お酒
未来を担うボージョレワイン
ジュール・メトラ ヴァン・ド・フランス・ルージュ・シルブル 2016
[今週の家飲みワイン]
2018.12.21
「ボージョレの頂点の造り手のひとり、イヴォン・メトラの息子のジュール・メトラが造るワインです。初ビンテージの2015年は、正直そこまでのものではなかったのですが、2016年を飲んで、その素晴らしさに生まれたときからぶどうと暮らし、ぶどうが体の一部になっている人の英才教育と遺伝子にはあらがえないなと感嘆しました」と梁さんも絶賛する。
ジュール・メトラは2008年に南仏で研修を始め、その後はボーヌの学校などに通ったのち、2010年に父イヴォン・メトラの営むフルーリーのドメーヌに戻り、わずか5kmの距離に自身の畑を所有したという。そもそも父のイヴォン・メトラは、亜硫酸非使用を提唱した醸造学者ジュール・ショヴェの影響を受けて、初ビンテージから亜硫酸を使わないワイン造りを続けてきた。
「自然派ではあっても、クラシックなワイン造りをしてきた父のイヴォン・メトラに比べ、息子はよりコンテンポラリーで軽やかで生き生きとしたワインを造っています。伝統的なボージョレは土っぽいニュアンスが強く出ることがありますが、ジュールのワインはそれをまったく感じさせない、バランス感が見事。結果、美しい、エレガントなワインに仕上がっています。これは技術うんぬんというよりも、センスなんですね」
このピュアでエレガントな味わいには、軽やかで切れのいい料理がよく合う。青かびチーズとチコリのサラダや、鶏肉や豚肉などの白い肉、野菜や魚介のフリットなどにもよさそうだ。食前に上質な生ハムなどをつまみながら飲むにもぴったりだろう。
「父を超えるかもしれない、才能の片鱗を示したことで、すごく未来を感じさせてくれました。年を経るごとにどのように変化を見せるのか、毎年の成長を追いかけていきたい造り手ですね」と梁さん。
同じ世代の素晴らしい造り手を追いかけるというのも、ワインの楽しみ方のひとつだ。ボージョレの知られざる奥深い魅力に触れながら、毎年楽しみに購入してみたい。
Photograph:Makiko Doi