スーツ
スーツの洗濯は自宅でもできる!
長持ちさせるための頻度や注意点とは?
2023.06.09(最終更新:2023.09.26)
自宅で洗えるウオッシャブルスーツの存在を知っている人は多いはず。スーツを自宅で洗濯できれば、クリーニングの費用や手間を省くことができます。常に清潔なスーツを着用するためにも、自宅で洗えるスーツの特徴や正しい洗い方について押さえておきましょう。
この記事では、自宅で洗えるスーツの種類や自宅でスーツを洗濯する方法、長持ちさせるためのメンテナンス方法などについて解説します。
スーツを洗濯する頻度の目安
スーツを洗濯する頻度は、着用時にどれだけ汗をかくかによって変わってきます。基本的には冬よりも夏のほうが洗濯の頻度は高くなりますが、季節だけでなく、環境によっても汗のかき方は異なるはずです。外回りで移動しつづける営業マンは汗を多くかき、空調の整ったオフィスで働く人は汗をかきにくい傾向にあります。そのほか、スーツに使われている素材や仕立てによっても洗濯の頻度は変わってくるため、一概にどの頻度が最適だとはいえません。ここで紹介する数字はあくまでも目安だと考えてください。
汗をかきやすい夏場は、2週間に1回程度が洗濯の目安となります。特に、汗をかきやすい人は汚れが蓄積してシミやにおいの原因となることもあるため、なるべくこまめに洗濯するべきです。天然繊維よりも化学繊維のスーツのほうが、菌などが繁殖しやすいので気を付けましょう。ただし、洗濯の頻度が多すぎると生地が傷み、スーツの寿命が短くなるので注意が必要です。
秋から冬にかけては汗をかきにくいこともあり、夏ほどこまめに洗濯する必要はありません。洗濯すると傷みやすい生地が使われていることも多いため、洗濯は1シーズンに1回程度の頻度で行いましょう。
自宅で洗濯できるスーツとは?
自宅で洗濯できるスーツには共通の特徴があります。どの種類のスーツも自分で洗えるわけではないため、洗濯可能かどうかを事前に確かめておきましょう。ここからは、自宅で洗濯できるスーツの特徴を紹介します。
手洗いできるスーツ
スーツが洗濯できるかどうかを確かめたいときは、最初に洗濯表示を見てください。手洗いマークや洗濯機マーク、ドライマークなどが表示されていれば、そのスーツは自宅でも洗えるということです。これらのマークにバツが付いている場合、自宅で洗うのは難しいので必ずクリーニングに出しましょう。洗濯表示で干し方まで指示されていることもあるため、隅々まで読んでおくことをおすすめします。
素材の観点から言うと、ウールやカシミヤ、シルクなどの天然繊維が多く使われているスーツは扱いが難しく、自宅での洗濯には向きません。綿や麻のスーツは洗えないわけではありませんが、洗濯した後に細かいシワが残ります。アイロンがけが大変になるため、こちらも自宅での洗濯は避けるのが賢明です。
自宅での洗濯に向いているのは、化学繊維のポリエステルです。ウールなどが使われている場合も、ポリエステルが50%以上含まれた混紡生地なら自宅で洗えるようです。同じ化学繊維でも、レーヨンは縮みやすいので自宅では洗わないようにしてください。
手洗いできないスーツを自宅で洗ってしまった場合、さまざまな問題が生じます。スーツによく使われるウールには水に濡れると縮む性質があり、自宅での洗濯によって変形する恐れがあります。裏地によく使われるキュプラも吸水性が高く、洗濯によってシワが残る場合があるので気を付けましょう。
スーツの風合いが損なわれることも注意すべきポイントのひとつです。ウール繊維は表面をキューティクルのようなウロコで覆われていますが、水に濡れて乾くとこのウロコが開きます。その結果、表面が若干かさついて毛羽だった状態になり、スーツ本来のつややかな風合いが失われるのです。そのほか、芯地がウール素材の場合は縮んで型崩れを起こしやすいという問題もあります。自宅でスーツを洗うときは、必ず洗濯表示を確認して手洗い可能であることを確かめておきましょう。
ウオッシャブルスーツ
使い勝手のいいウオッシャブルスーツは年々市場を拡大しています。ウオッシャブルスーツとは、その名のとおり洗濯できるスーツのことです。自宅での洗濯に特化しており、一般的なスーツよりも頑丈な作りになっているため、洗濯機で洗っても縫い目がほつれにくくなっています。また、通常のスーツに比べてウールの配合量が低く抑えられています。シワがつきにくい素材の配合量が多く、洗濯後のメンテナンスの手間がかからないのです。ウオッシャブルスーツのなかには、特殊な加工によって洗濯後もきれいなシルエットが保たれるようになっているものもあります。
自宅で簡単に洗えることから、クリーニング代を節約できる点もウオッシャブルスーツの大きなメリットです。さらに、クリーニング店にスーツを持ち込み、仕上がりを受け取るなどの手間も省けます。忙しいビジネスマンにとっては重宝なアイテムだと言えるでしょう。ただし、ウオッシャブルだからといって頻繁に洗濯しすぎると寿命が短くなります。あくまでもスーツだということを忘れずに、洗濯の頻度は月に1~2回以内に抑えるとよいでしょう。
スーツを洗う前の注意点
スーツを自宅で洗うときは、失敗しないように事前確認をしっかりと行うことが大切です。ここからは、スーツを洗う前の注意点について解説します。
色落ちするかどうかを確かめる
生地によっては、水洗いでスーツの色が落ちる場合があります。そのため、洗濯を始める前に色落ちするかどうかを確かめておきましょう。色落ちの有無を確かめるときは、ティッシュと洗剤の原液を使います。まずティッシュを水で濡らし、そこに洗剤の原液を付けてください。そのティッシュをスラックスの裏側などの目立たない部分に当て、5分ほど放置しておきます。このとき、目立つ場所で色落ちのチェックをすると変色した場合にやり直せない恐れがあります。5分後、ティッシュに色が移っていなければ自宅でも洗濯できます。色が移っていた場合、自宅での洗濯は難しいのでクリーニングに出すのが無難でしょう。なお、ティッシュへの色移りがなかったとしても、洗濯によって多少は色が落ちることになります。
上下一緒に洗濯する
スーツの洗濯では、ジャケットとスラックスを一緒に洗うことも重要なポイントです。先述のとおり、スーツを水洗いすると多かれ少なかれ色が落ちます。そのため、ジャケットまたはスラックスの片方だけを洗濯すると、両者の色合いが釣り合わなくなる恐れがあります。どちらか一方が色落ちしている場合、両方とも色落ちしているよりも目立つことになります。スーツを自宅で洗濯するときは、ジャケットとスラックスを同時に洗うのが鉄則です。
ほつれや穴あきがないか確認する
スーツの生地にほつれや穴あきがあった場合、洗濯することで損害が広がる恐れがあります。スーツを洗濯機に入れる前に、ほつれや穴あきの有無をしっかりと確認することが大切です。脇の下や裏地、股の間など、細かな部分まで入念に調べておきましょう。ほつれや穴あきが見つかった場合、自宅での洗濯はあきらめ、クリーニング店に依頼するのが無難です。クリーニング店のなかには、衣服のお直しサービスをしているところもあります。クリーニングのついでに補修を依頼するのもよいでしょう。また、日を改めてお直しの専門店に依頼するのもひとつの方法です。インターネットで申し込み、宅配で利用できる店舗もあり、忙しい人は活用してみてはいかがでしょうか。
汚れやシミには洗剤の原液を塗る
スーツに目立つ汚れやシミがある場合は、洗濯の前に洗剤の原液を塗っておく方法が効果的です。ティッシュや指先などであらかじめ洗剤を塗りつけておけば、効率的に汚れを落とせるはず。特に、皮脂や汗がつく襟や袖は汚れやすいため、丁寧に確認することをおすすめします。
ポケットの中のものを出す
スーツに限った話ではありませんが、洗濯する前にポケットにものが入っていないかどうかを確かめておきましょう。小型の電子機器などを入れたまま洗濯すると故障の原因となります。また、名刺やティッシュなどの紙類がポケットに残っていた場合、洗濯後の衣類全体に細かいゴミが付着します。後処理が面倒になるため、洗濯前にスーツのポケットには何も入っていないことを確かめてください。
自宅でスーツを洗う方法
スーツの寿命を縮めないためにも、自宅での洗濯は正しい手順で行う必要があります。ここからは、自宅でスーツを洗う方法について順を追って解説します。
必要なものを用意する
まず、スーツを洗ううえで必要なものを用意しましょう。欠かせないのは、中性洗剤と洗濯ネット、そしてスーツ用ハンガーです。中性洗剤は、おしゃれ着用のものかスーツ専用のものを使うようにしてください。洗濯ネットにはジャケットとスラックスを分けて入れるため、大型のものを2つ用意しましょう。洗濯中にたたんだスーツの形が崩れないように、ジャストサイズのネットを用意するのが賢明です。
なお、手洗いの場合は洗濯用の桶か洗面器が必要となります。洗濯ネットは必須ではありませんが、脱水で洗濯機を使うため、ダメージを抑える意味で準備しておいたほうがよいでしょう。
肩に厚みのあるスーツ用ハンガーは、洗濯後のジャケットを干すときに使います。スラックスについては、物干しハンガーのピンチにつり下げて乾かします。乾かした後のシワが気になる場合は、スチームアイロンとアイロン用の当て布を用意しておきましょう。
スーツをたたむ
次に、洗濯に先立ってスーツをきれいにたたんでおきます。スーツをたたんでシワやたるみを防ぐことで、仕上がり具合が大きく変わってきます。たたむ前にポケットを空にし、スラックスはファスナーを閉めたうえでボタンを留めておきます。
ジャケットはフロントボタンを開けたままで、2つ折りにするのが基本です。スラックスはセンタープレスに沿って整えたうえで、2つ折り、または3つ折りにしてください。たたんだジャケットとスラックスをそれぞれ洗濯ネットに収納すれば準備完了です。なお、手洗いの場合はこのたたみ方だとスーツが桶に収まらない場合があります。うまく収まるように、たたみ方は自由に調節して構いません。
洗濯する
まず、洗濯機で洗う場合の手順を見ていきましょう。洗濯の設定では、「手洗い」や「ドライ」といった弱水流のコースを選んでください。弱水流のコースがない場合は桶で手洗いするのが賢明です。お湯で洗濯すると変色する恐れがあるため、なるべく30℃以下の水温で洗いましょう。脱水の時間にも注意が必要です。長すぎる脱水は生地の傷みやシワの原因となるため、1分以内の短時間で設定しておく必要があります。脱水時間を設定できない場合は、自分で時間を計って手動で止めてください。設定が完了したらスタートボタンを押し、適切な量の中性洗剤を投入します。水が十分にたまったら、ネットに収納したスーツを洗濯槽の壁に沿わせるような形でそっと入れ、ふたを閉めてください。
次に、手洗いするときの手順を紹介します。まず洗濯桶に水をため、適当な量の中性洗剤を溶かしておきます。たたんだスーツを桶の水に浸し、力加減に気を付けながら押し洗いしましょう。このとき、強く押したりこすったりすると生地が傷む原因となるため、優しい力加減を心がける必要があります。何度か押し洗いしたら、10~15分ほど放置してください。その後、水を入れ替えながら洗剤をすすぎ落としていきます。押し洗いのときと同じ要領で、泡が立たなくなるまで優しくすすぎましょう。すすぎ終わったら、洗濯機に入れて30秒~1分ほど脱水します。脱水によるダメージを抑えたい場合は、洗いはじめる前からスーツをネットに入れておきましょう。あるいは、洗濯機を使用せず、洗ったスーツにタオルを押し当てて乾燥させる方法もおすすめです。なお、押し洗いの回数などによって色落ちの度合いは異なるため、手洗いの場合もスーツは上下一緒に洗う必要があります。
干す
正しい方法で洗濯できたとしても、間違った干し方でスーツが台無しになってしまう可能性があります。そのため、正しい干し方を押さえておくことも重要なポイントです。脱水が終わったらスーツを素早く取り出し、縫い目に沿って軽く引っ張ることで、全体的にシワを伸ばしておきましょう。ジャケットは用意しておいたスーツ用ハンガーにかけてください。一般的な針金のハンガーなどにかけると、型が崩れたり、シワになったりする恐れがあるので注意が必要です。ジャケットのフロントボタンを開けたままにしておくと、風通しがよくなって早く乾きます。また、袖口に丸めたタオルを詰めておけば、型崩れを防ぐと同時に、重みでシワを伸ばすことができます。
スラックスについては、ボタンを外し、ファスナーを開けたうえで、物干しハンガーを使って筒状に干してください。スラックスの中に空間を設けることで乾きやすくなり、型崩れも防げます。こちらもジャケットと同じように、丸めたタオルを裾に入れておくとよいでしょう。
ハンガーにつるしたジャケットとスラックスは必ず日陰で干します。直射日光に当てると、生地の傷みや色落ちにつながるためです。なるべく日が当たらない、風通しのいい場所を選んでスーツを乾かします。そして、生乾きのにおいを発生させないために、完全に乾くまで干しておくことも大切です。なお、スーツの洗濯において乾燥機の使用はご法度です。生地の傷みや縮みの原因となるため、生乾きが嫌だからといって乾燥機を使うことのないようにしましょう。
アイロンをかける
乾かしたスーツのシワが気になる場合は、アイロンをかければシワを伸ばすことができます。ただし、アイロンがけの前に必ず洗濯表示を確認しましょう。洗濯表示には、アイロンをかけるときの適切な温度が記載されています。必要以上に高い温度でアイロンがけをすると、生地の傷みやテカリにつながるので注意してください。また、「当て布を使用」と記載されている場合は必ず当て布を使うようにしましょう。
スーツのアイロンがけは、裏地の次に表地という順番で行います。まずは裏返してシワを伸ばしていき、完了したら表に戻して再びアイロンをかけましょう。スラックスはセンタープレスなどの折り目を意識しながらアイロンがけをするのがポイントです。ジャケットの腰まわりや袖、スラックスの裾など、丸く膨らんだ部分にアイロンをかけるときは、丸めたタオルを活用してください。内側から丸いタオルを当ててアイロンをかけることで、スーツのシルエットを立体的に整えられます。アイロンがけがすべて終わったら、スーツをハンガーにかけて冷めるのを待ちます。
スーツを長持ちさせるためのお手入れ方法
正しい方法を押さえていればスーツは自宅でも洗濯できますが、頻繁に洗いすぎると生地は傷みやすくなります。日頃から丁寧なメンテナンスを心がけ、なるべく洗濯せずに済むようにしておくとよいでしょう。ここからは、スーツを長持ちさせるためのお手入れ方法について解説します。
こまめにブラッシングする
スーツを着用した後は、保管する前にブラッシングすることが大切です。多くのスーツにはウールが使われていますが、ウールにはゴミやホコリが付着しやすいという性質があります。食べかすなどのゴミを放置しておくと、虫食いのようなトラブルにもつながりかねません。スーツを着用した後は、ブラッシングでゴミやホコリを落とす習慣をつけてください。
スチームアイロンでシワを伸ばす
毎日のようにできる軽いシワも、ほうっておくと解消が難しい頑固なシワになってしまいます。スチームアイロンを活用して、日々の軽いシワはスチームで直すようにしましょう。スチームアイロンであれば、スーツをハンガーにかけたままシワを伸ばすことができます。手軽にできるため、毎日実践してもそれほど負担にはならないはずです。
スチームアイロンがない場合は、シワが気になる部分にスプレーで水をかけ、お風呂に入った後でスーツを浴室につるしてみましょう。浴室の蒸気の効果で、軽いシワなら伸ばすことができます。なお、スチームアイロンや浴室でシワを伸ばした後は、風通しのいい場所でスーツをよく乾かす必要があります。
着用後は風通しのいい場所で保管する
一日着用したスーツは汗などを吸って湿っています。そのままクローゼットなどにしまうと湿気がこもってカビの原因となるため、スーツ用ハンガーにかけ、風通しのいい場所に吊るしておきましょう。このとき、スーツのポケットからはものを出し、空にしておくことが大切です。ポケットにものを入れたまま保管すると、重みで型が崩れる恐れがあります。
連日の着用は避ける
先述のとおり、一日着用したスーツは湿気を多く吸っているものであり、連日着用していると徐々に湿気が蓄積されていきます。その湿気が生地の傷みの原因となる場合もあるため、連日同じスーツを着用しないよう心がけましょう。一日着たスーツは一日以上休ませることで、スーツの寿命が伸びて長く愛用することができます。1着のスーツを使いつづけていると傷みが早くなり、かえって出費がかさむ結果となります。
まとめ
「スーツはクリーニングに出すもの」と考えている人は多いでしょうが、なかには自宅で洗濯できるものもあります。洗濯表示を見て、自宅で洗えることが確認できたら、正しい方法を調べたうえで洗濯するとよいでしょう。自宅で洗うことができれば、クリーニングのコストや手間を削減できます。忙しいビジネスマンほど、自宅での洗濯を試してみる価値があるのではないでしょうか。ただし、方法を間違えるとせっかくのスーツを台無しにしてしまう恐れがあります。正しい手順や注意点をよく確認し、慎重に実践することをおすすめします。
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