お酒
ジントニックの歴史
奥深いジンの魅力を探る 第5回
2020.06.19
ジンを味わうための、最もスタンダードなカクテルといえば、ジントニックだ。その誕生には、世界史のひとコマが絡んでいる。
ジントニックの誕生は東アジアの植民地
ときは17世紀、大航海時代のあとに、東アジアの覇権をイギリスとオランダで競っていた頃のこと。インドやインドネシアに赴任した駐在員はマラリアで命を落とす人が非常に多かったそうだ。
さまざまな薬が試された中で、キナの樹皮の成分キニーネがマラリアに効くとわかった。しかしこれは非常に苦く、現地では、砂糖と炭酸水を加えて飲んでいたと言われている。そこへ薬用酒として普及していたジュネヴァも加えて飲むようになり、これがジントニックの起源となった。
つまり、ジン(ジュネヴァ)を炭酸水、砂糖、少量のキニーネで割ったものがジントニックの始まりであり、炭酸水、砂糖、キニーネの3つを混ぜたものがトニックウォーターにあたる。
かつて、医療用のトニックウォーターには、多量のキニーネが使用されていたが、現在のトニックウォーターは、微量のキニーネと香料を使用したものが多い(日本で流通しているものにはほとんど含まれていない)。
もちろん、往時のジンもトニックウォーターも、今のものとは異なる味わいであろうが、現在までスタンダードカクテルに名を連ねているのだから、その普遍性は計り知れない。
ジントニックの作り方
作り方は、「氷を入れたグラスに、ジンを注ぐ。よく冷やしたトニックウォーターでグラスを満たし、軽くステアする。ライムスライスを飾る」と、いたってシンプルだ。だが、それゆえ、バーテンダーの個性や力量が出るとも言われている。
まず、どんなジンを用いるか。これで味が大きく変わる。基本、ロンドン・ドライ・ジンのように、キリッとした味わいのものなら間違いない。一説には、現代のジントニックの発祥となったカクテルには、タンカレーのジンが使用されたという説もある。
トニックウォーターの進化がジントニックのクオリティを決める
次はトニックウォーターの話だ。ともすると、トニックウォーターの風味が強すぎて、ジンの味わいが消されてしまうこともある。こと、プレミアムジンやクラフトジンのように、それぞれの味が個性的で香りも繊細なものでジントニックを作るなら、主張しすぎない柔らかな味わいのトニックウォーターを使用し、本来のジンの味わいを楽しみたいものだ。
ジェーニャさんおすすめのトニックウォーターはロンドン生まれの「フィーバーツリー」。人工甘味料、人工香料、保存料などを使用していないプレミアムミキサー(割り材)のパイオニアだ。
「バー コパン」では、それぞれのクラフトジンを生かすよう、3種のフレーバー(写真上)を使い分けていると言う。そればかりでなく、トニックウォーターが主張しすぎないように、半量はソーダにする「ジンソニック」で供する人もあるという。
ちなみに「フィーバーツリー」は、キナによる自然で本格的な味わいが大切にされている。ライムをどれくらい効かせるか、絞り入れるか、スライスを飾るかなども、バーテンダーの個性が出る。
進化系ジントニック
ここでは、さらにひと手間加えた、進化系のジントニックをジェーニャさんに教えてもらった。
■ベリー入りジントニック
大ぶりのワイングラスに氷を入れ、ジン(ここではORNABRAKというアイルランドの華やかなジンを使用)を30ml注ぐ。フィーバーツリーで満たし、ブルーベリー、ラズベリーを浮かべ、ミントの葉をあしらう。
■ヘンドリックス ジンで作る、きゅうりとディルのジントニック
最後にきゅうりとバラで香りをつける、スコットランドのジン「ヘンドリックス」を使用。グラスの底にきゅうりのスライスを添わせ、氷を入れて軽くステアする。ヘンドリックスジン30mlを注ぎ、フィーバーツリーで満たし、ディルをあしらう。清々しい香りと味わいが魅力のジントニックに。
■胡椒を効かせたジントニック
グラスに氷を入れ、ステア。上からg-gin30mlを注ぎ、トニックウォーターで満たす。上に胡椒をふり、ドライレモンを添える。g-ginと胡椒の相性が抜群。
家でも簡単に作れるものばかり。ぜひ、試してみよう。
第6回につづく>>
Text: Hiroko Komatsu
Photograph: Sho Ueda