週末の過ごし方
平均年齢67歳!
石膏のプロ、発想力で美容界に革新を起こす
【センスの因数分解】
2023.06.05
「文明とは発想とものづくりから生まれる、そう思っています」。世界初となるシート状石膏パックを開発し、『SEKKO MAGIC』というスキンケアラインを誕生させた平田耕一代表は言います。
三重県四日市で石膏ボードの製造工場を経営していた平田代表は、いわば石膏のプロ。美容業界への進出を決心したのは、3年ほど前でした。早速プロジェクトチームを作りますが1948年生まれの代表は当時すでに70歳を越えており、男性4人で結成したチームの平均年齢は67歳! 美容業界の経験は皆無!
「エステなどで施術される石膏パックは大変高価であることを知りました。これをもっと安価で多くの人に届けたいと、6カ月ほどかけてシート状のマスクを試作しました。そして専門家の意見を仰いだのです」
アドバイスを求められたのは、鈴木龍介医学博士。医療機器や化粧品の開発に関わってきた専門家は、プロトタイプを見て瞬時に「これは販売できません」とダメ出しをしたそうです。
「水を加えると固まる性質がある石膏マスクですが、当初の設計では固まったときに顔の筋肉の凹凸に沿いません。これでは美容商品としてのクオリティーが足りないとお伝えしました」
そんなことでチームはひるみません。ここから試行錯誤が始まります。マスクを顔面に沿わせられるような立体にするには? 粉状の石膏が顔のパーツごとに均一になるためには?と試作を繰り返します。サンプルでトライ&エラーを繰り返すのが改良に最も近いのは確かですが、経費がかかりすぎてしまいます。しかし石膏ボードという“ものづくり”のプロであったチームにとって、型作りは製造の基本。20もの型を作り、現在の形にたどり着きました。これは業界からすると「異例中の異例」と鈴木博士は言います。
「美容業界では製造を外注で行っているので、型ひとつ変えるだけでも大変経費がかかりますから、SEKKO MAGICのようなものづくりは不可能。業界のルールがないこと、高い技術力も持っていることが、結果的に経験値を上げるものづくりになっています」
さらに平田代表は、パックに浸透させる水に、美肌の湯として全国的に評価が高い地元の榊原温泉水を採用。美容とより高いリラックス効果をねらうと同時に、地域振興の役割も担うアイデアとなっているのです。
いかに仮想の世界が発展していこうとも、発想力豊かにものをつくることは革新の第一歩。人生100年と言われますが、年齢をいとわない挑戦は、それを体現しているのです。