スーツ
成人式のスーツ、なにを着るのが正解?
おすすめコーディネートや着こなしルールを学ぼう
2022.09.16(最終更新:2023.09.26)
成人式は人生で一度きりのイベント。子どもが成人式を迎える場合、親としては正しい服装をアドバイスしてあげたいものです。スーツは成人式でも定番のスタイルですが、知識がなければスマートに着こなすのは難しいでしょう。事前にスーツを着こなすための基本を知り、成人式当日に備えておくことをおすすめします。
この記事では、成人式で選べる服装の種類やスーツの基本マナー、そして成人式におすすめのコーディネートについて紹介します。
成人式の服装
冠婚葬祭の「冠」は「元服」を意味しており、これはかつての日本で行われていた通過儀礼です。子どもが成長して12~16歳ごろを迎えたとき、成人したことを祝して元服が行われたのです。男性は元服を迎えると成人の象徴であった烏帽子をかぶるようになったことから、冠という漢字で表されました。現代の成人式は、この元服に相当する重要な儀式だと言えます。
成人式で選べる服装には、スーツスタイル、袴スタイルの2種類があります。ここからは、それぞれの特徴について解説します。
スーツスタイル
成人式では、袴よりもスーツを着る人の割合が高いようです。多くの新成人は、スーツをきれいに着こなして自分が大人になったことを周囲にアピールします。同時に、恩師や旧友との再会を楽しみ、お互いの成長を確かめ合います。着ている人が多い分、スーツは成人式の服装として無難な選択肢だと言えるでしょう。
しかし、社会に出れば毎日のようにスーツを着ることになります。そのため、「せっかくの機会だから」と袴を選ぶ人も少なくありません。スーツスタイルには、後で写真を見たときに成人式らしさが感じにくいというデメリットもあります。こうした理由から、次に紹介する袴を選ぶ人も一定数いるのです。
袴スタイル
普段とは違う装いで成人式を楽しみたいという人に選ばれるのが袴スタイルです。袴は日本の伝統的な礼装で、現代でも日本固有の格式が高い場面で着られています。歌舞伎役者や神主が袴をはいているところを見たことがある人も多いでしょう。そのため、伝統を重んじる人にはスーツよりも袴が適しています。女性の多くが振袖を着て成人式に参加することを考えても、袴スタイルのほうが正統的な装いだと言えます。
成人式で着られる袴スタイルが「紋付羽織袴」で、これは紋が付いた羽織を袴に合わせる装いです。紋付羽織袴のなかでも特に格式高いとされているのが黒紋付で、成人式でも白紋付と並んで人気を集めています。黒紋付では、縞柄の袴に黒地の着物と羽織を合わせます。羽織に付ける家紋の数は5つと決まっており、羽織ひもと足袋は白でなくてはなりません。
縞柄の袴に純白の着物と羽織を合わせる白紋付も人気です。黒紋付の厳格な印象を避けたい、爽やかに着こなしたいという人は白紋付を選ぶといいでしょう。そのほか、グレーをはじめとした色付きの羽織を袴に合わせるスタイルを選ぶ人もいます。色紋付はバリエーションが豊富で、青、黄、赤といった色が選べます。また、羽織の光沢感によって華やかさを演出することもできるでしょう。袴についても、オーソドックスな縞柄だけでなく、龍の模様が入ったものなど、自由なデザインが楽しめます。
なお、袴をレンタルするときはセットの小物や着付けに配慮する必要があります。着付けに使う小物が一式そろっていなければ、自分で用意することになるでしょう。また、着付けの方法も調べておかなければなりません。ネットショップならレンタルのコストは抑えられますが、着付けなどを実店舗で頼むなら、最初から実店舗でレンタルするのが安心だと言えます。
スーツを着こなすときの基本マナー
成人式のスーツスタイルで恥ずかしい思いをしないためには、着こなしの基本的なマナーを知っておくことが大切です。ここからは、スーツを着こなすときの基本マナーについて解説します。
ジャケットのいちばん下のボタンは留めない
スーツのジャケットにはアンボタンマナーがあります。ジャケットのフロントボタンはすべて留めるのではなく、いちばん下のボタンははずしておくのが鉄則です。いちばん下のボタンはあくまでも飾りであり、実際に留めるようにはできていません。ボタンを留めると動きが制限され、スーツのシルエットが崩れます。
ビジネスシーンで主流となっている2つボタンのシングルスーツなら、上のボタンだけ留めておくことになります。3つボタンスーツを着る場合は、上の2つを留めておきましょう。なお、3つボタンスーツには「段返り」と呼ばれる仕様のものがあります。これは、いちばん上のボタンがラペルの裏に付いているデザインです。段返りの場合はいちばん上のボタンが留められないため、真ん中のボタンだけを留めるのが適切です。
ちなみに、ベストを合わせてスリーピースで着る場合はアンボタンマナーが変わります。まず、ベストはジャケットと同じようにいちばん下のボタンを留めないのがマナーです。その上からはおるジャケットのボタンについては、留めても留めなくても構いません。ただし、ダブルスーツを着るときは、スリーピースでもジャケットのボタンを留めたほうが見栄えがよくなります。
屋内ではポケットのフラップをしまう
ジャケットの腰ポケットにはさまざまなデザインがありますが、一般的なのはフラップが付いたものです。フラップとはポケットの上部に付いたふたのことで、ポケットの中にちりや雨滴が入るのを防ぐ役割があります。つまり、フラップは屋外で役に立つカジュアルな仕立てです。屋内でスーツを着るときは、フラップをポケットの内側にしまうのが正しいマナーだと言えます。
ただし、現代においてフラップの出し入れが厳密にルール化されているわけではありません。最低限のマナーとして、両側のフラップを出すかしまうかは統一しておくようにしましょう。右はフラップが出ているのに左はしまわれているといった状態は、だらしない印象を与えることになります。
ポケットにはなるべく物を入れない
ジャケットの腰ポケットに物が入っていると、スーツのシルエットが崩れます。フラップも中にしまいにくくなるため、ポケットにはなるべく物を入れないようにしてください。胸ポケットについても同様で、入れてもいいのはポケットチーフのみです。
スラックスのポケットに物を入れるときも注意が必要です。基本的に、スラックスのポケットは厚みのある物を入れるようには作られていません。財布などの分厚いものをポケットに入れると、縁が破れる恐れがあるので避けてください。スーツスタイルで小物を持ち運びたいときは、ポケットに入れるのではなく、バッグを用意するのが賢明です。
シャツは白無地が基本
スーツに合わせるシャツは、清潔感のある白無地が基本です。サックスブルーなどの淡い色なら許容範囲ですが、鮮やかな色のシャツは着こなしが難しく、悪目立ちしやすいので避けるのが無難です。また、シャツは襟型にも気を付ける必要があります。レギュラーカラーが襟型の主流ですが、開きの角度が狭い傾向にあります。現代のスーツに合わせるなら、やや開きが大きいセミワイドスプレッドカラーがおすすめです。
さらに角度が開いたワイドスプレッドカラーだと、襟先がジャケットのラペルにかかって不格好に見える場合があります。なお、クールビズの影響で認知度が高まったボタンダウンカラーはフォーマルシーンには向きません。ポロ競技の選手が考案した襟型とされており、スポーティーでカジュアルな印象が強いので、スーツに合わせるときは気を付けましょう。
シャツの袖は1.5cmのぞかせる
ジャケットをはおったときにシャツの袖が1.5cmほどのぞいている状態が美しい着こなしです。視覚的なアクセントをもたらす効果もありますが、シャツを少しはみ出させることでジャケットが直接肌に触れるのを防ぐ役割もあります。シャツを買うときは、ジャケットをはおったうえで袖丈を確認しておきましょう。また、間違っても半袖シャツにジャケットを合わせてはいけません。
なお、シャツのサイズは首まわりで合わせるのが鉄則です。ネクタイを締めることになるシャツの首まわりには、精密なフィット感が求められるためです。既製品のシャツだとネックサイズに対して袖丈は一定の規格しかないので、袖丈が足りない場合はオーダーする必要があります。袖丈が長すぎる場合は詰めてもらいましょう。
ラペルと同じ幅のネクタイを選ぶ
スーツスタイルの着こなしをうまくまとめるポイントは、ジャケットのラペルとネクタイの幅を合わせるということです。このとき、ネクタイの幅は「大剣」という下部の逆三角形の底辺で決まります。流行によって人気があるネクタイの幅は変わりますが、8cmを基準に選ぶといいでしょう。特に、近年ではラペル幅が狭いジャケットが流行しているため、幅の狭いネクタイが無難です。ただし、幅が8cmを下回るネクタイはナロータイに分類され、カジュアルな印象が強くなるので注意してください。
ちなみに、ジャケットをはおらないときはシャツの襟の開き具合にネクタイの幅を合わせます。レギュラーカラーのように角度が狭いシャツには幅が狭いネクタイを、ワイドスプレッドカラーのように角度が広いシャツには幅が広いネクタイを合わせましょう。
ネクタイの先がベルトにかかるよう調節する
ネクタイは、先端がちょうどベルトの上にくる長さが適切です。短すぎても長すぎても、だらしない印象を与えます。ネクタイの結び方や体格によって長さの調節方法は変わってくるため、何度も結び直しながら自分に合った方法を見つけましょう。なお、ネクタイをうまく結ぶためには、結び目の下にディンプルと呼ばれるくぼみを作るのがポイントです。ディンプルを作ることで、Vゾーンが立体的になってコーディネートにメリハリがつきます。
ウエストは腰骨に合わせる
スーツのスラックスは、ウエストが腰骨の位置にくるようにはいてください。はくときの位置を決めておけば、裾の長さも一定に保つことができます。ウエストのサイズを合わせるときは、指1本分の余裕を残しておきましょう。若干の余裕がないと着心地が窮屈になり、生地が張って見た目もよくありません。また、余裕がありすぎてもベルトで締めたときに生地が余り、だらしない印象を与えるでしょう。腰骨の位置で止まってくれるように、適度な余裕を残してサイズを合わせてください。
スラックスの裾は靴に当たらない長さが適切
スラックスの裾上げでは長さを指定できますが、近年では靴の甲に当たらない長さの裾が適切とされています。特に、細身のスラックスは裾が長すぎると生地がたるみ、もたついて見えるので短めに仕上げましょう。反対に、裾幅が太い場合は少し長めのほうがきれいに見えます。
なお、裾が靴甲に当たらないほうがいいのはオーソドックスなシングル仕上げの話で、ダブル仕上げの場合は事情が異なります。ダブル仕上げとは、裾を折り返す仕上げ方のことです。シングルとダブルのどちらが正しいということはなく、好みに合わせて好きなほうを選べます。クラシカルな装いが好みだという人はダブル仕上げを指定するといいでしょう。裾上げがダブルなら、靴甲に少し当たってたるみが出る程度の長さが適切です。
靴とベルトの色をそろえる
スーツに合わせる靴の色は黒か茶の2択ですが、靴の色とベルトの色をそろえるとコーディネート全体がまとまりやすくなります。そのため、黒の靴とベルト、茶の靴とベルトはセットで用意しておくのがおすすめです。カバンを持ち運ぶ場合は、靴とカバンの色も合わせるようにしてください。靴下については、靴ではなくスラックスの色に合わせるのが着こなしのコツです。グレースーツにはグレーの靴下を、ネイビースーツにはネイビーの靴下を合わせましょう。
ちなみに、スーツに合わせられるのは主にひも靴のみで、ローファーなどのひもがない革靴はスーツスタイルに向きません。プレーントゥやストレートチップなど、フォーマルでどのシーンにも対応できる革靴を用意しておきましょう。ただし、ひもがない靴のなかでもモンクストラップだけはスーツスタイルにも合わせられます。
ジャケットの裾がはみ出さないアウターを選ぶ
冬に行われる成人式では、スーツの上からはおるアウターにも気を配る必要があります。アウターを選ぶときは、ジャケットよりも着丈が長いものを選ぶようにしましょう。アウターからジャケットの裾がはみ出していると見栄えが悪いうえに、生地にシワがつきやすくなります。スーツスタイルでは、ジャケット全体が隠れるロングコートを選ぶのが基本です。
スーツスタイルに適したアウターとしては、ステンカラーコートやチェスターフィールドコート、トレンチコートなどが挙げられます。ステンカラーコートは装飾性を排したデザインで、どんなシーンにも着ていけるシンプルな風合いが特徴です。ジャケットの着丈を長くしたようなデザインのチェスターフィールドコートは、コーディネートをエレガントにまとめたいときにおすすめです。男性らしさを強調したい人は、機能性と装飾性を兼ね備えたトレンチコートを合わせるといいでしょう。
成人式でおすすめのスーツのコーディネート
スーツスタイルのコーディネートに失敗して、せっかくの成人式を台無しにしてしまう事態は避けたいものです。ここからは、成人式にスーツを着ていくときのおすすめのコーディネートを紹介します。
ネイビー無地スーツ×ホワイトシャツ×ブルータイ
無地のネイビースーツはビジネスでも定番のアイテムです。リクルートスーツとしても最適なので、成人式のためにネイビー無地のスーツを用意すれば、就活の際も着用できます。爽やかな印象があるネイビースーツは、新成人の若々しさをアピールしたいときにうってつけです。シャツの色は白を選ぶことで、成人式にふさわしいフォーマル感を演出できるでしょう。
ベーシックカラーのネイビーはどんな色とも相性がよく、合わせるネクタイの色を選びません。オレンジ色やドット柄などで華やかさを加えるのもひとつの方法ですが、ブルータイを合わせれば青系統で全体がまとまり、ネイビースーツの誠実な印象が強まります。知性や礼儀正しさも感じさせる万能のコーディネートなので、迷ったときはネイビースーツを青系統で統一するのがいいでしょう。
ネイビーストライプスーツ×サックスブルーシャツ×ストライプタイ
ネイビーのストライプスーツも使いやすいアイテムで、ストライプが加わることで華やいだ雰囲気になります。チョークストライプやピンストライプなど、スーツに使われるストライプ柄にはさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を知って自分に合ったものを選んでください。例えば、線が太いチョークストライプは目を引き、遠目には無地と変わらないピンストライプは控えめな印象を与えます。
ネイビースーツに合うのはホワイトシャツだけでなく、同系色のサックスブルーシャツを合わせるのもおすすめです。襟とカフスが白い生地に切り替わるクレリックシャツもひと味違う雰囲気を演出できます。ここに合わせるストライプタイは、スーツのストライプとはテイストが違うものを選んでください。スーツとシャツおよびネクタイをすべて青系統でまとめるなら、3点ともストライプ柄であってもおしゃれなコーディネートになります。
グレー無地スーツ×ピンクシャツ×グレータイ
ビジネスシーンではネイビースーツに次いで着用されるグレースーツもおすすめです。白と黒の中間色であるグレーは濃淡によって印象が大きく変わるため、明るい雰囲気にしたいならライトグレーを、落ち着いた雰囲気を演出したいならチャコールグレーを選ぶといいでしょう。グレーもネイビー同様ベーシックカラーなので、どんな色とも合わせられます。
ライトグレースーツをさらに華やかにしたいときは、ピンクシャツを合わせてみてください。グレーとピンクは相性がよく、上品で明るいコーディネートを作ることができます。さらに、スーツと同じトーンのグレータイを合わせれば、シャツのピンクを新鮮に引き立てます。
グレースリーピーススーツ×ホワイトシャツ×ペイズリー柄タイ
グレースーツはベストとセットのスリーピースで合わせると格調高い着こなしになります。シャツには基本の白無地を選び、スリーピーススーツのフォーマル感を引き立てましょう。フォーマルな装いも、グレー特有のやわらかさで包み込むことができます。ここにペイズリー柄のブラウンタイなどを合わせれば遊び心が加わり、おしゃれなコーディネートになります。胸ポケットにネクタイと同じ柄のチーフをスリーピークスで挿せば、統一感も生まれるはずです。
ブラックストライプスーツ×ホワイトシャツ×ワインレッドタイ
ブラックスーツは冠婚葬祭に不可欠なアイテムで、スタイリッシュな雰囲気を演出できます。シルエットを引き締めて見せる効果もあるので、スーツをタイトに着こなしたい人はブラックスーツを選ぶのもおすすめです。スリーピースで着れば黒色の面積が増え、よりスタイリッシュに見えます。
ただし、無地のブラックスーツは喪服のような印象を与えやすいため、ストライプなどの柄が入ったものを選ぶといいでしょう。さらに定番の白無地シャツと赤系統のネクタイを合わせ、Vゾーンで若さの情熱を表現してみてください。ブラックスーツに赤系統のネクタイを合わせるときは、鮮やかな赤よりもワインレッドのような渋いトーンのほうがよく合います。
まとめ
成人式では袴スタイルかスーツスタイルが選べますが、どちらかといえばスーツが主流となっています。成人式を機にスーツを1着持っておけば、就職活動中や社会に出たあとも使えるので便利です。スーツを着て成人式に参加する場合は、基本的なマナーに注意が必要です。いちばん下のボタンは留めない、ネクタイはラペルと同じ幅のものを選ぶ、といった着こなしの基本を知っておけば、恥をかくことなく式をまっとうできます。
成人式の定番はネイビースーツまたはグレースーツです。ブラックスーツを着てもスタイリッシュに決まりますが、喪服のように見えることもあるため、さりげなく柄が入っているものをおすすめします。ペイズリー柄のネクタイなどのアイテムをワンポイントで取り入れれば、着こなしもより華やかになるでしょう。