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『グッド・オーメンズ』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #60

2023.11.09

『グッド・オーメンズ』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #60

イギリスを代表するファンタジー作家、ニール・ゲイマンとテリー・プラチェットによる同名小説が原作のブラックコメディ・ファンタジー『グッド・オーメンズ』。待望のシーズン2が今夏から配信スタートした。

『天使と悪魔が現代に!?』でおなじみ、今回はニール・ゲイマンが引き続き製作総指揮&脚本を務め、完全オリジナルストーリーだというのだから、原作ファンも見逃すわけにはいかない。

天地創造から6000年来の付き合いがある、天使アジラフェルと悪魔クロウリー。ふたりの出会いは、エデンの園を出て行くアダムとイヴを見送ったときだった。天使アジラフェルは(自信はなかったが)アダムに炎の剣を与え、悪魔クロウリーは(疑いながら)イヴに知恵の実を食べさせた。

以来ふたりは地上に赴任し、イギリスでの暮らしを謳歌(おうか)していた。天使アジラフェルは、気が弱くて、お人好し。かなりのグルメ通(お寿司が大好き)で、現在は書店を経営し、預言書をコレクションしている。悪魔クロウリーは、荒っぽくて、気が短い。クイーンを爆音でかけながら、年代物のベントレーを乗り回している。

神の偉大なる計画が始まった。悪魔たちは世界の終わり、つまりはハルマゲドンに向けて“反キリストの子”と呼ばれるサタンの子を、アメリカの外交官であるダウリング家に生まれた子とすり替える計画を立てていた。計画が動きはじめたと知った悪魔クロウリーは、同じく地上に愛着を持つアジラフェルを説得し、ハルマゲドンを止める計画を秘密裏に画策するのだった。

あれから11年。互いにサタンの子ウォーロックを見守りつづけ、その時は来た。地獄の番犬の到着を待っていたが、一向に現れない。そこで初めて、すり替えがうまくいかなかったことに気づく。いったいサタンの子はどこに? そんななか、黙示録の四騎士は地上に放たれてしまった。

物語はすべてを動かしている神のナレーションと共に進む。天使と悪魔と、相容れず敵対しつづける2つの勢力が、現代では組織化されているのがなんとも面白い。パワハラ全開な上司たちや、おっちょこちょいでポンコツな下っ端たち。それぞれ人間のことを基本的に理解しようと思っていない者ばかりで、知ったかぶりな人間あるあるも、的外れなものばかり。そしてなんと、スパイまでいる始末。威圧的な幹部陣のご機嫌を取りながら、天使アジラフェルと悪魔クロウリーはハルマゲドンを阻止しようと奔走する。

天地創造から世界を見てきたふたりの歴史ネタが皮肉たっぷりで笑いを誘う。音楽カルチャーネタや、誰もがそんなわけないと思っているような聖書ネタまで、イギリスらしいブラックユーモアがこれでもかと作中に登場する。

役割を与えられた者たちが、いにしえより決められたルールを押し付けられながらも、自らアイデンティティーを確立していく様子は、多様化した現在を描いているからこそできること。ドタバタコメディーのなかに、歴史的価値観の変化を実感し、この作品の根本に強く秘められたメッセージを読み取ることができる。

近代化された天使と悪魔の衣装にも注目。天使側はSF映画に出てきそうな、白とグレーを基調にしたミニマムでスタイリッシュな装い。デジタル化も進み、人間界以上に高性能な機器を使用している模様。

対して悪魔側は、まだ紙の書類に囲まれ、ボロボロな衣服、頭には自身の象徴する動物を載せたり、実に奇妙な装い。これぞ悪魔!というイメージどおり、それでいておしゃれなのがすごい。

『SHERLOCK』好きなら絶対に観てほしい! 監督や音楽など、同作の製作陣が多く参加しており、サタンの声役でベネディクト・カンバーバッチも参加している。あのテンポ感が好きならば、『グッド・オーメンズ』も絶対に楽しめるはずだ。

シーズン2では、ファンタジー要素は控えめで、人間ドラマに軸を置いていることから、また違った角度で楽しむことができる。なにより、天使アジラフェルと悪魔クロウリーの掛け合いがまた観られるなんて! ふたりの関係性は、どうなってゆくのやら……。

『グッド・オーメンズ』は、Amazon Prim Videoにてシーズン2まで配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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