紳士の雑学
スーツの後ろ姿で差がつく?品格を上げるスーツの着こなし(スーツの基本 第12回)
2019.08.20
スーツの装う際、ついつい正面ばかりを整えていませんか? 実は、後ろ姿の身だしなみも非常に重要です。生活の中で見られる機会が多いだけに気をつけておきたいという気分的な理由もありますが、最大のポイントは、スーツが正しく着られているかどうかが、後ろ姿にこそ現れるから、なのです。そこで、後ろ姿の格好いいスーツの着こなし方を見ていきましょう。
ジャケットの後ろ襟から覗くシャツの襟幅にもルールあり
後ろ襟は、特に首筋の傾斜に吸い付くようにフィットしていることが見た目上望ましく、覗く理想的な襟幅は、1.5〜2.0㎝ほどとされています。首回りにおいて正しいサイズのジャケットとシャツが選べているかのバローメーターにも。極端に襟が首から浮いてしまうものなどは、着心地面におけるフィット感も損なわれるでしょう。よく擦れる箇所ですので、清潔に保っておきたいところです。
“ツキジワ”は、肩のサイズがフィットしていない証拠
左の写真のように、両肩に引っ張られるようにして生まれたシワを、スーツ用語で“ツキジワ”と呼びます。これは、ジャケットが肩と背中にフィットしていない証。サイズ感が大事なスーツにおいては致命的です。また、反対に縦方向にたるみジワが出た場合は、オーバーサインジングのサイン。右の写真のように、背中のシワに注意してジャストサイズのジャケットを選びましょう。
後ろ姿の美醜に影響する適切なジャケット丈とは?
ジャケット丈が短いと後ろから見た姿が、貧相に見えてしまいます。一般的には、ヒップの頂点が隠れるくらいが理想的なジャケット丈。これより長いとだらしなく、短いと子供じみて映るので、後ろ姿に気をつけるという観点からも、ジャケットの丈に気を配ることは大切なのです。
ピスポケットとベントの種類を知り、より奥深きスーツの世界へ
後ろ姿の印象に、大きな影響を及ぼすことはないにせよ、ちょっとした遊び心や、こだわりのテイストを楽しめるのが、ピスポケット(ヒップポケット)のデザインとジャケットのベントです。ディテールを詳しく知ることで、あなたのスーツライフがさらに豊かになることでしょう。
<ピスポケットの種類>
左/片玉縁…切り口の下側のみに共布で、玉縁と呼ばれるパイピングが施された仕様。さらにボタン留めとなるタイプも多く見られます。シングルパイプド、シングルピザムとも。
中/両玉縁…対して切り口の両側に玉縁を施したのがこちら。クラシカルな印象が高い。ダブルパイプド、ダブルピザム、ジェッテッドポケットとも。
右/フラップ…雨や埃の侵入や内容物の落下を防ぐ、フラップと呼ばれる“フタ”のついた仕様。ジャケットとは異なり、ボタン式が多く見られます。左右の片側のみがフラップ式というタイプも。かつてはスポーティーな要素でしたが、現在はスタンダードなポケットのディテールとなっています。
左上/センターベント…上半身を動きやすくするためにしつらえられた切れ込みをベントと呼びます。なかでも、後ろ身頃の中央の切り替え部分に入るものをセンターベントと呼びます。スタンダードなデザインであり、スポーティーな印象を与えるでしょう。
右上/サイドベンツ…サイドパネルとの切り替えとなる後ろ身頃の両端に、切れ込みが左右各1本、計2本入る仕立て。ダブルベンツとも。かつてはブリティッシュスタイルのスーツによく見られたが、今はそれを意識したイタリアンスーツにもよく見られます。よりエレガントな雰囲気を求める方にオススメです。
左下/ノーベント…ベントが入らない仕立て。タキシードなどの礼服によく見られ、フォーマルなスタイルを意識したものにも取り入れられています。一方、ワーク由来のカジュアルスタイルでも時折見られるスタイルです。
右下/フックベント…ベント上部がカギ型の切り込みとなっているタイプ。アメリカントラッドの様式でよく見られるため、トラッドスタイルを押し出したい場合に最適なベントと言えます。
まとめ
①ジャケットの着方も後ろ姿の美醜に影響。
②ジャケットのサイズを間違えると“ツキジワ”やたるみジワなどが出やすい。丈にも注意が必要。
③ピスポケットやベントなど、ディテールの好みも気遣えるようになると、通らしくなる。
Edit:Naoki Masuyama,Masashi Takamura
Text:Masashi Takamura