お酒
日本人醸造家がつくる海外で評価されてるワインの味は?
Sato リースリング 2012
[今週の家飲みワイン]
2019.01.18
“Sato”という名前からわかるように、こちらは日本人の醸造家が造っているワインだ。日本人が海外で造っているワインの中でも、非常にクオリティの高いワインメーカーとして評価を確立していると、梁さんも言う。
佐藤夫妻がワイン造りを始めるに至った経緯は実に興味深い。金融機関に在籍中、転勤先のロンドンで世界のワインに触れて、ワインの魅力に目覚め、自らワインを造ろうと思い至る。2006年にニュージーランドへ渡り、クライストチャーチのリンカーン大学で栽培と醸造学を学ぶ。その後、ニュージーランドでも屈指のワイナリー、セントラル・オタゴのフェルトン・ロードでワイン造りのキャリアをスタートさせる。そしてついに2012年には地元で畑を借り、サトウワインズのワインを造り始めた。
セントラル・オタゴは南緯45度、世界で最南端に位置するワイン産地だ。まわりを2000m級の山に囲まれ、昼夜の寒暖差が大きく、降雨量が少なく、乾燥している。日照時間が長く、収穫期は乾燥した涼しい気候が続くため、ぶどうはゆっくりと熟し、良質な酸と糖を持つ。90年代後半に生まれた若い産地だが、そうした恵まれた環境の中でみるみるうちに注目のエリアに昇格していった。
「意外にもオーガニック化があまり進んでいないニュージーランドの中で、佐藤夫妻は徹底的にオーガニックにこだわり、畑を開墾するところから取り組んできました。しかもナチュラルなワインを造っているにも関わらず、ただ自然に任せるのではなく、すごく論理的で緻密なワイン造りをしていらっしゃる。その結果、製品が実に安定しているのです」と梁さんも絶対の信頼をおく。
ブルゴーニュ、米国オレゴン州と並んでピノ・ノワールの三大産地とも言われるセントラル・オタゴであるから、ご多分に漏れず、佐藤夫妻もピノ・ノワールから造り始めたが、次に取り組んだぶどうの一つであるリースリングが、実はクオリティに比して、コスパが抜群によいと梁さんは薦める。
「リースリングという品種は亜硫酸の添加が少なすぎると、酸化が進んでしまいやすい品種。それを、ギリギリのラインを見定めて造っているのが実に素晴らしいですね。硬質な味わいになりがちなリースリングの柔らかみを上手に出しています。それもナチュラルな造りゆえ。そのうえで、寒暖差の生む、透明感のあるきれいな酸の調和が素晴らしく、Sato Winesというワインメーカーのすごさを感じます」と梁さん。
日本人として、世界的に評価されている醸造家の造る1本を味わってみるのも、誇らしくて、楽しい時間だ。仲間との集まりに持って行けば、話題のきっかけにもなるだろう。
Photograph:Makiko Doi