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2017年、ここが気になった!そのファッション大丈夫?
ビジネスマン編
2017.12.27
前編では、メンズファッションイラストレーター綿谷 寛さんとアエラスタイルマガジン編集長の山本晃弘による「2017年、ここが気になった!そのファッション大丈夫?政治家編」を配信。後編は、ビジネスマン編をお届けする。髪型や足元など細部まで「イケてないファッション」をその理由を考察しながら、たっぷり語ってもらいました。

コリドー街に集う若手ビジネスマンのファッションに思うこと。
編集長 最近の若いビジネスマンの着こなしはどうですか。例えば、銀座のコリドー街はいま、ビジネスマンとOLの出会いの場、有名なナンパスポットになっていますが、そこに集うサラリーマンのファッションって、どんな特徴があるんでしょうね。
綿谷さん(以下敬称略) この間、通りかかって驚きましたよ。出会い目的の人がわんさか、ひっきりなしに声かけて、かけられての応酬で、真っすぐ歩けないくらいの混雑でしたよ。だいたい2~3人で歩くんだよね、みんな。若い人たちは学生ノリになれるのが楽しいのかな、仕事からも上司からも離れて、細身シルエットのスーツで上着を脱いで。足元は素足に靴、ワイドスプレッドのシャツをボタン2つはずしてた。 カジュアル感出してましたね。
編集長 ソックスなしのスタイル、夏は特に多いけど、どうなんでしょうね。
綿谷 これだけソックス脱ぐスタイルが多いと、もうハズシとか抜け感とかないよね。ハズれちゃってるし、抜けちゃってる。
編集長 いじましいと思うのは、素足に見せるためのショートソックスがちらっと見えたとき。あれは嫌だよね。夏に調子に乗って、私もトライしようとしたんだけど、あのちらっと感がいじましいのよ。
綿谷 私も10年前に一度だけやったことあるの。コットンスーツ着たときに、脱いじゃおうって。落ち着かない気持ちで出かけたら、駅で偶然女房に会ってさ、「あれ? ソックスは? 履かないの? 変よそれ」で終了。でもさ、もったいないよ、ソックスはセンスの見せどころでもあるんだから。たった2000~3000円でおしゃれかどうかを見せられるコストパフォーマンスのいいアイテムなのに。
編集長 コストパフォーマンスのいい小物といえば、ネクタイ協会の方から「最近ではポケットチーフが売れてきている」と聞きました。これはうれしいですよね。ずっとキザだと言われていましたが、チーフは正しいおしゃれです。
綿谷 僕も女性から、男性にどんなギフトをあげたらいいかなんて相談されたら、「ポケットチーフでもあげときなよ」と答えます。麻の白なら間違いないし、きちんとしたお店に行けば、ペーズリーやドット柄などいろいろありますよ。自分じゃ買わないという人も、チーフはもらったら嬉しいギフトですよね。おしゃれな贈り物という感じがします。
編集長 もうひとつ、繰り返しになっちゃうけど、ビジネススーツに無造作ヘアがどうしても気に食わない。無造作って言いながら、必死で造作しているあの感じ? いじましいよ。いや、自分ができないから妬(ねた)んでいるわけじゃなくて(笑)、スーツのときの髪型は坊主かオールバックか、七三分け。これが鉄則だと思いますよ。だから若い世代がしているツーブロックの七三分けはあり。みんなアレにしてほしいくらい。
スーツスタイルを洗練させるには?
編集長 今年はリラックスパンツもトレンドでしたが、あれは着る人と年齢を選ぶと思いましたね。ウエストのいちばん太いところをドローコードで絞める仕様になっているから、下がってきたら落ちっぱなしになってしまうんですよ。最終的にはズレて、シルエットもかっこ悪くなるし。リラックスパンツって言っても全然リラックスできない。
綿谷 でも山本さん、そういうの着そうだよね(笑)。「オレ知ってるよ」って感じで。僕ははかない。
編集長 そう、綿さんはないよね、ずっと一貫してる。ブレずに英国スタイルです。迷ってイタリア方面に行くみたいなことはないんですか?
綿谷 ワンアイテム採り入れるくらいはあるよ。イタリアのスーツも購入したし。トレンド的なものは把握してるし、着こなしに採り入れることもあるけど、全体で見ると昔から変わらないね、ということになる。サイズ感は自分の似合うバランスってあるじゃない? それは崩さないから、同じように見えるのかもしれないね。
でも、変わらないって言うけど、今日のパンツの裾幅も21cmでけっこう太いんだよ。18cmにしている人とか多いけど、同じ世代だと攻めて細くしている感じが逆におじさんっぽいんだよね。
編集長 それはよくわかるなあ。ちなみに、綿さんはモノを買うとき、何に引かれて手に取る事が多いですか? 背景にあるストーリー? それとも色とか素材や柄?
綿谷 世界が広がりそうなモノに引かれる。手に取って「あぁ、これ着てあのバーに行ってみようかな」とか、着ているシーンが想像できて、その先の物語が見えたとき。
編集長 そうですか。自分の人生や日常がどんなふうに広がるかを含めて洋服だというのは、非常によくわかります。政治家もビジネスマンも、そんな風にスーツスタイルを磨いていけたらいいですよね。
<前編はこちら>
プロフィル
綿谷寛(わたたに・ひろし)/イラストレーター
1957年東京生まれ。愛称は“画伯”。 1979年、雑誌『ポパイ』よりイラストレーターとして活動。以後『メンズクラブ』をはじめとして数多くの男性誌に寄稿し、とくに1950~60年代黄金期のアメリカン・イラストレーションを継承したタッチで描く正統派のメンズファッション・イラストで人気。クラシックな男の装いについても造詣が深い。一方、コミカルなタッチのイラストと文による体験ルポも人気を博するなど、多彩な顔をあわせもつ。
山本晃弘(やまもと・てるひろ)/AERA STYLE MAGAZINE編集長
「MEN’S CLUB」「GQ JAPAN」などを経て、2008年に朝日新聞出版の設立に参加。同年、編集長として「アエラスタイルマガジン」をスタートさせる。新聞やWEBなどでファッションとライフスタイルに関するコラムを執筆する傍ら、幅広いブランドのカタログや動画コンテンツの制作を行う。トークイベントで、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南するアドバイザーとしても活動中。
Illustration:Hiroshi Watatani
Text:Noriko Ooba