紳士の雑学
スーツの寿命はどれくらい? 正しいケアで長持ちさせる方法も解説
2019.03.13
仕事着としてのスーツは、同時に消耗品でもあります。いくら気に入っていたとしても、経年による劣化は避けられません。どんなときが替え時なのか、またどうしたら長く使えるかを解説します。
スーツにも寿命はあり。着られなくなる目安とは。
スーツはどれくらい着られるものでしょうか。まずはスーツ自体の耐久性と目に見えるダメージがポイントとなります。
<クリーニング協会の基準によるスーツの寿命>
クリーニング業界の基準では夏物3年、冬物4年とされていますが、これはあくまで目安。着方や頻度、日々のケアによって長くも短くもなります。
こうなったら替え時、劣化間違いなしのサインとは?
カビであればクリーニングできれいにすることが出来ますが、虫食いなどで穴が開いた場合のリカバリーは困難。小さな穴でも修復は高価です。またここまでではなくても、以下の症状が出たらそろそろ買い替えを考えましょう。
・型崩れ
誤った保管方法でつぶれてしまうことは決して少なくありません。ウールは糸自体に復元力がありますが、肩のフォルムが崩れてしまうとかなり目立ちます。
・テカリが消えない
テカリは生地の表面がすれて摩耗した状態。アイロンの蒸気あてなどの処置を早めに行えば解消する可能性がありますが、あまり頻繁にテカリが出るようだとなど 元には戻れなくなります。
・膝や肘が抜けている
曲げたり、伸ばしたり、肘や膝の関節部分は負担がかかりやすいところです。生地が伸び切ってしまうと「抜けた」状態、すなわちたるみが出てしまいます。
・縫い目がほつれる
生地に加えられた圧力は縫い目に響きます。縫い目のほつれが繰り返し出てくるようであれば、スーツ全体に無理がかかっていると言えます。また細い生地であれば、何かの拍子に裂けてしまうこともあります。
・裏地にダメージ
スーツの裏地に使われているキュプラなどの化繊は、なめらかで腕通りや動きやすさに秀でているものの、決してタフな素材ではありません。繰り返して使ううちに、ベルトや腕時計の金属部分の接触で裂け目が出てきます。裏地の交換は1万円を超えることも多いですから、買い替えをする人が多いようです。
<流行遅れのスーツは発想も古く見えてしまいがち。思い切って買い替えを>
ファッションに流行りすたりはつきもの。カジュアルほど目まぐるしくはないものの、スーツも無縁ではありません。かつては大きめで肩パッド入り、ここしばらくは細身ジャストフィットが主流な傾向が続いていますが、最近のファッションシーンでは余裕を持ったクラシックスタイルが注目を集めています。
あまりに流行遅れのスーツは、能力も現在のビジネス環境にマッチしていない印象を持たれかねません。
ただ、幸いスーツの流行サイクルは比較的長く緩やかで、1~2年で変化するものではありません。長く着ることを考えれば、あまり極端にモードなスタイリングは避けたほうが無難でしょう。色、形ともベーシックなものを心がけてください。
<ビジネスマンの宿命、体型の変化も>
飲酒や不規則な食生活で、体つきが変わるのは良くあること。少々の幅出しで対応は可能ですが、大きく変わるとスーツを買い替えることになります。
素材や型もスーツの耐久性に影響する
ウールが持つ風合いはビジネススーツに最適。保温性や通気性、復元力に富んでいます。ただ強度は生地によって差があり、高級素材として知られるスーパー100などは繊維が細く、裂け目が出やすいというデメリットがあります。
扱いやすさと丈夫さを優先するなら、ポリエステル混紡がベター。使用されている率によって異なりますが、数パーセントであればウールの高級感を損ねることは少ないでしょう。逆に混紡の割合が多い場合、摩擦を重ねるとテカリが出る恐れがあります。
ある程度の数をそろえて、ローテーションしながら着るようにしましょう。
スーツの寿命を延ばすのは毎日のケア
<スーツにもお休みを、複数着の着回しが鉄則>
少々耐久性があってもスーツは生き物。酷使はその風合いや機能性を損ねます。1日着たスーツはなるべく2~3日休ませ、回復させるようにしましょう。こもった汗が抜け、形状が元に戻ります。毎日着ることを前提に、ワンシーズンで4~5着はそろえておきたいところ。
<アイロンはスチームのみにする>
シワを伸ばすために、アイロンやズボンプレスなどを使うと、生地を圧縮して痛みやテカリの原因にとなります。普段のお手入れではスチームをあてて、生地の毛を起こしてシワを解消しましょう。
<クリーニングは、1シーズン1回程度>
クリーニングは石油系の溶剤をし過ぎると、羊毛は油分が失われ、生地が傷みます。はりが無くなり、シワなどの原因にも。季節の終わりに一度出す程度でもいいですが、汗を掻く夏は。複数のスーツを着回しつつ、汚れがたまったと感じたらクリーニングへ出すようにしましょう。
<ポケットに入れた持ち物が型崩れを起こす>
ポケットに物を入れると重さで生地が引っ張られ、型崩れの原因になります。表のポケットは飾りと割り切り、胸の内ポケットも入れるものは最低限に。脱いだら入れたものを必ず出すようにしましょう。
<1日着たスーツはブラッシングと陰干しを>
特に汚れているように見えなくても、1日着たら生地には汚れがたまります。天然毛のブラシでホコリやチリを掻き出すことで、生地が息を吹き返し、本来の風合いを取り戻します。またすぐにクローゼットにしまうのではなく、半日から1日ほど陰干しをすると湿気が取れ、カビや臭いの防止になります。この際、ジャケットとパンツを別々にすると効果的。
<スペースに余裕を持った保管を心がける>
クローゼットでの詰めすぎは型崩れと湿気がこもる原因なので、なるべくスーツ同士が接触しないよう、隙間をつくるようにするとベストです。またクリーニングから戻ってきたら、ビニールを外すことも忘れずに。
まとめ
スーツは生き物。流行や体型の変化はやむを得ないとしても、スーツ自体、大切に扱えばその寿命は確実に伸びます。いいものを長く――そのスタンスは必ずビジネスマンの身だしなみにとってプラスとなります。
①ワンシーズンでスーツは複数着用意して着回す
②型崩れ、テカリ、肘や膝のヌケは替え時のサイン
③ブラッシングや陰干しなどのデイリーケアが寿命を延ばす
Photograph:Tomoka Tanaka(kiitos)
Styling:Yukihiro Yoshida
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)