ
Photograph:Tomoka Tanaka(kiitos)
Styling:Yukihiro Yoshida
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)