スーツ
スーツに合う腕時計とは?
選び方や合わせ方、マナーを解説
2020.12.17
腕時計にはさまざまなタイプのものがあります。ビジネスシーンで身に着けるには、どのような腕時計がふさわしいのでしょうか。この記事では、スーツに合う腕時計の選び方やマナーについて解説します。
そもそも腕時計は必要か?
これまでは、スーツを着用するビジネスマンなら、腕時計も身に着けておくのが当然のこととされてきました。しかし、近年ではスマホが普及しており、スマホは今やビジネスに欠かせないアイテムとなっています。スマホはボタンを押せば時間の確認ができるため、わざわざ腕時計を身に着ける必要はないのではないかと考える人も少なくありません。しかし、営業職や接客業など、お客様に直接対応する職種で働く場合、腕時計はビジネスマナーとして必要です。
スマホでも時間は確認できるのに、なぜ腕時計が必要なのかといえば、お客様と商談をしているときにスマホを触ることはお客様に対して失礼になり、マナー違反だからです。場合によっては、お客様に不快感を与えてしまい、商談が不成立になる可能性があります。腕時計ならスーツを着用していてもスマートに時間を確認することが可能です。また、若い世代はスマホに抵抗がなくても、目上の人などはスマホを連絡手段としてとらえている場合も少なくありません。人によっては、相手の服装や持ち物などから相手の人柄を判断する場合もあるでしょう。腕時計を身に着けていることで、持ち物に気配りができて信頼できる人だと判断してもらえる可能性が高まります。
また、会社によっては、社員の服装や持ち物に厳しく、腕時計をしないことが認められない場合もあるのです。社員の服装は会社のイメージを左右するため、自分がよくても会社からはよく思われない場合があることを知っておきましょう。
スーツに合う腕時計の条件
世の中で販売されている多くの腕時計の中からスーツに合う一本を探すなら、どのようなものを選べばよいのでしょうか。ここからは、スーツに合う腕時計の条件を紹介していきます。
デジタルよりアナログ
スーツに合わせる腕時計を選ぶなら、デジタルではなくアナログの時計がふさわしいです。中でも、時針、分針、秒針の3本針を備えた一般的なタイプのものは、さまざまな腕時計のブランドを代表するデザインとしての地位も確立しています。3本針の腕時計は時計の元祖ともいえるもので、ビジネス用の腕時計として王道です。3本針の腕時計は、デザインがシンプルであるため、シーンを選ばずに使うことができ、ビジネスに限らずフォーマルの場に着けていくこともできます。
また、職種によっては、仕事上でストップウォッチが必要となる場合があるでしょう。ストップウォッチ機能のついたクロノグラフを選ぶ場合でも、デジタルではなくアナログのほうがビジネス向きです。デジタルの時計はカジュアルなイメージがあるため、ビジネスには不向きだとする考え方があります。実際、デジタル時計にはストップウォッチやアラーム機能など、一般的なビジネスシーンにはあまり必要のない機能がついていることも少なくありません。ビジネス用の時計として考えるなら、できるだけシンプルなもののほうが好感を持たれます。
見た目が派手でないもの
腕時計をファッションアイテムの一つとする考え方があるのは事実です。しかし、ビジネスシーンにおいて、あまりにファッション性が強すぎる時計を身に着けるのはふさわしいとはいえません。
たとえば、ダイヤなどの宝石が使われているものや色目が派手なもの、奇抜なデザインの腕時計は、プライベートで出かけるときなどに身に着けるには問題ありませんが、ビジネスシーンでは浮いてしまう可能性があります。宝石は、カレンダーや時刻設定をするときに使うリューズや、文字盤に時刻を表すために配置されているインデックスなどに控えめについているものなら許容範囲といえるでしょう。ビジネスシーンで身に着ける場合、文字盤はホワイト、シルバー、黒やダークブルーなどの落ち着いた色合いのもの、ケース素材はステンレススチールかチタンを選ぶのが無難です。
リッチで重厚な雰囲気を持つ金無垢の腕時計もありますが、50代以降の重役クラスの人が身に着けてこそ、貫禄がありステータスにもなります。あまり若い人がこうしたものを身に着けていると、身の丈に合っていない感じがするばかりでなく、嫌味に取られてしまうこともあるため、注意が必要です。
ケースの大きさが控えめなメタルブレスレット
腕時計は、本来体格や体型に合わせて選ぶといいとされています。たとえ、高品質のものであったとしても、時計の大きさと体格が不釣り合いだと見た目の印象もよくないです。ビジネスシーンで身に着ける腕時計は、あまり主張しすぎないものがいいといわれています。大ぶりのものを身に着けてしまうと、袖口で腕時計ばかりが目立ってしまい、印象がよくありません。
直径は40mm以下で薄型のものなら、シャツの袖口にスマートに収まり、見た目の印象もスマートです。腕時計のデザインも時代によって流行があり、長らくの間、大ぶりで厚みのあるものがもてはやされてきました。しかし、近年ではファッションもクラシックに回帰しているのに合わせ、有名ブランドが揃って40mmより小さい時計を発表しており、主流になってきている状況です。また、ビジネスシーンで身に着けるなら、ストラップはレザーのものよりメタルベルトのほうが適しています。
レザーストラップの時計はドレスウォッチとしてフォーマルな場でも身に着けることが可能です。しかし、レザーストラップは、汗や湿度の影響を受けやすいデメリットがあります。一方、メタルブレスレットは重厚かつ大人の品格を演出でき、高級感もあるため、ビジネスシーンに着用するのにふさわしい腕時計です。
革ベルトの場合は靴の色に合わせる
革ベルトの腕時計を選ぶ場合は、革靴やかばんなど、他の革小物と同系色を選ぶと失敗がありません。手先や足先など、身体の先端部分は人の目が集まりやすい場所です。そのため、靴と腕時計のコーディネートはとても重要になってきます。靴やかばんなどとまったく違う色の革ベルトだと、腕時計だけが浮いて見えてしまう可能性がありますし、ファッションに統一感が感じられません。普段よく履く靴の色に合わせて腕時計の革ベルトの色も選びましょう。
茶色の革ベルトを選ぶ場合は、文字盤が白いものならより浮きにくくなります。ビジネスで履く靴は、茶色か黒が一般的ですが、どちらも同じくらい履く人なら、1本目の腕時計は革ベルトでなくメタルベルトを選ぶ方法もあります。メタルベルトの腕時計であれば、靴の色が何色であろうと左右されることもありませんし、重厚感と引き締まった印象があるため、スーツにもぴったりだからです。
スーツに腕時計を合わせる時のマナー
スーツを着用するシーンはビジネスだけとは限りません。冠婚葬祭や就活などでもスーツを着用しますし、それぞれの場合ごとに腕時計に関するマナーは異なります。ここからは、スーツを着用するシーン別に腕時計の合わせ方のマナーを紹介します。
結婚式に出席する場合
もともと、結婚式のようなフォーマルな場において、腕時計を身に着けることはご法度とされていました。腕時計をしていることは時間を気にしていること、と認識されていたためです。結婚式よりも披露宴において、その傾向はより強くありました。
しかし、男性は普段から腕時計をしている人が多いため、結婚式にふさわしいデザインの腕時計ならば、身に着けていても問題視されないことがほとんどです。ただし、ホテルや格式の高い結婚式場で行われる結婚式の場合や年配者が多く参列する場合、着物で出席する場合は腕時計を身に着けないほうが無難です。結婚式に身に着けていく腕時計としてふさわしいのは、シンプルな薄型の二針タイプになります。カジュアルなスポーツウォッチや厚みがあるもの、色使いが派手なものは場の雰囲気に合いません。着ていくスーツの色味に合わせた落ち着いた色合いのものを選びましょう。
また、結婚式に身に着けていくアクセサリーとして、ゴールドはふさわしくありません。シルバー色のシンプルなものを選び、あまり大きい宝石のついたものは避けるのが無難です。
お通夜や告別式に参列する場合
お通夜や告別式に参列する場合、基本的にアクセサリー類を身に着けることはご法度です。しかし、時計は単なるアクセサリーというよりは時刻を知るための道具であるため、身に着けていてもマナー違反にはなりません。とはいえ、お通夜や告別式に身に着けていくのにふさわしいものとそうでないものがあります。
基本的に、革のベルトやステンレススチールベルトで文字盤が白またはシルバーのシンプルなデザインの腕時計を選びましょう。なるべく目立たないものがベストです。故人や遺族に配慮し、カジュアルすぎるものやデザインが奇抜なもの、ダイヤなどの宝石がついた華美なものは避けます。ゴールドが使われている時計もふさわしくありません。また、超高級ブランドの腕時計をしていくのもマナー違反になります。一目見ればどこのデザインか分かるような高級時計は外していきましょう。
お通夜や告別式は予期せぬタイミングで参列しなければならないケースもあります。そうしたときに、していくべきではないとされている腕時計しか持ち合わせがない場合は、腕時計を外していく配慮が必要です。
就活をする場合
スマホが普及した現代においても、腕時計を身に着けることはビジネスマンとしての基本的なマナーであると考える人は少なくありません。身だしなみを整えることはビジネスマンにとって不可欠です。スーツを着用したときに腕時計を身に着けることは、時間厳守の意思の表れとされており、年配の面接官の中には腕時計を着用していることを重視する人もいます。試験会場や面接の順番待ちの控室でスマホを見ていると、SNSやゲームをしていると誤解される可能性があり、好ましい姿とはいえません。
試験会場で筆記試験が行われた場合、腕時計なら時間の確認ができますが、スマホを見る行為はカンニングと間違われる可能性もあるため不可能です。スマホは使いすぎた場合や充電を怠った場合に電池切れになる可能性があります。腕時計なら電池切れになるケースは少ないため、大切な試験会場で慌てないためにも就活用に腕時計を用意しましょう。
就活用の腕時計としてふさわしいものは、黒や紺のスーツに合うデザインや色合いです。ビジネスシーンで使う時計なので、基本的にアナログで3本針のタイプかストップウォッチがついたクロノグラフを選びましょう。色は、白、黒、紺で文字表記もシンプルなものが適切です。スーツの袖にすっきりと収まる大きさのものを選びましょう。
キャラクターがデザインされたものや派手な色合いのもの、スポーツウォッチはスーツに合いません。また、ハイブランドの腕時計は学生という立場に不釣り合いなため、就活用の時計としてふさわしくないです。5000円程度の予算でも、シンプルかつ見やすい腕時計が手に入れられます。
ビジネスシーンに合わせる場合
ビジネスシーンで使う腕時計は、基本的にスーツに合わせて違和感のないものを選びましょう。奇抜な色合いやデザインのものはそぐわないです。逆に、スポーツウォッチでもシックなデザインのものならビジネスシーンで身に着けても浮きません。ビジネスシーンで使う腕時計は、ある程度の価格のものがふさわしいです。
特に、営業職に就いている場合は、あまり安すぎるものを使っていると上司から注意されてしまう可能性があります。腕時計はビジネスマンにとって欠かせないアイテムであるため、腕時計が好きで詳しい人も少なくありません。着用している腕時計をきっかけに話が弾み、上司や取引先の人と円滑にコミュニケーションができる場合もあります。ただし、ビジネス用の腕時計は、高価ならいいわけではありません。上司や取引先の目上の人よりも高級なものを身に着けることはマナー違反です。
自分の身の丈に合った価格帯のものから選びましょう。ビジネスで使う腕時計は、本来時計に求められる時間の正確性にもこだわって選ぶ必要があります。時間の精度にこだわったブランドの時計の中から選ぶのも一つの方法です。
腕時計の豆知識
ここからは、補足として腕時計に関する豆知識を紹介します。
腕時計の歴史
18世紀頃から使われていた懐中時計は、時間を確認するためにポケットから取り出し、ふたを開ける必要がありました。しかし、王侯貴族や僧侶、上流階級の人々が使うには、不便さを感じるものではありませんでした。
19世紀の初頭には、高貴な女性が身に着ける装飾品として、ブレスレットがついた時計が作られるようになりました。現存する最古の腕時計は、ナポレオンが皇妃ジョセフィーヌのために1806年にパリの時計宝飾師に作らせたものだといわれています。しかし、この時計は精度も視認性もよくなかったため、懐中時計のように普及することはありませんでした。
19世紀後半になると、武器や電話、通信技術が発達したことによって、戦争を行う際に時刻に合わせてさまざまな作戦を行う方法へと変わっていきました。戦場では、敵に隙を与えないようにして時刻を確認しながら砲撃を行う作戦が取られていましたが、時刻の確認にトレンチコートに忍ばせた懐中時計を使うには出し入れが手間でした。砲兵が懐中時計を腕に取り付けて時刻の確認をしていたアイディアをドイツ軍が採用し、時計メーカーに製品化するように打診しました。
1880年頃、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世がドイツ海軍将校用として、ジラール・ペルゴー社に2000個の腕時計を製作させたという記録が残っています。これは、懐中時計を腕に巻くための革ベルトが付けられており、初めて量産された腕時計です。時計の表面には網目状の金属製カバーが取り付けられており、腕に巻いて使えるようになったことから砲撃のタイミングが測りやすくなりました。また、懐中時計を片手で持っていたときは片手が常にふさがった状態でしたが、腕に巻き付けることで両手を自由に使えるようになったのです。
1914~1918年にかけて行われた第一次世界大戦では、モールス信号や音声信号などを用いて戦争の指揮や伝達が行われており、腕時計は欠かせない存在となりました。ハミルトンは、アメリカ軍の要請を受けて軍用腕時計を大量生産し、ブライトリングは世界初のストップウォッチ機能付きの時計を1915年に開発しています。戦争を契機に開発された腕時計は時計のデザインの基となり、第一次世界大戦後に一般の人々に対しても普及するようになりました。
1926年にスイスのフォルティス社が世界初の自動巻き腕時計を発売したことは、時計の歴史の中でも画期的な出来事です。それ以前の手巻き式は、最低でも1日に1回はゼンマイを巻く必要があったものが、腕に着けているだけで自動的にゼンマイを巻き上げてくれる方式になりました。第二次世界大戦では、水中や衝撃のある状況下でも正確に時を刻み続けることが求められ、スイスの「オリス」「ブライトニング」、イタリアの「パネライ」などによって軍用時計の開発が進みます。
1969年には、正確かつ衝撃に強い世界初のクオーツ腕時計、セイコーの「アストロン」が発売され、それまで主流だった機械式腕時計からクオーツ腕時計へと時代は変化していきました。また、クオーツ腕時計は安価であったことから、誰でも腕時計を手に入れられるようになったのです。その後、腕時計はさらに進化し、一日に一度もしくは数回電波を受信し時刻を合わせる電波時計が誕生しました。
腕時計のパーツの名称
続いては、腕時計を構成する部品の名称について解説します。
#ダイヤル
腕時計の文字盤のことです。ダイヤルのデザインや装飾によってそれぞれの時計の個性が出ます。
#インダイヤル
クロノグラフなど、現在の時刻ではない別の表示をするために設けられた小さいダイヤルのことです。
#インデックス
時計の時刻を示す部分のことです。バーといわれる棒状の飾りやアラビア数字、ダイヤなどの宝石を使って表現されます。
#カレンダー
ダイヤルに小さい窓を付けて、日付や曜日の表示を行う部分のことです。24時になると同時に日付が変わるものや、数時間かけて日付が変わっていくものがあります。
#ガラス/風防
ダイヤルを保護するために付けられているカバーのことで、サファイヤガラス、ミネラルガラス、強化プラスチックなどが用いられています。
#ケース
時計本体のことで、ムーブメントを収納する場所です。時計の中にゴミが入ったり衝撃が加わったり水が入ったりすることを防ぎます。
#ベゼル
風防の周辺に取り付けられており、ガラスを時計に固定する役割を果たします。時計のデザイン性にも関わる部分です。
#ラグ
足と呼ばれることもあり、時計にバンドを装着するための部品です。ケースと一体になっていることもあります。
#リューズ(竜頭)
ゼンマイの巻き上げやカレンダー、時刻の調整などに使う部品で、ケースの横、文字盤の3時の横の部分に取り付けられており、時計の中における重要部品の一つです。引き出し式とねじ込み式があり、ダイバーウォッチなどを除き、多くの場合は引き出し式が使われています。
#プッシュボタン
主として、クロノグラフを作動させるためのボタンのことです。
#バネ棒
ブレスレットや革ベルト、バックルの取り付けに使われる伸縮性のある棒です。それぞれの時計ごとに長さが異なります。
#エンドピース
ケースとブレスレットをつなぐ部分に取り付けられる部品で、別名フラッシュフィットといわれます。
#固定駒
ブレスレットの本体部分で、取り外すことはできません。
#足し駒
駒を増減させることにより、ブレスレットの長さを身に着ける人の腕にぴったり合ったサイズにすることができます。
#バックル
ブレスレットやベルトを腕に着けたときに留めて固定するための部品です。
#中折れ
バックルの内側の2つに折りたたまれる部分のことです。
#尾錠
革ベルトに取り付けられている、ベルトを腕に留めるための金具です。
#定革
革ベルトに取り付けられている革でできた輪のことで、位置は固定されており動きません。金具を通して留めたベルトを収めるために使われます。
#遊革
定革と同じ働きをしますが、固定されていないのでベルトの長さに合わせて位置を動かすことができます。
まとめ
スマホが普及する世の中になってきましたが、ビジネスマンにとって腕時計は欠かせないアイテムであることに変わりはありません。時刻の確認のためにスマホを確認することはスマートでないだけでなく、商談中の場合は相手に不快な思いをさせてしまったり、入社試験などではカンニングをしていると勘違いされてしまったりすることがあります。腕時計ならスマートに時間の確認が可能です。ステンレス製でスーツの袖の中にすっきり納まる小さ目のアナログ時計ならスーツに合わせても違和感がなく、ビジネスシーンにとどまらずフォーマルな場でも身に着けられます。
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