小物

ラインアート シャルマンの眼鏡。
[世界が見ほれる、日本の逸品。]

2024.12.09

技術革新と独自の素材でアイウェアの可能性を拡張した鯖江発ブランド。

日本の逸品3_ラインアート シャルマンの眼鏡 1050_1
写真左は、理知的なラウンド型のフレームと幅広のリムが好相性。中央は、丸みを帯びたスクエアシェイプが、優しい印象を付与する。写真右は、ユーロヴィンテージの趣を醸す厚みのあるクラウンパントシェイプが特徴。リムの上下にあしらったブラウンが個性を演出する。左:眼鏡(XL11110 BR) ¥52,800、中:眼鏡(XL11106 AG) ¥52,800、右:眼鏡(XL11007 BK) ¥95,700/すべてラインアート シャルマン(シャルマン カスタマーサービス 0120-480-828)、ニット ¥49,600/ジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー 03-5784-1238

時間と労力を費やした、理想のマテリアル

日本国内における眼鏡フレーム生産の90%以上のシェアを誇る福井県鯖江市。1956年創業のシャルマンもまた、同地を拠点にするメーカーだ。フレームの小さな部品製造から始まり、現在では約100カ国に販売網を持つ世界有数の総合眼鏡フレーム企業へと成長を遂げた。

そんなシャルマンが、2009年にスタートしたブランドがラインアート シャルマンだ。〝人と一体になるアイウェア〟をコンセプトに掲げ、掛けていることを忘れてしまうような〝未体験の掛け心地〟を付与する。究極のしなやかさを生むために必要だったのが、独自の新素材×イノベーション。そこには“メイド・イン・サバエ”の誇りをかけた、技術者と職人による、トライ&エラーの繰り返しがあった。

デザインの自由度を担保するために加工がしやすく、掛け心地のいい眼鏡を作れる素材。ラインアート シャルマンは、東北大学金属材料研究所と共同で研究を重ね、8年にも及ぶ試行錯誤の末、独自の新素材「エクセレンスチタン」を開発。次世代のチタン合金とも呼ばれるこのマテリアルは、柔軟性、形状記憶性、優れた加工性を併せ持ち、金属アレルギーの原因のトップでもあるニッケルを含まない生体適合性も保証されている。

新素材の開発に伴い、求められたのが「エクセレンスチタン」の特性を最大限に引き出せる新たな接合技術。こちらも、大阪大学の接合科学研究所とふくい産業支援センターとの共同開発により、「レーザ微細接合」技術の開発に成功した。車や飛行機の部品接合に用いられる技術を応用したもので、従来より接合部の強度が高く、0・5㎜以下という超ピンポイントでの接合が可能に。“人と一体になる”繊細で美しいフレームには、2つの新発明が寄与したのだ。

※下に本文が続きます

異業種でも生かされる、高度な金属加工技術

眼鏡フレーム製造で培った技術やノウハウは、異業種にも生かされられている。シャルマンは、2012年にメディカル分野に参入。手術で使用されるハサミや鑷子(せっし)といった医療用鋼製小物を製造する。同年、新たに開発された革新的な医療機器を表彰する「MEDTEC イノベーション大賞」の優秀賞を受賞するなど、注目度は高い。手術医の手先となる医療器具に採用されることは、同社の加工技術がいかに優れているかの証左と言えるだろう。〝メイド・イン・サバエ〟の価値が、アイウェアだけにとどまらないことをシャルマンが示してくれたのだ。

日本の逸品3_ラインアート シャルマンの作業風景1 1050_7
©Yoshihito Sasaguchi(SIGNO)

眼鏡フレームの製造は、一般的に200程度の工程を要するが、ラインアート シャルマンではそれを優に超える300以上の工程を数える。複雑な作業を可能にしているのが、企画から製造までワンストップで行う自社一貫体制である。鯖江にある本社工場では、部品切削加工や表面処理二次加工に加え、手作業で仕上げるリムのカラーリングなどの製造工程を職人たちが担う。また、顔に直接触れる眼鏡は少しの違和感がフィット感を左右するため、パーツの寸法測定ではわずかな誤差も見逃さない。熟練の技術と妥協なき精神が高品質を支えている。

大野拓朗(おおの・たくろう)
1988年、東京都出身。NHK連続テレビ小説や大河ドラマをはじめ、数多くのドラマ、映画、ミュージカル、舞台作品に出演。近年は、活動の場を海外にも広げ、10月にニューヨーク公演を終えた『進撃の巨人』-The Musical-では、主要キャストのひとり、エルヴィン・スミス役を務めた(12月〜2025年1月に日本凱旋公演)。日本の逸品同様に、世界が見ほれる才能としてさらなる飛躍が期待されることから、本企画のモデルを依頼。

「アエラスタイルマガジンVOL.57 AUTUMN / WINTER 2024」より転載

Photograph: Tetsuya Niikura
Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: Ken Yoshimura
Text: Tetsuya Sato

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