紳士の雑学

スーツ基本のき 第10回
イタリアンスタイルを知る

2019.08.06

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今回は、イタリアのスーツについてお話しします。スーツ発祥国である英国の貴族たちがバカンスでイタリアに訪れた際に、当地の職人達に服をオーダー。そういった経験を基に、イタリアの気候や文化と相まって独自進化したのがイタリアのスーツスタイルの流れと言われます。前回紹介したブリティッシュスタイルとはまた違った美意識を宿すスーツですが、具体的にはどんな特徴を持っているのでしょうか。

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イタリアスーツの魅力とは

寒い英国と違い、領土の多くが地中海性気候に属するイタリアは比較的温暖な地域。雨も多くはありません。そのせいか、ブリティッシュスタイル特有の重厚感はトゥーマッチと捉えられました。ですからイタリアスーツは生地はもちろんのこと、仕立ても軽くなされています。重さの英国に対し、軽さのイタリア。ちょっと大雑把ですが、まずはそう捉えておくとよいでしょう。

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特徴①着心地の軽いソフトテイラリング

イタリアスーツの仕立てを示す言葉としてよく使われるのが「ソフトテイラリング」です。軽やかで柔らかい生地を使い、身体のラインに沿って自然と生まれるドレープなどナチュラルなシルエットの美しさを楽しむ。その点で、構築的で立体的なスーツを源流とするブリティッシュスタイルとは様式が異なります。

サイジング自体は英国同様ジャストフィットなのですが、柔らかい仕立ての分、必然的に着用感が軽やかなものが多いのも特徴。エレガントな見た目を担保しながら、着心地も快適。そんな両取りもイタリアスーツが持つ強みと言えます。

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特徴②風土に根ざした大胆な色使い

英国との違いは、スーツの色にも表れています。どちらかというと沈んだモノトーンが多いブリティッシュスタイルとに比べ、発色の良い色や反対色の組み合わせなどが多く見られるのがイタリアスーツ。温暖な気候からくる陽気なお国柄も反映されてか、比較的自由に色を楽しんでいると言えましょう。

例えば、最もイタリア的な色使いとされるのが「アズーロ・エ・マローネ」と呼ばれるものです。直訳すれば「青と茶」で、そのものズバリのカラーコンビネーションを指します。清潔感があってフレッシュな青と、エレガントで艶やかな茶。それらをネイビースーツとブラウンタイなどで表現するのです。

この2色は寒色と暖色の組み合わせですが、補色関係にある両者はお互いを引き立て合います。そんな美しいコントラストもまた、地中海の輝かしい青と、土や火山などの自然な茶といった風土的なバックボーンを秘めるとも。英国発祥のスーツを、あくまで自分たちらしく。揺るぎないサルトリア(仕立て職人)の矜持が、イタリアスーツには宿っているのです。

ディテールで学ぶイタリアスーツ

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全体的な仕立てや色使いだけでなく、スーツの細部を見てもイタリアらしいポイントが存在します。逆に言えば、そんなディテールの積み重ねが軽やかな仕立てを形作っているとも考えられるでしょう。以下、パーツごとに代表的なディテールワークを紹介します。

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ディテール①ナチュラルショルダー

典型的なブリティッシュスタイルのような厚いパッドの入った肩とは異なり、あくまで自然。パッドを極力薄くして、誇張せずに肩の形状に沿わせたショルダーラインが多く見られます。肩先が張っておらず袖へとナチュラルにつながるため、動きやすいのも特徴と言えるでしょう。

袖のつけ方も特徴的で、イタリア語で「シャツの袖」を意味する「マニカカミーチャ」で知られています。これは、袖山にいせ込みによる特有のひだがつくこと。とはいえこちらはスーツではなく、よりカジュアルなジャケットなどに多く見られるディテールです。

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ディテール②浅めのウエストシェイプ

メリハリのついた英国のスーツとは違い、自然なシルエットを最大限に活かすのがイタリア式。肩だけでなく、ウエストにもその特徴は表れています。タイトにシェイプされたブリティッシュスタイルと比べて、シャイプは浅め。重心を高く取り、身体になじませている点もポイントです。この自然なラインを彩るのが、柔らかい生地が生むドレープ感。優美な曲線が、着こなしをより一層こなれて見せてくれます。

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ディテール③短めの丈感

クラシックな印象の英国スーツとは違い、ファッション要素の強いイタリアでは丈にも振れ幅が。一概には言えませんが、ジャケットはやや短めの着丈のものが多く、それに伴ってパンツ丈も短めのものが見受けられます。とはいえ、ジャストサイズが基本なのは世界共通。あまりに短すぎる丈のジャケット、パンツは避けましょう。ビジネスシーンにおいてはなおさらです。

イタリア的な遊び心をチェック

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ここからは、イタリアスタイルのお手本コーディネイトにおける、ファッション的な遊び心について。とはいえ、しつこいようですがどんなスーツの場合でもサイズはジャストフィットが基本で、シーンにふさわしくない着こなしはすべきではありません。そのことを念頭に置きつつ、イタリア的なアレンジを見ていきます。

ポイント①本切羽仕様の袖

「本切羽」の袖とは、袖口のボタンが飾りではなく実際に開ける仕様を指します。これに対し、袖口が閉じて実際には開かないものを「開き見せ」と呼びます。イタリアスーツは本切羽のものが多く、これもサルトリアが英国スーツとの差別化を図って生み出した意匠と言われています。イタリア人はスーツの袖をまくって上手に着崩す印象もありますが、本切羽ならではの遊びなのです。

ポイント②襟の広いシャツ

あらためてイタリア、特にナポリ的なファッションを強調させるのであれば、シャツのチョイスも大事になります。なかでも意外と重要なのが襟の開き具合。一般的なレギュラーカラーではなく、より広角に広がったワイドスプレッドカラーや180度近く開いたホリゾンタルカラーを選ぶことで、イタリアらしさを表現できるでしょう。また、シャツ襟に入った芯材「カラーステイ」を抜くことで襟元をソフトに見せ、リラックス感を演出するのも小技のひとつです。

ポイント③適度なアクセサリー

あまりに華美な装飾はおすすめできませんが、適度なアクセサリーであれば職場の雰囲気を乱さずファッショナブルなアピールポイントとなるでしょう。たとえば写真のように、スーツと同色のラペルピンでさりげなく飾ってみるのも一興。同じスーツを着てもこれだけでかなり印象が変わりますので、環境に応じて使い分けてください。

まとめ

①イタリアスーツは軽くて柔らかいソフトテイラリングが信条。
②色やディテールにも、イタリアらしさが表現されている。
③職場で浮かない程度の遊びも、イタリアスーツにふさわしい。

<<スーツ基本のき 第9回はこちら

Edit:Naoki Masuyama,Masashi Takamura
Text:Naoki Masuyama

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