紳士の雑学
素材、仕立て、デザインの三拍子そろった英国製ネクタイをあつらえる。[前編]
2017.10.31
ネクタイは男の身だしなみ――これは間違いではないが、どこか義務感のニュアンスがつきまとう。女性に比べれば圧倒的に控えめであることを求められるメンズファッションにおいて、ネクタイはまぎれもなく数少ないアクセサリー。Vゾーンを彩ることにもっと喜びを感じてみたい。
イギリスのドレイクスなら、その特権の行使にふさわしい。1977年創業という比較的新しい歴史ながら、上質な素材、凝った仕立てのハンドメイドにより、世界的に高い評価を集めている。今回はより深くその真髄が味わえるオーダーメイドにトライ。応対してくれたのは、来日した本社スタッフのクリストファー・ガンズ氏。「ビジネスマンが週末に銀座でショッピングを楽しむようなスタイル」とイメージを伝えてみた。
ドレイクスの特徴のひとつに、素材の豊富さがある。上質な生地を扱うメーカーと提携し、糸や織り方まで吟味して選ぶ。いいものであればイタリアの生地も積極的に採用。アーカイブに残っている過去の生地を使い、独特の風合いを生かした仕上げにすることもあるという。今回はガンズ氏がおすすめのネイビー、グレー、ベージュがストライプになった生地をセレクト。
日本で販売しているレディーメイドのネクタイの多くは147cmで均一。自分の体に合う長さが選べるのもオーダーならでは。ガンズ氏は首にサンプルを巻き付け、大剣の先がベルトの幅の中央に来るように調整する。好みによって差はあるが、これが長さの適性基準になるという。大剣幅は7~10cmの間を1cm単位でセレクトできる。
裏地のバリエーションは3種類。表地と同じもの(左)、ネイビーの生地をつけたもの(左から2番目)のほか、裏地なしで剣先の縁を折り返したハンドロール仕様のもの(右)。特にハンドロールは優秀な職人によるハンドメイドならではの仕上げだ。また、小剣の裏側の奥で縫い糸の先端に余裕を持たせたスリップループ(たるみ糸)がつけられる。これがあると、型崩れしにくくなり、長く愛用できる。
細かなオーダーは専用シートに記入される。今回は先ほどの生地で大剣の幅を8cm、裏地なしのハンドロールの仕上げ、ループキーパーつき、芯地は4種類選べるが、あえてドレイクスの推奨をオーダーした。「銀座を歩いてみると、自分のスタイルをもつ洗練された人が多い印象を受けます。そんな方に週末を楽しんでいただけるよう、テクスチャーのあるシルク素材を選びました。ジーンズスタイルでも上品にコーディネートできると思います」とガンズ氏。
ネクタイは自己表現にぴったりのツールだと氏は語る。「だからこそ、気持ちよく着用できることが大切です。ソフトな締め心地で、立体感が演出できるハンドメイドをぜひ試していただきたいですね」
オーダーしたネクタイは裏のロゴがゴールド。そのプレミアムな輝きが、自分だけの一本という満足感をよりかき立ててくれるはずだ。週末の銀座にふさわしい完成品を心して待ちたい。
オーダー価格:¥27,000~(税別) 納期:約3~4カ月
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text: Mitsuhide Sako(KATANA)