特別インタビュー

渋谷直角
男が憧れる、男の持ち物。
僕がシャツを着る理由。

2019.09.26

写真・図版
約2世紀の歴史を誇り、B.D.シャツの代名詞といえる一着。最高品質のメイド・イン・アメリカ。シャツ¥19,000/ブルックス ブラザーズ(ブルックス ブラザーズ ジャパン0120-185-718

多才でいてファッションフリーク、愛用品からそのセンスを探ってみる。

今年はシャツをよく着る。

フリーランスでいいのは「だらしなくていい」ところで、取材などで初対面の人に会うのも汚い格好で大丈夫。なぜなら、編集者がちゃんとしたシャツで来てくれるからだ。向こうも「コイツのナメた格好……、ははーん、フリーランスだな」とわかる。そうすると、こちらに期待してくれないから、ハードルが下がって気楽なのだ。

ただ、ベテランになるにつれ、編集者のほうが年下になっていく。今年の春、とあるタレントの取材だったが、24歳の編集者だけ遅刻している、という事態になった。僕も初めて仕事する雑誌で、インタビュー内容しか聞かされていないので、この集合場所の公園の、どこで撮影するのかも知らない。必然的にタレントさんをただ待ちぼうけさせてしまうことになった。そして15分ほどして編集者がやって来たとき、目を疑った。

スケボーに乗ってきたのだ。我々の前で華麗にターンを決め「すいません、遅れちゃって!」。格好はTシャツにハーフパンツ。タレントもマネジャーも呆然としている。移動のとき、小声でなぜスケボーで来たのか聞くと「天気いいから気持ちいいっしょ!」。最高の笑顔だった。確かに気持ちよさそうだったし、よかったねと思う。しかし彼の気持ちよさ優先による遅刻で、周りは完全に僕を〝しっかり担当〞として見てしまっている。「コイツのほうがまだマシかも」と。これでは困るのだ。フリーランスの僕よりだらしなくされては、誰がしっかりする?

今年、シャツをよく着るようになったのはそれが理由である。〝しっかり担当〞も、自分が年上ならしょうがないか、と諦めたのだ。シャツはシワも目立つから、必然的にアイロンがけも行っている。着ると意外と気分がよく、以前より落ち着いて対応できている気がする。立場は人を変えるね~(多分違う)。

渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。トートの楽しさを教えてくれた人。 はこちら>>

「アエラスタイルマガジンVOL.44 AUTUMN 2019」より転載

Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Akihiro Mizumoto

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