スーツ

スーツの袖丈の長さはどれくらいがいい?
測り方やお直しの方法を解説

2020.11.26

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スーツを仕立てるうえで、軽視されがちなのがジャケットの袖丈です。袖丈が適切な長さになっていないと、スーツに着られているような、だらしない印象を与えることになります。仕事のできるビジネスマンとして振る舞いたければ、まずは正しい袖丈のスーツを身に付けることから始めましょう。

この記事では、ジャケットの袖の種類や袖丈の目安、お直しの方法などについて解説します。

スーツ選びで最も大切なのが「サイズ感」

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スーツスタイルの印象はサイズ感によって大きく左右されます。ジャケットやスラックスのサイズが体に合っていないと、相手に間の抜けた印象を与えます。ビジネスでは見た目は重要なポイントであり、サイズの合わないスーツを着ていることで取引先の信頼を失う可能性もゼロではありません。ビジネスシーンにおける制服であるスーツをきれいに着こなすことは、仕事や一緒に働く人に敬意を払うことです。業務能力とは関係のないところで損をしないためにも、常にサイズ感の合ったスーツを着る必要があります。

ジャケットのサイズを合わせるときは、まず肩幅に注目しましょう。「ジャケットは肩で着る」と言われるほど、肩幅のフィット感は着心地に大きな影響を与えます。ジャケットの肩にはアームホールの縫い目部分に盛り上がりがありますが、この部分を指で軽くつまめる状態が適切なサイズ感です。指でつまめないほど生地が張っている、つまり肩幅が小さすぎる状態だと動きにくく、背中にも横ジワが入ります。反対に、生地が余りすぎていると着たときに肩が落ち、だらしない印象を与えるでしょう。縫い付け部分に肩がしっかりと入る、ジャストサイズのものを選ぶことが大切です。

胸まわりのフィット感も確かめておく必要があります。ジャケットのフロントボタンを留めた状態で、握りこぶしを懐に入れてみましょう。こぶしがちょうど収まる程度の余裕がジャストサイズの証拠です。細身のジャケットの場合は、こぶしを入れたときに多少きつく感じても問題ありません。こぶしがまったく入らないほど窮屈だと、動きが制限されるうえにボタンにも負荷がかかり、破損の原因となります。胸まわりに余裕がありすぎても、生地がだぶついてやぼったい印象になってしまいます

着丈は流行に左右されますが、ベテランのビジネスマンほど長く、新人ほど短い傾向にあります。ジャケットの着丈は、ヒップの曲線がちょうど隠れる程度の長さが適切だと覚えておきましょう。短い着丈のジャケットはスタイリッシュではあるものの、カジュアル感が強いのでビジネスシーンには向きません。対して、着丈が長すぎると脚が短く見え、だらしない印象になります。

そして、袖丈もスーツのサイズ感を決める大切なポイントです。袖丈とはジャケットの肩から袖口までの長さのことで、採寸では肩にある身頃と袖の縫い目から、袖口の端までの長さを測定します。カジュアルシーンで着るジャケットであれば、袖丈は自由に決めることができます。爽やかなコーディネートにしたいときは短めに、ルーズに演出したいときは長めに調節すればいでしょう。しかし、ビジネスシーンで着用するスーツには一定の決まりごとがあり、好きなように袖丈を変えられるわけではありません。だらしなさや幼さを感じさせないためにも、ジャケットの袖丈は適切な長さに決めることが重要です。

ジャケットの袖の種類

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ジャケットの袖口には1~5個のボタンが縫い付けられていますが、その仕様によって主に3つの種類に分けられます。ここからは、ジャケットの3種類の袖について解説します。

開き見せ

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袖口にボタンやボタンホールがしつらえられており、一見開きそうで開かないのが「開き見せ(あきみせ)」です。ボタンやホールは飾りの役割を果たしており、ボタンが1列に整然と並んでいることから「並びつけ」と呼ばれる場合もあります。この開き見せが、最もオーソドックスな袖口だと言えるでしょう。なお、まれにボタンホールなしで装飾用のボタンだけが付けられた袖口も存在しますが、これも開き見せに該当します。

キッシングボタン

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「キッシングボタン」は、互いに重なるようにボタンを袖口に付ける仕立てのことです。ボタンが重ならずに並んでいる開き見せと比べると、キッシングボタンの個性がよくわかるでしょう。「重ねつけ」や「重ねボタン」とも呼ばれ、開き見せと同じように袖口は開きません。

既製品のスーツは主に機械で作られますが、重なり合ったボタンを機械で付けるのは困難です。一説には、技術力を競い合うイタリアのスーツ職人が始めたとも言われており、手縫いで付けられたキッシングボタンには高級感が漂います。実際に、イタリア製のクラシカルなスーツの多くにキッシングボタンが採用されています。

オーダーでキッシングボタンを指定するときは、3~5個のボタンを付けるのが一般的です。ボタン3個は礼服に多く、重ねて付けるとボタンの占める面積が小さくなるのであまり向いていません。オーソドックスなのはボタン4個で、ビジネススーツにもよく採用されています。ボタンを5個付けるとかなり目立つので、袖口を強くアピールしたいときにおすすめです。キッシングボタンをオーダーするなら、4個以上のボタンを付ければ袖口の立体感を際立たせることができるでしょう。

本切羽

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「本切羽(ほんせっぱ)」とは、実際にボタンの開閉ができ、袖口を開くことができる仕立てのことです。古来のボタン付けにのっとった仕様で、「本開き(ほんあき)」とも呼ばれています。基本的にはオーダーメイドで指定しなければできないディテールですが、近年では本切羽仕様の既製品も出てきています。

ちなみに、本切羽は英語で「surgeon cuffs」と言います。19世紀初頭、戦争で傷ついた兵士を治療する外科医はジャケットを着ていました。しかし、ジャケットを着たまま手術をするとどうしても袖にシミが付くため、袖まくりができるように開閉ボタン付きの袖が提案されたのです。このように、外科医(surgeon)のために本切羽が考案された経緯から、surgeon cuffsという呼び名が付いたと言われています。

本切羽のメリットは、状況に応じて着こなし方を変えられるということです。ビジネスシーンでは、開き見せのようにボタンをすべて留めておくのがいいでしょう。しかし、カジュアルな場面で着るときはわざとボタンを開けて抜け感を演出することができます。ボタンを開ける数を左右で変えるなど、本切羽を利用すれば個性的な着こなしが可能です。本切羽のキッシングボタンという仕立て方も、オーダーなら実現できるでしょう。

ただし、オーダーするときは追加でオプション料金がかかるという点に気を付ける必要があります。また、実際にボタンホールが開いている関係上、袖丈の調整も困難になります。おしゃれを楽しむには便利なディテールですが、本切羽を選ぶときはこれらの注意点についても考えておきましょう。

スーツの袖丈の目安・測り方

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スーツをスマートに着こなすためにも、ジャケットの袖丈の目安を知っておくといいでしょう。ここからは、スーツの袖丈の目安や測り方について解説します。

袖口の位置は親指から11~12cmが目安 

ジャケットの袖丈は、腕を下ろしたときに袖口がちょうど手首にかぶさる長さが適切だと言われています。手首のくるぶしに当たる部分が袖に隠れる程度の長さだと考えてください。採寸の際は肩から袖口までの長さを測りますが、実際に着るときに重要なのは親指から袖口までの長さです。親指の先から11~12cmほどのところに袖口がくるようにすると、スタイリッシュに着こなせます。必要以上に袖が長いと、スーツに着られているような間の抜けた印象になるので注意が必要です。

シャツの袖は1.5cmのぞかせる

スーツスタイルではシャツの袖がジャケットの袖から見えることになります。腕を下ろしたときに、このシャツの袖が1.5cmほどはみ出している状態が正しい着こなし方です。これより短くても長くても、どことなく決まらない印象になるでしょう。

基本的に、シャツのサイズは首まわりで合わせます。スーツをはおったときに最も目立つのが首まわりであり、ここがだぶついているとネクタイも締めにくいためです。また、反対にきつすぎると第1ボタンが留められなくなり、だらしない着こなしになります。身幅や袖丈は調節が利くので、まずはネックサイズを適正に合わせるということを覚えておきましょう。ただし、ネックサイズに対して袖丈が短すぎたり、身幅が細すぎたりする場合は、既製品でなくオーダーシャツを選ぶ必要があります。

シャツの袖を直すときは、袖丈の長さの目安を知っておくと役に立ちます。シャツの袖丈は、袖のボタンを外した状態で腕を下ろした際、袖口が親指の付け根にくる長さが適切です。一見すると長すぎるように見えますが、袖のボタンを留めれば手首できっちり止まります。袖の生地にある程度の余裕を持たせることで、腕を自由に動かせるようになります。

シャツは洗濯したら縮むということも考慮に入れなければなりません。自宅で洗った場合は2~3cm、クリーニングに出した場合は3~4cm、シャツは新品の状態から縮むと言われています。はじめから袖を長めにしておくことで、大幅に縮んだとしても余裕を持って着られるのです。

そして、本来シャツには下着としての役割があります。現在ではシャツの下にインナーを着るのが一般的ですが、もともとシャツはジャケットを汚さないための下着として開発されました。シャツの襟がジャケットの襟よりも高くなっているのは、首まわりの皮脂がジャケットに付着するのを防ぐためです。袖についても同様で、ジャケットの袖よりもシャツの袖を長くしておかないと、手首の皮脂がジャケットに付いてしまいます。シャツは汚れても簡単に洗濯できますが、ジャケットが汚れたらクリーニングに出す必要があり、手間もコストもかかります。このように、シャツの袖丈を長めにしておくことには実用的な意味もあるのです。

左右の腕の長さが違う場合もある

ジャケットやシャツの袖を直すときに注意したいのが、左右の腕の長さが違う場合もあるということです。左右の袖丈を採寸したとき、1cm程度の差異があることは珍しくありません。腕の長さが違うにもかかわらず、左右均等な袖丈でジャケットやシャツを仕立てると、片方は手首が出ているのにもう片方は出ていないといったアンバランスな見た目になります。そのため、採寸の際は片腕だけ測って袖丈を決めるのではなく、必ず両方の長さを測る必要があります。

袖丈が短いほどカジュアルな印象になる

ジャケットは袖丈が短いほどカジュアルな印象が強まります。主にカジュアルシーンで着るジャケットなら、はじめから袖丈を短めに仕立てるのもいいでしょう。また、袖口のデザインに本切羽を指定し、気分に応じてボタンをはずすスタイリングをするという方法もあります。

ちなみに、リネンスーツやコットンスーツは使ううちにシワが寄り、新品の状態よりも袖丈が短くなる傾向にあります。そのため、まずは長めにしておいて、ある程度使い込んでから袖丈を調節するのがおすすめです。

カフリンクスを付けるときは袖丈を短めにする

シャツの袖型にはいくつかの種類があり、代表的なものがラウンドカフスです。襟口の角が丸くカットされているタイプで、最も広く普及している襟型だと言えます。そのほか、袖口の角を斜めにカットしたカッタウェイカフスや、ボタンが2つ付いたツーボタンカフスなどもありますが、特に個性的なのがダブルカフスです。

ダブルカフスとは、袖口を折り返して二重にするタイプの袖型のことです。ドレッシーでエレガントな雰囲気があり、ファッション意識の高さを感じさせたいときにうってつけです。ダブルカフスでは、折り返した袖をカフリンクスで固定します。

カフリンクスを美しく見せるためにも、ダブルカフスシャツを着るときは袖丈が短めのジャケットをはおり、シャツの袖を2cmほどそぞかせるといいでしょう。ジャケットの袖丈が長いと、カフリンクスがこすれて生地が傷む場合があります。また、袖口の裏の縫い糸にカフリンクスが引っかかってほつれる恐れもあるため、ダブルカフス用の袖丈が短いジャケットを用意することをおすすめします。

袖丈はワークスタイルに合わせることも大切

ジャケットの袖丈は腕を下ろした状態で測定しますが、袖口の位置は動作や姿勢によって変わってきます。そのため、普段どのような姿勢で仕事をしているのかという事情を考慮することも重要です。

デスクワークが基本の場合、袖丈が長いと袖口がこすれて生地が傷みやすくなります。なるべく短めにすることで、ジャケットの寿命を延ばすことができます。一方、座って商談をするときは、折り曲げた肘を机の上に乗せた姿勢を取ることが多いはずです。この姿勢のときは生地が引っ張られて袖口が数cm短く見えるので、袖丈は長めに調節しておくのが賢明だと言えます。このように、自分のワークスタイルに合わせて袖丈を考えるのも大切なポイントです。

袖丈を直す方法

ジャケットの袖丈は購入した店で直してもらうのが一般的ですが、買ったあとでお直し専門店やクリーニング店に依頼して直してもらうこともできます。また、手間はかかりますが自分で袖丈を直すことも不可能ではありません。ここからは、ジャケットの袖丈を直す4種類の方法について解説します。

購入店に依頼

ジャケットの袖丈直しは、購入した店に依頼するのが基本です。既製品を販売している量販店でも、多くの店舗で袖丈の調整を行ってくれます。ジャケットの袖丈だけでなく、スラックスのウエストや裾も体に合わせて調整してくれます。

オーダースーツの専門店では採寸したうえでスーツを仕立ててくれるので、でき上がったスーツを直す必要はありません。ただし、体形の変化などの理由で、袖丈を調整しなくてはならなくなる可能性があります。そのようなときも、購入店に依頼すれば体形に合わせてサイズを直してくれるはずです。仕立てのプロに調整してもらえるので、再び最適なフィット感を楽しめるようになるでしょう。直したあとのサイズ感にこだわりたい人は、オーダースーツ専門店に依頼することをおすすめします。なお、その店で購入したスーツではなくても袖直しを引き受けてもらえる場合があるので、一度確認してみてください。

お直し専門店に依頼

お直し専門店に袖丈の調整を依頼するのも1つの方法です。洋服の修理や仕立て直しを専門に行っているので、安心して任せられます。特に技術が高い店舗であれば、袖口からではなく肩口から袖丈を詰めてくれます。この方法なら現状の袖口デザインを維持することができるため、本切羽の袖丈直しにも対応可能です。袖丈が合っていない本切羽のジャケットを持っている人は、肩口からの袖詰めを実施している店舗を探してみるといいでしょう。

なお、近所に店舗がない場合はインターネットからも袖直しを依頼することができます。ネットから依頼するときの基本的な流れとしては、まずメールに画像を添付して直してほしい部分を伝え、簡単な見積もりを出してもらいます。見積もりに納得したら、直してほしいスーツを発送しましょう。店舗側が受け取ったあと、衣服の状態を確かめて正確な見積もりと納期を知らせてきます。料金を支払ったら作業が始まり、お直しが完了したらジャケットが自宅に届けられます。

ジャケットの袖丈を直す料金は依頼する店舗ごとに異なりますが、一般的な相場は2000~3000円程度です。肩口からの袖詰めなど、高度な技術を要する作業は料金が高くなる場合があるので注意してください。また、袖丈を直す作業には4~6日ほどの時間がかかります。依頼から受け取りまで1週間はかかると考えておきましょう。直してほしいスーツを使う用事がある場合は、スケジュールに余裕を持って依頼することをおすすめします。

クリーニング店に依頼

クリーニング店のなかには、クリーニングだけでなく洋服のリフォームも引き受けてくれるところがあります。クリーニングするついでに袖直しが依頼できるため、時間がない人も便利に使えるでしょう。また、宅配クリーニングなら自宅からスーツを発送して直したものを受け取るだけなので、手間がかかりません。クリーニング店に袖直しを頼むときの料金相場は、お直し専門店と同じく2000~3000円程度です。

自分で直す

店に袖直しを依頼すると料金がかかりますが、自分で直せば出費は必要ありません。なるべく節約したい、縫製が得意という人は自分で行う袖直しに挑戦するといいでしょう。ただし、失敗しても元には戻せないので、大切なスーツの袖直しは専門店に依頼するのが賢明です。

自分で袖直しを行うときは、袖口のボタンをはずしたうえで、表地と裏地を丁寧に分けてください。次に、袖丈を決めて待ち針で留め、アイロンでしっかりと折り目を付けます。続いて縫い代を残して生地を裁断し、生地の端がほつれないようにミシンで縫っておきましょう。アイロンで付けた折り目に沿って生地を内側に折り込んだら、ミシンで縫って固定してください。長さを調整した表地に改めて裏地を縫い付け、袖口に新しい切羽を作ってボタンを付ければ完成です。

なお、裾上げテープを使って簡易的に袖の長さを直す方法もあります。折り返した袖にテープを当て、アイロンで接着するだけなので簡単です。ただし、この方法で袖直しをするとボタンの位置がおかしくなるということは知っておいてください。

まとめ

スーツの袖丈は、手首のくるぶしが袖口でちょうど隠れる程度が正しい長さです。目安として、親指の先から袖口までが11~12cm程度と覚えておけばいいでしょう。また、袖口から見えるシャツの幅も1.5cm程度に調節することが大切です。ジャケットだけでなく、シャツの袖丈にも配慮してください。

スーツの袖丈は購入した店舗で直してもらうのが一般的ですが、お直し専門店やクリーニング店にも袖丈の調整を依頼できます。袖口が本切羽の場合は肩口からのお直しが必要なので、高い技術を持った専門店に頼むことになるでしょう。袖直しは自分でもできますが、失敗したら困る高価なスーツはプロに任せるのが安心です。

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