特別インタビュー
アイヌ民族の多彩な文化に触れて、感じて、考える。
上白石萌歌、アイヌ文化に触れる北海道へ。【後編】
2023.11.22
北海道の中南部にある白老町。
古くから先住の民であるアイヌ民族が暮らし、いまもアイヌ民族が多く住む町として、その文化や伝統を継承している。
俳優の上白石萌歌さんとアイヌ文化に触れる旅へ──。
アイヌ民族の文化や歴史、奥深い世界に触れる
文化的に豊かな地域や独特の歴史を持つ場所を訪れる際には、その土地の風土や歴史を深く理解することで、より充実した旅になるだろう。感受性が豊かで知的好奇心いっぱいの彼女が次に目を輝かせたのは、宿から徒歩5分ほどの「ウポポイ 民族共生象徴空間」だ。ここは以前、ポロトコタンという名で50年以上愛されてきた施設があった。2018年3月末に一度クローズしたが、2020年に国立の施設へと生まれ変わった。複合施設になっており、約10万平方メートルの敷地に、日本最北の国立博物館である国立アイヌ民族博物館をはじめ、国立民族共生公園、慰霊施設がある。アイヌ民族の文化や歴史をさまざまな角度から見たり、体験することができるのだ。
博物館に入った上白石さんをくぎ付けにしたのは、樺太アイヌが霊送りの儀式に用いたクマ飾りとクマつなぎ杭。クマをつなぐための杭は高さ約6メートルもあるトドマツ製で、白老の山林から伐採されたものでできている。約1年の歳月をかけて復元されたというシンボル的展示だ。
「私、今までアイヌの文化に触れたことがなかったので、目に映るすべてが新鮮で! 施設内の標識がアイヌ語で書かれていたり、 お家やお衣装、楽器もすべて。教科書で学んだことだとどうしてもイメージしづらいものがあったのですが、体験できるアートですごく親近感が湧いてきて、もっと知りたいなって思いました」。ほかにも彼女は、アイヌ民族の伝統的な信仰や神聖な存在、霊的な力を指す言葉「カムイ」についての映像をまじまじと鑑賞したり、アイヌ民族の伝統楽器ムックリの演奏者とおしゃべりしたり、ミュージアムショップでおみやげを購入したり、伝統的コタンを歩いたり──。
「今回訪れた一帯がすごく研ぎ澄まされていて、文化や建築への興味が湧いてきて止まりません」と言うように、ウポポイはアイヌ民族の歴史、自然観について深く知りたくなる場所なのだ。
ニュートラルな自分を感じられるのが旅の醍醐味(だいごみ)
「お芝居や表現のお仕事は、基本的にずっとアウトプットをしているので、気づいたらカラカラになっていて、心が枯渇していると感じる瞬間があるんです。そんなとき、自然と心を潤してくれるのが旅です。雑念がない頭に新しい情報を入れると、逆に『無』の状態になれて、思考がクリアになるんです。そういうニュートラルな自分を感じられるのが、旅の醍醐味かなと思います」
チェックアウト時にふわっと脱力した様子だった彼女、耳を傾けると「人生で一番すてきでおしゃれな温泉でした。○湯も△湯も神秘的で朝風呂もして温まりましたぁ」としみじみ。旅は童心に立ち返らせてくれる。
上白石萌歌(かみしらいし・もか)
2000年、鹿児島県生まれ。第7回「東宝シンデレラ」オーディション、グランプリ受賞をきっかけにデビュー。2018年、第42回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。ドラマ『パリピ孔明』(フジテレビ)に出演中。『義母と娘のブルース FINAL』が2024年1月2日放送。
ジャケット¥276,100、シャツ¥110,000、スカート¥136,400、パンツ¥128,700/すべてマルニ(マルニ ジャパン クライアントサービス 0120-374-708)、シューズ¥180,400/ジミー チュウ(ジミーチュウ 0120-013-700)、イヤリング¥18,150/テン(テン 092-409-0373)、リング¥18,700/イリスフォーセブン(フーブス 03-6447-1395)
「アエラスタイルマガジンVOL.55 AUTUMN/WINTER 2023」より転載
ここには載せきれなかった上白石萌歌さんの写真はアエラススタイルマガジンVol.55にてお楽しみください!
取材協力/界 ポロト
北海道観光振興機構
Photograph: Kentaro Oshio
Styling: Ami Michihata
Hair & Make-up: Tomomi Shibusawa(beauty direction)
Edit & Text: Tomoko Komiyama