週末の過ごし方
『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #27
2022.07.21
非英語圏のドラマシリーズでは「世界中でもっとも視聴された作品」として知られる、スペイン発クライムサスペンスドラマ『ペーパー・ハウス』。スピード感のあるアクションに加え、ディストピアにおける深層心理を巧みに描き、社会現象まで巻き起こした。
この大ヒット作の韓国版リメイクが6月24日からNetflixにて配信され、早々に同サービスドラマ部門ランキング(日本)で1位を獲得。オリジナル版のおおまかなプロットは変わっていないものの、韓国ならではの設定が興味深く、話題沸騰中だ。
時は2025年、朝鮮戦争終戦後。北朝鮮と韓国は統一に向かって歩みはじめ、かつて北と南を隔てていた共同警備地区に共同経済区域を設立。平和を象徴する場として造幣局を建設し、統一通貨を発行することとなった。
北の人々は期待を胸に、南を目指す。北朝鮮の解放で誰もが豊かになると信じていたのだ。しかし、実際富を手にしたのは一部の大企業や金持ちばかり。格差は広がる一方だった。
北からの移住者に対する視線は冷たく、まともな仕事に就くこともできない。「ようこそ資本主義!」なんて言葉はただの幻想だったのか……?
そんななか「教授」と呼ばれる頭脳明晰な男が、南北から選りすぐりの男女8人を集め、統一造幣局を乗っ取り、造幣局員を人質にし、誰も手にしたことのない統一紙幣を奪うという計画を立てた――。
ストーリーの時代背景は違えども、登場人物や展開に大きな改変はまだ見られない。しかしオリジナル版で描かれた完璧な強盗団というよりは、多少の危なっかしさがあり、この先どうなってしまうのかまったく予想がつかないハラハラ感がある。
オリジナル版では強盗団の人間性を深掘りし、気づけば「彼らの作戦が成功しますように」と願っていたものだが、韓国版では強盗団に対して設置された南北共同警察チーム長のソン・ウジンを主軸として物語が進んでいるようにも見受けられるため、視聴者はどちら側に感情移入するか分かれるかもしれない。
オリジナル版より人間臭く、極限に追い込まれていくたびに引き出されていく本性がまたリアルで、ヒューマンドラマとしての魅力もたっぷり詰まった作品になっている。