スーツ
スーツにニットを合わせるのはあり?
ダサくならないコーディネートを提案
2023.02.06(最終更新:2024.07.30)
ニットは秋冬に欠かせない防寒アイテム。スーツに合わせる場合は、ビジネスシーンを意識してアイテムを選び、着こなすことが大切です。ニットの正しい採り入れ方を学び、ビジネスシーンにおける秋冬のコーディネートを楽しんではいかがでしょうか? この記事では、メンズスーツとニットの合わせ方について、さまざまな角度から解説します。
「ニット」と「セーター」に違いはある?
ニットと聞いて、すぐにセーターを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、ニットとセーターは同義語ではありません。
ニットとは、一本の柔らかい糸をループ状に編み込みながら作る生地の総称です。通常の衣服では、経糸と緯糸を交差させながら織った生地が使われています。こうした織物の生地に比べてニットは糸と糸の間隔が広く、伸縮性に優れているのが特徴です。また、肌触りが柔らかいことや暖かいこともニットの魅力だと言えるでしょう。
一方、セーターとはニット素材を使って作られる衣服のことです。マフラーや帽子、カーディガン、ジャケットなど、ニット素材で作られる衣服には多くの種類があります。セーターも当然このなかに含まれますが、セーターのみをニットと定義づけることはできません。つまり、ニットはセーターを包括する大きな分類だといえます。
ちなみに、ニットは衣服の形状だけでなく、使われる素材によっても細かい分類に分けることができます。ニットで使われる素材の定番といえば、やはりウールでしょう。しかし、そのほかにもカシミヤやシルク、コットン、リネンなど、さまざまな素材がニットには使われています。これらの自然繊維だけでなく、シルクに近い触り心地のナイロンや、羊毛に似たアクリル、木材パルプから作られるレーヨンといった化学繊維を利用できることもニットの魅力です。春夏のニットにはシルクやリネン、コットンなどの素材が好んで使われ、秋冬のニットにはウールやカシミヤ、アンゴラなどが多く使われています。
バリエーション豊富な素材が使えるニットアイテムでは、幅の広いデザインを実現することができます。この自由度の高さが、世界中のデザイナーがファッショナブルなニットアイテムを次々に生み出している理由だといえるでしょう。
ニットアイテムはデザインや色柄の選択肢が豊富なので、スーツに合わせるものも選びやすいはず。シワになりにくいニットや、紫外線を防ぐニットなども出てきているため、機能性に注目してアイテムを選ぶのもひとつの方法です。
スーツに合うニット選び、洒脱に着こなすポイントとは?
環境省が推進しているウォームビズの影響で、スーツにニット素材のセーターやカーディガンを合わせるスタイルが普及してきています。ここでは、スーツに合うニットの選び方や着こなしのポイントについて、5つの観点から解説します。
形
環境省が推進しているウォームビズの影響で、スーツにニット素材のセーターやカーディガンを合わせるスタイルが普及してきています。ここでは、スーツに合うニットの選び方や着こなしのポイントについて、5つの観点から解説します。
スーツに合わせやすいニットアイテムの形としては、ベスト、セーター、カーディガンの3種類が主に挙げられます。
まず、ニットベストは近年人気が高まってきているアイテムです。他の2つと違って袖がないため、上からジャケットをはおっても、シルエットをスタイリッシュに保つことができます。特にスーツをスマートに着こなしたい若い世代の間でニットベストが支持されているようです。ほかのアイテムよりも涼しく、春先の体温調節に利用できることもニットベストの魅力です。カジュアルなパーティーなどで、セットアップに合わせるオッドベストとして採り入れることもできるでしょう。
ニットベストにはプルオーバータイプとボタンフロントタイプの2種類があります。ボタンがないプルオーバータイプのメリットは、デザインがすっきりしていることです。オフィスカジュアルでジャケットを脱いでも、スタイリッシュな見た目が維持されます。ただし、着脱に手間がかかるので体温調節をこまめにしたい方には向きません。
一方、ボタンフロントタイプは簡単に着脱できるため、季節の変わり目などでも体温調節がしやすいというメリットがあります。デザインについてはプルオーバータイプよりもカジュアルな印象を与えやすいので、TPOに合わせたアイテム選びが重要です。
次に、セーターは最もオーソドックスなインナーアイテムだといえます。どんなシーンでも使えるうえに、カラーバリエーションやデザインが豊富で、自分好みのものを選びやすいことが魅力です。カーディガンに比べるとシルエットもすっきりしています。しかし、袖があるのでジャケットをはおったときに腕の可動性に干渉する場合があります。スーツの着心地は肩まわりのサイズ感に大きく左右されるため、スーツを快適に着たいという方にはあまりおすすめできません。また、着脱がしづらいという点もセーターの欠点のひとつです。
カーディガンは、いわばボタンが付いているセーターです。着脱のしやすさが魅力なので、季節の変わり目などに着用するといいでしょう。ジャケットをはおったときにシルエットが膨らみやすく、カジュアルな印象を与えやすいのが欠点です。
いずれのアイテムについても、ネックラインはクルーネックかVネックのものが一般的です。スーツに合わせるのであれば、ネクタイがきれいに見えやすいVネックのアイテムを選ぶといいでしょう。ノーネクタイの場合は、クルーネックのセーターなどを着ても問題ありません。
色や柄
スーツスタイルにニットアイテムを合わせるときは、色や柄の選び方にも注意が必要です。そもそも、セーターなどのカジュアル感が強いアイテムは、スーツに合わせるべきではないとされてきました。しかし、ウォームビズが浸透し、オフィスカジュアルを採用する企業が増えてきたなかで、ニットアイテムの着用も徐々に認められてきたのです。ビジネスシーンで使うニットアイテムは、「ニットはフォーマルなアイテムではない」ということを理解したうえで選ぶ必要があります。また、商談などの大事な場面ではニットアイテムを身に付けない常識力も重要です。
スーツスタイルに合わせるセーターやカーディガンは、柄のない無地のものを選んでください。チェック柄などが入ったニットアイテムはカジュアルな印象が強く、人によっては不快感を覚える場合もあります。スーツスタイルには無地のセーターを合わせ、落ち着いた雰囲気を演出しましょう。
ニットアイテムの色については、スーツと同系色のものを選ぶのが無難です。グレースーツにはグレーのセーターを、ブラウンスーツにはブラウンのセーターを合わせることで、コーディネートに統一感が生まれてシックな雰囲気になります。さらに、シャツやネクタイもすべて同系色でまとめれば、自然なグラデーションが生まれて立体感のあるコーディネートを作れるはずです。
遊びが許されるシーンなら、スーツの差し色となるセーターを選ぶのもおすすめです。春夏は寒色系の涼しげなセーター、秋冬は暖色系で優しい印象のセーターといったように、インナーで季節感を演出してみてはいかがでしょうか。ピンクやオレンジなど、ビビッドカラーのニットアイテムはビジネスシーンではNGですが、カジュアルシーンなら問題ありません。仕事では着られない派手な差し色のアイテムを採り入れ、大胆なスタイルを楽しむのもいいでしょう。
ゲージ
ニットは編み目の粗さによって、ハイゲージ、ミドルゲージ、ローゲージの3種類に大きく分けることができます。最も編み目が細かいのがハイゲージで、最も編み目が粗いのがローゲージです。ゲージとは、編み機に備えつけられた針の密度のことです。1インチ(2.54cm)に何本の針があるかによってゲージの数値は決まります。例えば、8ゲージのニットの場合、1インチに8本の針がある編み機で作られたということになります。一般的な区分では、12ゲージ以上のニットがハイゲージ、5ゲージ以下のニットがローゲージです。
ローゲージのニットはざっくりとした風合いが特徴で、カジュアルな印象が強いアイテムです。生地に厚みがあり、暖かいアウターとしても使われています。縄のような模様がついたケーブルニットがローゲージの代表格でしょう。
ローゲージとハイゲージの中間にあたるミドルゲージのニットは、適度なカジュアル感があって使いやすいアイテムです。暖かさや厚みもほどよいので、カジュアルなコーディネートを作りたいときに活躍してくれます。
ハイゲージのニットは糸同士の密度が高く、すっきりとした見た目が特徴です。生地が薄いので防寒性の面ではローゲージやミドルゲージに劣りますが、インナーとして着てもシルエットをスタイリッシュに保つことができます。3種類のうち、最もシンプルでフォーマル寄りのニットがこのハイゲージだといえます。
スーツスタイルに適しているのは、フォーマル度の高いハイゲージのニットです。目が粗いゲージのニットだと、カジュアル感が強すぎてスーツスタイルにはなじみません。ハイゲージのニットには、肌触りがいいというメリットもあります。セーターのチクチクする感触が苦手という方には、30ゲージ以上のような編み目が細かいニットがおすすめです。
また、ハイゲージニットのなかでも、ネックラインや袖口にしっかりしたリブが付いているデザインのものがスーツスタイルには適しています。リブ付きのニットなら、スーツのエレガントな雰囲気を保ちながら、効果的に防寒性を高めてくれます。
ネックライン
ニットアイテムを選ぶうえで、目立ちやすいネックラインは重要なポイントです。特に、スーツに合わせて着る場合はVゾーンを作るネックラインの重要性が増します。ネックラインによってニットアイテムの特徴や適したシーン、似合う人のタイプが変わってくるため、基本を押さえて適切なネックラインのものを選びましょう。
まず、最もオーソドックスなネックラインといえるのがVネックです。V字形に縁どられたネックラインにはシャープな印象があり、ビジネスシーンとも相性のいいタイプです。切れ込みが深いVネックなら、ネクタイの結び目もきれいに見せることができます。なお、ニットアイテムに合わせるネクタイは主張が控えめなネイビー系やブラウン系が適切です。1つ、または2つのディンプルがあるとVゾーンがより華やかに見えるでしょう。
襟元が広くなるVネックには小顔効果があります。顔が丸い方や体格ががっちりとした方にはVネックのニットがよく似合うでしょう。一方、面長の方や首が長い方はVネックを着るとさらに縦のラインが強調されるので、あまりおすすめできません。そうした方は、切れ込みが浅いVネックならやわらかい印象になるので、うまく着こなせるはずです。
次にクルーネックもニットアイテムの定番のネックラインです。首もとが丸く縁どられるクルーネックはVネックよりもカジュアルな印象が強く、ビジネスシーンにはあまり適していません。ただし、ノータイスタイルで出勤できるオフィスなら、クルーネックのニットを着ても問題ないでしょう。ニットのネックラインは、出向く先のカジュアル度に応じて工夫することが大切です。
クルーネックが似合いやすいのは、首が長い方や顔が小さい方です。また、えらが張っているなど、顔のラインが直線的な方はクルーネックを着ることで印象を和らげることができます。なお、首もとが詰まっているクルーネックでは、顔の大きさが普段よりも強調されるので注意が必要です。クルーネックが似合いにくい方は、ジャケットやアウターの襟でVラインを作るとシャープな雰囲気になるでしょう。
さらにカジュアルなスタイルが許されるオフィスでは、秋冬らしいタートルネックを採り入れるのもひとつの方法です。タートルネックの特徴といえば、高い位置で折り返された分厚い襟。防寒性が高く、コーディネートがランクアップする便利なアイテムです。
タートルネックのニットは、首の長い人が着るとスタイリッシュなシルエットになります。一方、首の短い人は首もとが詰まって見え、顔も大きく見えるのでおすすめできません。また、タートルネックセーターは体にぴったりフィットするものが多いため、体形を気にしている人も避けたほうがいいでしょう。それでもタートルネックを着たい場合は、着丈の長いコートに合わせれば縦のラインが強調されてスマートに見えます。
最後に、ハイネックの特徴についてもみていきましょう。ハイネックでも襟が高くなっていますが、タートルネックのような折り返しはありません。通常のネックラインよりも防寒性が高く、タートルネックよりもすっきりとしているのが特徴です。ちなみに、ハイネックとよく似たネックラインにモックネックがあります。モックネックは「偽のタートルネック」という意味で、本来はハイネックよりも襟が高くなっているものを意味する言葉です。しかし、襟がそれほど高くないものをモックネックと呼ぶ場合もあるため、ハイネックとモックネックの間に厳密な違いはないといえるでしょう。
ハイネックが似合いやすいのは、首が長い方や、骨格がしっかりしている方です。反対に、首が短い方がハイネックを着ると首もとが詰まって見えるので避けるのが賢明です。ハイネックを着るときは、上半身にボリュームがあるとバランスが悪く見えるため、細身のコートやジャケットをはおるといいでしょう。
サイズ
スーツに合わせるニットアイテムを選ぶときは、サイズ感にも注意を払う必要があります。そもそも、スーツをスタイリッシュに着こなすためにはジャストサイズが鉄則。着丈や袖丈を厳密に決め、体にぴったり合ったスーツを仕立てるのがビジネスシーンにおけるマナーです。ジャケットのサイズ感については、ボタンを留めたとき、胸元に手がすっと入る程度の余裕があればいいとされています。
ジャケットがジャストサイズなら、その下に着るニットアイテムもジャストサイズでなくてはなりません。ニットが小さすぎると、首もとが詰まって窮屈な印象を与えます。反対に、大きすぎるとジャケットの下で生地が余り、スーツの可動性を損なうでしょう。シルエットが崩れることにもつながるので、ハイゲージでシンプルなデザイン、かつ体にフィットしたニットアイテムを選んでください。ラウンドネックの場合、首もとからネクタイの結び目だけがのぞく程度がジャストサイズの目安です。ディンプルが見えるほど首もとが開いていると、だらしない印象を与えるので注意しましょう。
ニットのおすすめブランド
ニットとスーツを合わせて洗練されたコーディネートを作るなら、上質なニットアイテムが必須。ここまで紹介したニット選びのポイントを振り返りながら、有名ブランドのアイテムを探してみるといいでしょう。ここでは、スーツに合わせるニットのおすすめブランドを3つ紹介します。
JOHN SMEDLEY(ジョンスメドレー)
JOHN SMEDLEY(ジョンスメドレー)はニットアイテムの代名詞ともいえる老舗ブランドです。その歴史は長く、創業は1784年。イングランドのダービーシャー州マットロックのリーミルズにて、ジョン・スメドレーとピーター・ナイチンゲールによって創業されました。その後、経営者が代々引き継がれるなかで、ジョンスメドレーは優れた製品を生み出すニットメーカーへと成長していきます。創業から230年以上経った現在も、英国中心部にある世界最古の製造工場はスメドレー家によって維持されています。
ジョンスメドレーの魅力は30ゲージという編み目が非常に細かいハイゲージニットです。厳選した上質な素材を使用し、繊細に編み上げたジョンスメドレーのニットからはリラックスした気品が感じられます。製品に使われている素材は、最高品質のメリノウールとコットンです。特にジョンスメドレーで使っているコットンは「JOHN SMEDLEY'S SEA ISLAND COTTON」と呼ばれ、シルクの光沢とカシミヤの肌触りを併せ持つ最高級の天然素材として知られています。
ジョンスメドレーでは最新の機械を導入しながらも、手作業で丁寧に行う工程が多くあります。最先端のテクノロジーと熟練の技術、そして最高品質の素材を最大限に活用して、高品質なニットウエアを生み出しているのです。
Gran Sasso(グランサッソ)
上質なニットウエアで知られるイタリアの老舗ニットブランド、Gran Sasso(グランサッソ)。サンテジーディオ・アッラ・ヴィブラータという小さな村で、1952年に4人の兄弟によって創業されました。始まりは小さな工場でしたが、徐々にその品質の高さが知られるようになり、1970年代以降は世界的なニットブランドとして名をはせています。
グランサッソのニットウエアには、ブランドロゴをはじめとした装飾が一切施されていません。掲げるモットー「品質が商品を語る」のとおり、ブランド名に頼らないニット職人の気概がうかがえます。
グランサッソでは、コットン専門の工場や染工場を自社で所有しており、イタリア国内で全工程を行うことに強いこだわりを持っています。高い縫製技術や高品質な素材を駆使したグランサッソのニットウエアは、ファッションにこだわる人なら、一度は袖を通しておきたいアイテムです。
Cruciani(クルチアーニ)
Cruciani(クルチアーニ)は、数あるニットブランドのなかでも最高峰と評価されるイタリア屈指のブランドです。1966年にイタリアのペルージャで創業されたマリタル社の傘下にあり、1993年からコレクションを発表しています。レザーウェアラインの「クルチアーニ・ペレ」や、ブレスレット専門の「クルチアーニC」といった派生ブランドも人気です。
クルチアーニでは、原料の紡績から縫製までの全工程を自社で行っています。だからこそ、新素材の開発といった事業に積極的に着手し、個性的なコレクションを次々と生み出すことができるのです。クルチアーニでは、タイトなシルエットのニットウエアを主に製造しています。高い縫製技術があるからこそ実現できる、抜群のフィット感を楽しみたい方は、クルチアーニのニットを手に取ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
ニットは効果的に防寒性を高めてくれる便利なアイテムです。スーツとの相性もいいので、組み合わせを工夫して楽しむといいでしょう。ただし、ビジネスシーンでニットを採り入れる場合は、最低限のマナーを守る必要があります。ビジネスシーンに適しているのは、ハイゲージのVネック、またはクルーネックのニットです。色柄についても、なるべく控えめなものを選び、カジュアル感が強くならないように注意してください。空気が冷え込む時期は、上質なニットアイテムを手に入れ、オフィスカジュアルでスマートに活用することをおすすめします。