旅と暮らし

俳優・岸谷五朗、街を呼吸する。
第5回 日本橋

2017.12.05

俳優・岸谷五朗、街を呼吸する。<br>第5回 日本橋

日本橋は暖簾(のれん)の似合う街だ。

江戸時代から続く老舗がいまも軒を連ね、商いに営む。その多くに屋号の入った暖簾がかけられている。日本初のデパートである日本橋三越も例外ではない。ほかの百貨店同様に呉服屋が前身だけあって、〇に「越」の店章が染め抜かれた暖簾をもつ。いまも時折ライオン像が鎮座する正面玄関に掲げられるのだが、大きな吹き抜けとパイプオルガンがあるルネッサンス建築にもしっくりとなじみ、見事な和洋折衷ぶりを見せる。

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だが、暖簾は店だけのものではない。歌舞伎などの演劇にも一座の象徴として愛用される。岸谷五朗が寺脇康文と組む演劇ユニット・地球ゴージャスも同様。旗揚げ以来、毎回異なるキャストと組むプロデュース公演の形式を取っているため、暖簾にはユニット名とふたりの名前のみが書かれている。これを楽屋の入り口にかけるのが、ロングラン公演開始前の恒例行事だ。

「無事に最後まで上演できますようにってお祈りするんです」と岸谷は語る。

もともと人気劇団スーパー・エキセントリック・シアターの看板俳優だった岸谷と寺脇だが、自分たちがやりたい芝居を求めて退団。現在も2年に一度の公演ながら、最もチケットを取りにくい舞台のひとつと呼ばれるほど人気を博している。

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「寺脇とはずっと楽屋が一緒なんですよ。知り合って30年になりますが、ケンカをしたことがない。たまにそろってのテレビ出演で別々の楽屋になることあるんですが、『なんか落ち着かない』といって、必ず僕の楽屋に荷物を持ってやって来ます(笑)」

店も芝居も、始まりは個人の情熱。それを育み、多くの人を巻き込むことでうねりを起こし、大きな潮流となる。暖簾とはすなわち旗。そのもとに集う者にとっての原点、そして矜持だ。

古くて新しい街、日本橋にふさわしいのは当然かも知れない。

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<日本橋とは?>
物流の手段が主に水運だった江戸時代より、便のよかった日本橋界隈は経済の中心として発達した。明治以降、洋風建築が多く建てられ、金融街として栄える。関東大震災では甚大な被害を受け、魚河岸が築地に移転。日本橋が最初に架けられたのは1603年で、現在の石造りの橋梁は19代目(20代目の説もあり)。かつて五街道の起点であったことから、道路元票が設置された。麒麟(きりん)や獅子(しし)など、和洋折衷のモチーフは一見の価値あり。

<訪れた店>
日本橋三越本店
1673年に越後屋として創業。1904年に「デパートメントストア宣言」をし、従来の呉服屋から日本初の百貨店になった。1914年に完成した新館は、スエズ運河以東で最大の建築と呼ばれたが、関東大震災で被災。その後、増改修した現在の建物は1935年に落成した。2016年には国の重要文化財に認定。トレードマークのライオン像は、1914年にロンドンのトラファルガー広場にある獅子像をモデルとしてイギリスで製作され、現在は他店舗にも置かれている。東京都中央区日本橋室町1-4-1 Tel 03-3241-3311 営業時間10時30分~19時30分(新館9F・10Fレストラン11時~22時 不定休 ※1月1日休業、2日、3日10時~18時 http://mitsukoshi.mistore.jp/store/nihombashi/index.html

<岸谷五朗(きしたに・ごろう)>
1964年生まれ。大学時代から劇団スーパー・エキセントリック・シアターに在籍し、舞台、テレビ、映画で活躍する。特に1993年「月はどっちに出ている」では映画初主演にして多くの映画賞を受賞し、高い評価を集めた。94年に独立後、同時に退団した寺脇康文と組み、演劇ユニット地球ゴージャスを主宰。出演以外に演出・脚本も手がけ、毎公演ともソールドアウトとなる人気を集めている。次回のプロデュース公演「ZEROTOPIA」は赤坂ACTシアター(2018年4月9日~5月22日)ほか、全国5都市で公演予定。チケットはいよいよ12月9日から発売される。
https://www.chikyu-gorgeous.jp/vol_15/

ジャケット¥190,000、シャツ¥53,000、パンツ¥83,000、チーフ¥16,000、ショール¥43,000、靴 参考商品/すべてエトロ(エトロ ジャパン 03-3406-2655)

掲載した商品はすべて税抜き価格です。

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Photograph:Satoru Tada(Rooster)
Styling:Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair:AKINO@Llano Hair(3rd)
Make-up:Riku(Llano Hair)
Text:Mitsuhide Sako (KATANA)

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