スーツ
ダブルスーツとはどんなスーツのこと?
シングルスーツとの違いからダブルスーツの着こなしポイントまで!
2022.08.15(最終更新:2024.07.01)
スーツのジャケットには「シングル」と「ダブル」があることは知っていても、その特徴の違いや使い分けについてはよく知らない、という方は多いのではないでしょうか。ダブルスーツはバブル期に流行したイメージが強く、一般的なシングルスーツに比べてあまりなじみがないかもしれませんが、近年は感度の高い人たちの間で人気が高まっています。今回はバリエーション豊富なダブルスーツの着こなしとその魅力を紹介します。
ダブルスーツとシングルスーツの違いとは
まず、ダブルスーツとシングルスーツの大きな違いは、前ボタンの配列と数です。シングルスーツはボタンが一列に配されているのに対し、ダブルスーツは配列が2列で、ボタンの数も多いのが一般的です。そのため正面から見たときの印象が異なり、ダブルスーツはより重厚でフォーマルなイメージが強くなります。
また、それぞれで歴史も異なります。シングルスーツの起源は19世紀イギリスの貴族の執務服や平服だと言われています。室内で着ることや着替える機会が多いため、ボタンの数が少なくなっていたのです。
一方、ダブルスーツは軍士官の外套や乗馬用の衣装が起源とされています。こちらも19世紀に登場したものですが、外で着ることが多く、防寒機能の役割を担っていました。今日では一般的に、ダブルスーツは格式が高く年配に好まれ、シングルスーツはカジュアルで若者に好まれるというイメージを持たれがちですが、もともとは年齢や格式を問わず着用されていました。
ダブルスーツの魅力
ダブルスーツはその重厚感からか「時代遅れ」「おじさんっぽい」「やぼったい」というイメージをもたれることがしばしば。しかし、近年は英国紳士風のクラシック回帰のトレンドの後押しもあり、ダブルスーツへの注目が集まっています。
体形をカバーできる
一列のボタンで留めるシングルスーツに対して、前身頃の部分が重なっているダブルスーツは、気になるおなかまわりを覆うことで体形をカバーすることができます。その際、柄の大きなものや膨張色を選んでしまうと、逆にかっぷくのよさが強調されてしまうので、無地や縦のラインを強調するストライプなどがおすすめです。ブラックは細見え効果がある色ですが、ダブルスーツの場合は威圧感が強くなってしまうので避けたほうが無難です。
もちろん、体格に自信のない方でもダブルスーツを着こなすことは可能です。ピーコートに似た形で、シングルスーツよりも面積が多いために安定感が増し、体を大きくたくましく見せる効果があるからです。
また、体形を問わずサイズを選ぶときには、ウエストに絞りが入り体にフィットしたものを選ぶのがトレンドです。特にウエストまわりにゆとりのあるサイズを選んでしまうと、バブル期に流行したルーズなファッションになってしまうので注意しましょう。また、肩パットを入れてしまうと一気に時代遅れなスタイルになってしまうので、あくまでスマートに着こなすのが現在のトレンドだということはお忘れなく。
ワンランク上の風格を演出できる
前述のとおりダブルスーツは軍服が由来であるため、指揮官やチームリーダーなど人の上に立つポジションを担う方にふさわしいスーツでもあります。シングルスーツをさらりと着るよりも落ち着きのあるダンディーなオーラが増すため、フォーマルなシーンでは主役級の存在感を示すこともできるのです。本来はダブルスーツとシングルスーツに格式の違いは存在しなかったものの、しっかりとした作りと見た目から、のちになってからダブルスーツに格式高いイメージがついたようです。
多くの人がイメージする格式高い雰囲気を活用して、ダブルスーツを着ることでセルフイメージをプロデュースしてみてもいいかもしれません。いつもはシングルスーツ派という方でも、ここぞというときにダブルスーツで臨むことで、周囲に大人の余裕を感じさせたり自身も自信のある振る舞いができたりすることでしょう。
華やかな場所や特別なシーンでも活躍
シンプルなシングルスーツでは出せない個性や遊び心を表現できるのは、ダブルスーツならでは。特に最近トレンドのスマートなダブルスーツは、パーティーやデートなど華やかなシーンでよりいっそう魅力が発揮されます。ビジネスを離れたパーティーであれば、落ち着きのある無地系でシックにまとめるのではなく、グレンチェック柄やブラウン系などファッション性の高いデザインや色みにも思いきって挑戦することができるでしょう。
ただし、カジュアルなデートでは、相手から気合が入りすぎていると思われてしまう可能性もあるので、高級レストランでのディナーやプロポーズなど、特別感のある日に着ることをおすすめします。あなたのいつもと違う装いに、彼女も新たな魅力を発見することでしょう。
柄・色次第でビジネスシーンにもなじむ
ダブルスーツは特別なシチュエーションだけではなく、ビジネスシーンでも活用できます。かつては、ビジネスの場で若い人がダブルスーツを着ることは一般的ではありませんでしたが、近年細身でスタイリッシュなダブルスーツが流行したことで、年齢や階級を問わずビジネスにも浸透してきました。特に社内プレゼンや人前で話すときには存在感を高めてくれるアイテムであると言えるでしょう。若い社員の多い職場ではおしゃれに敏感な人も多いので気を使う必要はありませんが、年配の社員の多い職場では気をつけたほうがいいこともあるので、TPOをわきまえて使い分けるとよりスマートです。
ビジネスで着用する際は、遊び心や個性を抑えて、無地のネイビーやグレー、落ち着いた色の細めのストライプなどを選ぶのが無難です。また、シルクをミックスした光沢のある生地感のものを選ぶと、さわやかで知的なイメージを演出できるのでおすすめです。
ジャケットとしておしゃれに活用
ダブルスーツにあえて色みの異なるパンツを合わせれば、かっちりとしたセットアップとはひと味違う、洗練されたジャケットスタイルとして着こなすことが可能です。業界によってはビジネスシーンでもカジュアルさが許される風潮があるので、ボトムスを替えて気負わずラフに着こなす人も増えているのです。
また、オフの日には、おしゃれなジャケットとして、ポロシャツやデニム、チノパン、スニーカーと合わせるコーディネートを楽しむことができます。せっかくダブルスーツを買ったのに着る機会があまりないという方は、思い切ってオフの日に活用すると新鮮な着こなしができるに違いありません。
結婚式などフォーマルなシーンにも活躍
ダブルスーツは結婚式などのフォーマルなシーンにも相性の良いスタイルです。一般的に、結婚式でゲストが着るスーツとしては略礼装であるブラックスーツがポピュラーです。しかし、ダブルスーツの落ち着いたエレガントな雰囲気もフォーマルシーンになじんでくれます。
一昔前までは結婚式で年代の上の人が着用するイメージが強かったダブルスーツですが、最近はモダンかつスタイリッシュなデザインのものも増えているため、若い世代でも無理なく着こなすことができるでしょう。
ダブルスーツの種類
一定以上の世代には「ダブルボタンは全部留めないとだらしがない」と思われていますが、最近トレンドのタイトなダブルスーツは、あえて留めるボタンと留めないボタンでバランスを取るのがスマートとされています。ここではボタンの留め方についてチェックしていきます。
TPOに合わせた全部留めスタイル
シングルスーツはいちばん下のボタンは飾りボタンなのではずすのがマナーとされていますが、ダブルスーツは基本的にはいちばん下のボタンまですべて留めるのが本来マナーとされてきました。確かにダブルスーツでボタンを開けて座すと、前身頃の部分が下がってしまいだらしなく見えてしまうことがあるので、ビジネスや年配の人がいる場ではすべてのボタンを留めておくのが無難かもしれません。
4つボタン
ダブルスーツのボタンは6つのものが主流ですが、4つボタンものもあります。その場合は右側2つは飾りボタンなので、左側の上のボタンだけを留めると着慣れた感じになります。右前の内側のボタンは、前身頃がずれないためのボタンなので留めておくのがいいでしょう。
6つボタン
6つボタンにおいても、1つ掛けと2つ掛けがの2種類があります。1つ掛けではウエストのラインが強調されてシャープに引き締まった印象になるため、スタイリッシュに着こなしたい場合におすすめのスタイルです。ただし、ややカジュアルに見えてしまうので、フォーマルな場所では注意しましょう。一方、2つ掛けは結婚式などフォーマルな場に最適です。このように礼装として着用する際は、ボタンはしっかりと留めておくのがマナーです。
ダブルスーツの着こなしのポイント
ダブルスーツの着こなしポイントやほかのアイテムとの合わせ方を押さえておくと、スーツへの理解が深まりセンスのよいコーディネートを楽しむことができます。スーツに「着せられている感」をなくして「こなれ感」を目指しましょう。
着丈は短めがトレンド
かつて流行したダブルスーツの着丈は、やや長めでダボっとしたシルエットでしたが、昨今は短めの傾向があります。着丈が長すぎると時代遅れに見えてしまうだけではなく、「着せられている感」が出てしまうので、トレンドに合わせて短め丈にアップデートさせましょう。
ただし、ヒップのいちばん高い位置(ヒップトップ)よりも短くなってしまうと、カジュアル感が強すぎたり、ヒップが完全に見えてしまうことで上品さが欠けたりするので注意が必要です。ヒップトップのやや下あたりであれば、トレンド感も損なわれず大人の品格も残せるので、ベストな着丈といえそうです。着丈は少しの差で印象が大きく違って見えてしまうので、選ぶときは特に慎重になりたいポイントです。
ネクタイでバランスを取る
シングルスーツに比べてダブルスーツは、Vゾーンの面積が狭いのが特徴です。そのため、ネクタイ選びがキーポイントです。ネクタイの存在感が大きすぎる個性の強いネクタイを選ぶと、ダブルスーツの落ち着いた印象が崩れてしまう可能性があるので要注意。特にダブルスーツの初心者は、バランス感を重視してスーツと同じ色みのネクタイを選ぶのがおすすめです。
着こなしに慣れてきたら、カラフルなネクタイにも挑戦してみましょう。Vゾーンの圧迫感が軽減されて、差し色として明るく見せる効果を発揮します。シーンに合わせて使い分けられるようになればスマートなコーディネートが楽しめます。
ボトムスのタックや裾の仕立て、幅感で印象がガラリと変わる
ダブルスーツに合わせるボトムスは、すっきりとしたシルエットのノータックやワンタックがおすすめです。タックとはパンツの前身頃にあるヒダのことで、タックが入るとウエストまわりがもたついて、シルエットが崩れてしまう恐れがあるからです。ノータックだとややカジュアルな印象になりますが、その反面、若々しさを感じさせることができます。
あえてトラディショナルな重厚感のあるスタイルで統一感を出したい場合は、ゆとりのあるツータックを合わせると効果的。その際はダボっとしすぎないように意識するのがポイントです。また、大人の貫禄を出したい場合は、股上が深めのパンツがおすすめです。
どのようなパンツを選ぶ場合も、裾をダブルの折り返しで仕立てることで上半身の重厚さとバランスを取ることができます。シングルの裾と比べて足元に適度な存在感が出るので、ダブルのスーツにぴったりです。
また、パンツ全体の幅感を考えることも重要です。裾幅が太めのパンツを選ぶとゆったりとしたシルエットになり、余裕のある大人な男性像が想起されます。その場合、裾丈も長めに仕立てることがポイント。幅が太いのに裾丈が短いとバランスが悪く、スマートにまとまりません。反対に、幅が細めのパンツを選んでスマートなシルエットに仕上げたい場合、裾丈は短めにするとよいでしょう。
シャツでこだわりをアピール
シャツを選ぶ際は、袖と襟の形にも注目しましょう。ジャケットの袖口からシャツの袖口がちらりと見えたとき、さりげないこだわりが感じられるとおしゃれな人からも一目を置かれるはずです。たとえば袖口を折り返して二重にしているダブルカフスは、カフスボタンを留めることを前提としたデザインで、よりフォーマルな印象を与えることができます。
また、カフスの両端の角を落とした形の角落ちカフスは、シャープかつ個性的なデザインなので、ファッショナブルに着こなしたいときにぴったりです。また、襟の形はラウンドカラーやクレリックなどのデザイン性の高いものを選ぶと、よりいっそうおしゃれな印象を残すことができます。
ベストもそろえれば3ピーススタイルが完成
近年のダブルスーツはスマートで洗練された着こなしが主流なので、ジャケットとパンツにベストを合わせた3ピースをそろえる人が増えています。ダンディーな英国紳士のような装いに仕上がるため、男性の魅力が引き立つばかりでなく、防寒にも役に立ちます。ベストを着用するときは、ジャケットの前のボタンは開けたままでも問題ありませんが、ベストのボタンは、いちばん下のボタン以外はすべて留めておくのが基本ルールです。
ボウタイ(ちょうネクタイ)にチャレンジ
ベーシックな着こなしであれば通常のネクタイがベストスタイルですが、お祝いごとなどで特別感を演出したいときは、普段なかなか着用する機会がないボウタイに挑戦してみてはいかがでしょうか。首もとにかわいらしさが加わることでダブルスーツの堅いイメージが緩和され、人と差をつけることができます。
しかし、ボウタイはちょう結びで締めるものですが、結ぶのはかなり難しい。結び目が雑になってしまうとルーズな印象でイメージダウンしてしまうので、自信のない方はちょう結びが最初から完成されていて留めるだけでよいピアネスタイがおすすめです。気軽にイメージチェンジができるのがメリットと言えるでしょう。
色みについては初心者であればどんなスーツやシャツにも合うブラックが採り入れやすいかと思いますが、アクセントとしてストライプや柄ものを持ってくるとおしゃれ度がさらにアップします。ハイセンスな人の集まる場所では、少し背伸びしてファッションを楽しんでみてもいいかもしれません。
ポケットチーフでアクセントをつける
フォーマルシーンでよく使われるポケットチーフは、ハードルが高いと思われがちですが、胸もとに挿すだけでおしゃれ上級者に見える優れものです。ビジネスでも華がでるのでぜひ試してみましょう。
やりすぎ感が不安な方は、ネクタイと同じ色のポケットチーフを使うと統一感が出ます。ポケットチーフの折り方にはいろいろな形がありますが、どんなシーンにも合うのはTVホールド呼ばれる真っすぐに折るスタイルです。シンプルながらもワンポイントのアクセントになるのがうれしいアイテムといえるでしょう。
お手本コーディネイトをチェック!
では、具体的にどう着こなすのがよいのか。実際のコーディネイトサンプルを見ながら。
<①ストライプ&ブルートーンでしなやかに>
ダブルスーツのなかでは主流の6つボタン二つ掛け、そしてカラーも定番のネイビーをチョイス。ピンストライプが縦のラインを強調し、シルエットを引き締めています。そこに同系色のブルーシャツを取り入れ、清涼感をアピール。クラシックに傾倒しがちなダブルスーツですが、フレッシュなカラーリングでバランスをとることでビギナーにも真似しやすいコーディネイトになりました。スーツと同じく寒色のタイとチーフを選び、主張しすぎない遊び心も添えています。
<②グレーのダブルスーツを襟もとで品良く>
こちらはよりクラシカルなグレーのダブルスーツを、シンプルにこなしています。スーツのチェック柄を構成する赤をタイ&チーフで拾い、落ち着きある風格を保ちながらエネルギッシュな面持ちに。色数を抑えることで嫌味にならず、全体の統一感もアップしています。さらに、左右の襟に紐がついたタブカラーのシャツを選び、タイを浮かせてVゾーンを立体的に見せているのもポイント。こちらもクラシカルな意匠ですが、ダブルスーツの特徴を踏まえた粋な見せ方と言えるでしょう。
<③ジャケパンこそダブルで個性を>
ここまでは堅いシーンでのコーディネイトを探ってきましたが、ジャケパンが許されるような職場や場所であれば、ダブルスーツの持つ個性をさらに享受できます。例えば金ボタンのネイビージャケットにチルデンニットを合わせ、アイビー的なテイストに。タイも遊びのある柄ものを選び、カジュアルな雰囲気をより強く打ち出しています。
まとめ
ダブルのスーツはダボっとしていて時代遅れと思われていたのはもう過去の話。むしろ流行に敏感なおしゃれな人たちは、細身のものを選んでスマートに着こなすことでダブルスーツを楽しんでいます。毎日着るのは大変でも、ビジネスやフォーマルでいつもと少し違う特別感を出したいときに重宝するので、自分にぴったりの一着を入手することをおすすめします。着こなしに慣れてくると、合わせるアイテムにこだわるのがさらに楽しくなってきて、ワンランク上のスーツライフを送ることができるようになるでしょう。