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『このサイテーな世界の終わり』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #17

2022.03.17

『このサイテーな世界の終わり』<br> いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #17

旅をとおして二人が見つけたものとは?

この作品は、すべてが嫌になり家を飛び出したアリッサと、いつかアリッサをあやめたいと思っているジェームスの旅物語。お金もろくに持っていないふたりの旅が、順調に進むはずはなかった。衝動的なアリッサの行動が、とんでもない事件に発展し、自由を求めて逃げ出したはずが、警察から追われることになるなんて……。小さな街しか知らない17歳には、目に映るものや未熟な経験をよりどころに想像をすることしかできない。外に出れば周りの理不尽な大人たちよりも、もっとマシな人間がいると思い込んでいたが、現実はそう甘くはなかった。

そんな困難に立ち向かっていくうちに、ふたりの気持ちが変化してゆく。最初はお互い都合がいいだけの相手だったはずが、お互いを求め合うようになっていく。愛することを知らないふたりが、愛の存在に気づきはじめるのだ。

ロードムービーかと思いきや、クライムサスペンスに発展し、甘く切ないラブストーリーにと。さぞかし忙しいドラマかと思いきや、全体はかなりシュールなブラックコメディー。ロードムービーの巨匠ヴィム・ヴェンダースを思わせるスライドギターがそうさせるのか、美しいイギリスの田園風景がそうさせるのか、シリアスな場面もどこか滑稽で思わず笑ってしまう。

なんとこの作品、ブラーのグレアム・コクソンが音楽を担当している。シリアスな展開の中にポップさがあるのは彼の粋な選曲のおかげだろう。まるでミュージックビデオのような、アーティスティックな映像美も見どころのひとつ。ヴィム・ヴェンダースや『バッファロー’66』の影響がたびたび見受けられるので、普段はドラマを観ない映画ファンにも観ていただきたい。

1話30分弱で、シーズン1と2を合わせて全18話と、連続ドラマにしてはミニマムなサイズ。現在Netflixにて配信中!
「人生って不思議だよね。そのときはやり過ごしちゃうけど、振り返ると転機だったと気づくんだ」
そんなふたりの転機を、ぜひ見届けて!

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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