紳士の雑学
スリーピーススーツの基本|ベストとは?
2022.03.17
ジャケットと揃いのパンツに、ワイシャツ&ネクタイ。そんな極めてオーソドックスな装いだけでなく、ジャケットの内側にベストを挟み込んだスタイルもビジネスシーンにおいて支持を集めています。今回は、いわゆるスリーピーススーツについてのお話。その誕生から周囲に与える印象、肝となるベストのタイプまで、基本的な事柄から探っていきます。
スリーピーススーツって?
スリーピーススーツを日本語で言い換えれば「三つ揃え」。名前のとおり、ジャケット、パンツ、ベストの3アイテムがセットになったスーツです。その3つすべてが共地、つまりは同じ素材で作られていることが大前提。色違いのベストを取り入れたスタイルも祝いの席などでよく見られますが、これは”オッドベスト”と呼ばれるタイプで、正確に言えばスリーピーススーツとは異なります。
というのも、スーツはそもそもイギリスで生まれた紳士の礼服で、当初からベストを含む共地のスリーピースで構成されていました。イギリスではベストをウェストコートと呼びます。いずれにせよジャケットとパンツのみのツーピースは、いわゆるスーツの簡易版。発祥という視点に立てば、スリーピースこそ極めて由緒正しいスタイルと言えるでしょう。
理知的な男がスリーピーススーツを選ぶ3つの理由
【理由① 仕事ができそうに見られるから】
言わずもがな、ビジネスシーンにおいて第一印象は重要です。皺だらけのスーツであればだらしなく、派手すぎるスーツでは浮ついたイメージを与えてしまいます。一方、伝統的なスリーピーススーツをしっかり着こなせば、品行方正な見え方が期待できるでしょう。
ベストを挟む分だけVゾーンが狭まり、胸元が引き締まって見えるのもスリーピーススーツの特徴。着こなしに奥行きが生まれるため立体的な視覚作用が生まれ、さりげない高級感を演出してくれます。
【理由② クラシックテイストがトレンドだから】
カジュアルファッションと同様に、当然ながらスーツスタイルにも流行り廃りがあります。ライフスタイルを始め、あらゆるものが多様化する現在はスーツのトレンドも多方向に及びますが、着心地やケアのしやすさに特化した”機能派”と並んで、クラシックテイストにもスポットが当たっています。
例えば英国製の生地や英国由来の柄を使い、ディテールが構築的なスーツなどがそれに該当しますが、クラシカルという点においてはスリーピースも外せません。特に高感度な上級者が着用する例が多く、テレビや雑誌などで登場する洒落たスーツ姿を意識して見ると実はスリーピーススーツだった、ということも少なくないでしょう。
【理由③ 脱いだ姿もサマになるから】
ジャケットに加えてベストを身に着けるわけですから、特に夏場は暑さが気になります。となれば当然、ジャケット脱ぐという選択肢も。そこでベストのありがたみを再認識するはずです。最近はクールビズが浸透してうるさい職場は限られるかもしれませんが、ワイシャツはそもそも下着と同義。ワイシャツ1枚の格好はビジネスマナーに反すると捉えられがちです。
もちろん、ベストがあることで一層ファッショナブルに映るのもポイント。さらにはワイシャツ1枚ではお腹の膨らみが気になる、といった体型コンプレックスのある方にもスリーピースはオススメです。
スタイルの鍵を握るベスト、その種類って?
ひとくちにベストと言っても、その種類は様々。ジャケット同様に、ボタンのつき方などのフロントデザインでタイプが分かれ、与える印象も絶妙に異なります。ここでは、代表的な3つのタイプを紹介していきます。
<ノーカラーシングルベスト>
最も一般的といえるのが、合わせがシングルになった襟のないタイプです。奇をてらわない既視感のあるデザインで、ビジネスシーンで好ましい形とされます。なお、一番下のボタンはツーピースのジャケットと同様に外すのがマナーとされます。
<ノーカラーダブルベスト>
同じく襟のないタイプでも、合わせがダブルになることで重厚感を増します。基本的に、ベストを着る場合はジャケットのボタンを開けるのですが、ビジネスシーンにあえてダブルのベストを選ぶのは相当な上級者。入社間もないフレッシュマンなどは避けたほうが無難かもしれません。
<ラペルドベスト>
シングル、ダブル問わず、襟のあるパターンも存在します。より装飾的になることで、クラシカルな印象を与えるでしょう。上のイラストは、上襟と下襟の合わせで刻まれたラペルを持つ、シングルのノッチドラペル型です。
まとめ
①スリーピースはスーツの原型。今も支持される正統派である。
②ベストのおかげで印象値もよく、トレンドにも合致。ジャケットを脱いでもサマになる。
③ベストの種類はフロントデザインによって分類。与える印象も変化。
Edit:Naoki Masuyama,Masashi Takamura
Text:Naoki Masuyama