旅と暮らし

北欧の“鉄旅”が楽しすぎる!
第2回:デンマークからノルウェーへ、24時間の海陸移動に興奮!

2019.08.14

大石智子 大石智子

北欧の“鉄旅”が楽しすぎる!<br> 第2回:デンマークからノルウェーへ、24時間の海陸移動に興奮!

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初めてのデンマーク国有鉄道(DSB)でフェリーターミナルを目指す

コペンハーゲンでさんざん食べた2泊3日のあと、いよいよ鉄道旅がスタートだ。最初の路線はコペンハーゲンからヒアツハルスまでの480km。乗り換え2回、6時間22分の移動である。

12:00 コペンハーゲン→オールボー(LYN1047)
17:12 オールボー→イエリング(R75)
18:00 イエリング→ヒアツハルス(R76)

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    1911年に建てられた現在のコペンハーゲン中央駅には、計12線が入る。
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    カフェなどの小さな店舗がいくつか入るコンコース。

まずはじめに、ヨーロッパの鉄道旅の醍醐味のひとつは、趣ある駅舎に浸ることだ。コペンハーゲン中央駅はレンガと同系色の鉄骨からなる築100年以上の建築。ここでコーヒー休憩をするもよし、プラットホームの上から写真を撮るのも楽しい。

また、駅から徒歩1分にある「ニムホテル」で朝食にパンを食べるのもおすすめだ。デンマークといえばデニッシュ(=Danish 英語でデンマークの〜という意味)。去り際の食事にはピッタリだろう。

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「ニムホテル」のデニッシュ。ホテルはチボリ公園に面していて内装もおしゃれなので、次回は泊まりたい。

コペンハーゲンから乗った特急ICを含め、デンマーク国鉄の中距離路線はディーゼルカーとなっている。ガタンゴトンと懐かしい音がして、エンジン音が好きな人にはたまらない響きもある。そんな音に旅情を感じているうちに、列車はどんどん北西へと向かう。

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抜け感のいい景色が延々と続く。

海を渡り畑のど真ん中を走る眺めはとても牧歌的。それにしても、列車はシートベルトが不必要な乗り物ということにいつも感心してしまう。速いのに安全が確保されているのがすごい。

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    北欧4カ国乗り放題の1カ月有効6日間1等パス(€347)で乗車。途中、車掌さんがチェックに来る。
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    車内には謎のイラストがバリエーション豊富に描かれていた。

デンマーク国鉄で引かれたのは、このタイヤチューブのような顔! 連結したときにゴムが幌となって貫通路ができるという。機能重視で、本来は見せちゃいけないような部分が顔になっているところにそそられる。

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    ちょっとアレな顔で突進する姿が愛らしい。
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    イエリングからはクールなイケメンに。

そもそもデンマークは高い建物が少ない国だが、北上するごとにどんどん空が広くなっていく。青い列車でヒアツハルスに到着すると、そこは何もなさそうな静かな街。地の果て感があった。さらに車で10分のところにフェリーターミナルがあり、次は海路でノルウェーのベルゲンへと向かう。

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フェリーターミナルに向かうバス乗り場前にあった人魚の銅像。

巨大フェリーに乗って、ノルウェーのベルゲンまで海の旅

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フィヨルドラインのフェリー。窓が付いている部分が操舵室。

フェリーターミナルから乗り込むのは、ノルウェーに本拠地がある「フィヨルドライン」が運行する船だ。ヒアツハルスとノルウェーのベルゲンを結ぶのは同社のみ。楽しみなのが、あの複雑に入り組んだフィヨルドの間を進んでいく航路だということ!

ヒアツハルスからベルゲンまでの航路は約600km。夜8時に乗船し、翌日12時30分に着くという16時間30分の船旅だ。フェリー乗り場でフィヨルドラインを待っていると、思いのほか巨大な船が入港してきた。

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ノルウェー国旗の柄となっている階段。

全長170m、3万1678トン、クルー含め1700人のキャパシティを誇る巨大フェリーは、見た目からしてノルウェーだった。赤、白、ネイビーの3色からなり、ノルウェー国旗と同じ配色なのだ。さらには階段も同じ配色なので、出航前からノルウェー気分が高まってくる。

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    船旅心をくすぐる、硬派なデザインの廊下。
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    2ベッド付きのスタンダードルーム。右のドアの中がシャワーとトイレ。

そして、船に乗ったらすぐに自分の客室にチェックイン。この船には370の客室があり、私が泊まったのは、2ベッド付きのスタンダード。窓がある部屋ではいちばん手ごろで1室€161+乗船料1人€30。ユーレイルパスを持っていれば30%の割引となる。

もしもお金に余裕があれば、1部屋€420のスイート(約24㎡)がおすすめだ。大きな裁ち落としの窓が3面あり、眼下は海をかき分けているような迫力満点の眺め。また、16あるカテゴリーにはバリアフリー仕様の客室もいくつかあり、実際に車椅子利用者を船内で多く見かけた。

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ペットとの船旅もOK!

フィヨルドを進む船は、絶景を眺めるホテルだった

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デッキから見た日暮れ後の空。

宿泊したスタンダードルームは8.5㎡。数字的には狭いけれど、窮屈に感じることはなかった。丸い窓から常に大海原と空が見えて、解放感があったからだったと思う。とにかく空が広いので、夕日と朝日の前後の時間が本当にきれい!

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フィヨルドラインの船旅では早起きしたほうが風景のバリエーションが増える。

印象深かったのが、途中に寄港したスタバンゲルでの光景だ。夜明け前の薄青い空に小さな工場のような明かりが浮かび水面にも反射。人が働く街に着いたのだと実感した。

夜明けとともに船は海岸沿いの小さな街を横目に進んでいき、朝日の昇ったころに搾りたてのオレンジジュースを飲んだ。天気もよくなりそうだし、オレンジのキュッとした酸味が寝起きにおいしい。ささやかながらぜいたくな瞬間だった。

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    港町に世界を旅するエネルギー供給船が泊まっていた。
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    岬の先っぽに家が立っている風景も多く目にした。

船が進むごとにさまざまな暮らしを垣間見られるのもフィヨルドクルーズの魅力だ。というのも、複雑に入り組んだフィヨルドでは湾が細長いため、船と沿岸部の距離がとても近い。風力発電の風車が並ぶ街、運搬船が泊まる港、別荘らしき小ぎれいな家の多いエリアなど、北欧の地のゆるやかな生活を想像してしまう。

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手前が船長のダン・カールさん。

ちなみに船長のダン・カールさんはフィヨルドの中にある小さな島の出身。子どものころから船が行き交うのを見て育ち、憧れもあって船長になったとのこと。生まれ育った島の近くを巨大フェリーで通り過ぎるそうだ。

朝食のあと、デッキに出てほかの旅行者とおしゃべりをしたり、写真を撮っているうちに、ベルゲンの街が見えてきた。Wi-Fiが遅いのが不便だろうと思っていたら、逆にそれがデジタルデトックスとなってリラックスできた。ネットの代わりに変わりゆく景色をぼうっと眺める時間が最高なのだ。

実はコペンハーゲンからベルゲンまでは飛行機もあり1時間20分で着くのだけれど、鉄道と船では23時間もかかる。しかし、移動すること自体がアクティビティとなった時間は、便利さに代わる忘れられない体験となった。

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    フェリー内にはラウンジからレストラン、バー、展望デッキ、キッズスペースまであり充実。
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    ディナービュッフェでは北欧らしい魚介料理が並んでいた。

立ち寄った世界遺産の街は、あの映画の舞台になった場所

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世界遺産に登録されている倉庫群「ブリッゲン」。

到着したノルウェー南西部の街ベルゲンは、フィヨルドを巡る鉄道旅の玄関口。中世に栄えたこの街は、『アナと雪の女王』の舞台としても知られている。山と湾の間に三角屋根のカラフルでかわいい家が連なる景色は、まさに映画の世界のよう。冬の雪景色も絶対にきれいなはず!

そんな風景の中心である「ブリッゲン」は、世界遺産にも登録されている。旧市街の倉庫群であった木造建築で、昔は魚や穀物が入れられていたのだとか。ブリッゲンとはノルウェー語で橋を意味し、もとはドイツ人居住地区だったため、“(ドイツ人の)橋”という名がつけられた。

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    この街の花屋がきっかけで黄色いバラに目覚める。
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    ノルウェーではキャビアはもちろん、魚卵の種類が豊富で安い!

ベルゲンには3時間しかいなかったものの、街の名所を歩くには十分だった。世界遺産を見学し、公園や地元の花屋を見て、市場でシーフードを堪能。そして、ベルゲン駅からフロムを目指す。

ちなみに別方向にはSNSで話題の断崖絶壁「トロルの舌」もある(Skjeggedalまでバスか車で行き登山往復10時間)。#trolltungaを検索すると約15万件もヒットして絶景のオンパレード。ここもベルゲンが出発地になるので、予定に組み込むのもありだろう。

今回は時間と体力不足でそちらはスキップし、世界屈指の景勝ルートと言われるベルゲン急行に乗り込む(個人的には同じ列車に柴犬が乗車したことに高揚!)。今回の鉄旅のハイライトであるベルゲン〜フロムの光景に、テンション右肩上がりの時間が続くのだった。

ユーレイル・スカンジナビアパスについて 
フィヨルドライン 
取材協力:ユーレイルグループ

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  第3回:教科書で知ったあの“フィヨルド”は、想像を上回る絶景だった! はこちら>>

プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagramでも海外情報を発信中。

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