腕時計
SIHH2019 ジュネーブサロン・リポート
IWC
2019.02.15
高級時計の新作がいち早く出そろう、毎年恒例の国際展示会・SIHH(ジュネーブサロン)がスイスで1月14日から17日まで開催された。ラグジュアリー感あふれる落ち着いた雰囲気の会場に、約2万3000人が来訪したという(主催者発表)。このSIHH2019から、主要ブランドの動向と、魅力的な新作をピックアップして紹介する。
「パイロット・ウォッチ」から新シリーズがテイクオフ!
IWCは昨年に創立150周年を迎えたが、今年は長い歴史と圧倒的な人気を誇るロングセラーの「パイロット・ウォッチ」にフォーカス。「スピットファイア」と「トップガン」の新シリーズが発表され、さらに「プティ・プランス」と「アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ」で3つのラインが新作として登場した。
IWCの「パイロット・ウォッチ」は、プロフェッショナルな機能性だけでなく、大空を飛翔するロマンが感じられるコレクションだが、初代モデルは1936年に製作された「スペシャル・パイロット・ウォッチ」、通称「マークⅨ(9)」とされる。その後「マークⅩⅧ(18)」が現行の最新モデルとして製作されているが、このうち「マークⅩⅠ (11)」をイギリス空軍が1948年から正式採用。同空軍は機体などの派生型(バリエーション)を「マーク・ナンバー」で識別しており、ナンバーにはローマ数字が使われていたことから、IWCもこのネーミング・スタイルを踏襲。当初は別名だった初代まで遡って統一したといわれる。なお「ⅩⅢ(13)」と「ⅩⅣ(14)」は欠番。
「スピットファイア」は、「マークⅩⅤ(15)」にメタリックな高級感を加えて2004年に初めて発表されたシリーズ。今年の新作では、視認性などの機能とデザインの融合をさらにブラッシュアップしているほか、すべてのモデルに自社製ムーブメントを搭載したことが際立った特長だ。ステンレススチールのケースにブラックダイヤルとグリーンの布製ストラップの組み合わせと、持つ人だけの経年変化を楽しめるブロンズケースにオリーブ・グリーンのダイヤルとカーフストラップの2種類に大別できる。
3針の自動巻きからクロノグラフ、第2時間帯表示を備えたUTC(GMT)に加えて、ベゼルを回転させて異なる時間帯をセットするワールドタイム(特許取得)や永久カレンダーとラインナップは幅広い。その中でもビジネスマンにオススメしたいのは、最もベーシックな「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」。直径39㎜のコンパクトなケースはスーツの袖口にもしっくりと馴染むほか、軟鉄のインナーケースがスマホなどの磁気からムーブメントをしっかりと保護。約72時間(約3日間)のロングパワーリザーブなので、休み明けなどに慌てて巻く必要もない。それでいてケース厚はわずか10㎜程度。防水性も含めて、ミリタリーを出自とする実用性や利便性に優れており、価格的にも日常使いに最適なモデルではないだろうか。
もうひとつの新シリーズ「トップガン」は、2007年から「パイロット・ウォッチ」に追加された上級機種。同名の映画で描かれたように、アメリカ海軍精鋭パイロット育成プログラムの通称に由来する。大きな負荷がかかる過酷な飛行条件で着用されることを前提に、軽量で堅牢なチタンやセラミックをケースに使用してきた。新シリーズではIWCが独自開発したセラタニウムを初めて採用。表面硬度が高く傷がつきにくいセラミックに、強度や耐食性などに優れたチタンを融合した特殊合金であり、双方の優れた特性を持つとしている。
また、IWCでは初となるサンドカラーのセラミック製ケースによる個性的な限定モデル「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン“モハーヴェ・デザート”」も登場した(タイトル写真)。アメリカ海軍最大の陸上施設、チャイナレイク武器センターが設置されているモハーヴェ砂漠から着想。ケースと布製ストラップのサンドカラーが同海軍パイロットの制服にマッチするという。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
問/IWC 0120-05-1868
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。