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『デッド・トゥ・ミー ~さよならの裏に~』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #81

2024.09.19

『デッド・トゥ・ミー ~さよならの裏に~』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #81

人と人は、“秘密の共有”をすることによって、急速に信頼関係が深まるということがある。周囲の人間に秘密を隠し通すために、互いに協力しなければならないため、必然的に信頼関係を築かなければならない。そして、秘密を共有してくれる特別な存在であることは、誰にとってもうれしいものだ。

Netflixにて配信中の『デッド・トゥ・ミー』は、悲しみに打ちひしがれていた2人の女性が出会い、やがてお互いがとんでもない秘密を抱えたことにより、2人の人生に深く関わってゆく物語だ。

よくあるブラックユーモア満載のコメディーかと思いきや、ベテラン俳優によるクセになる秀逸な会話劇、度肝を抜かれるストーリー展開、サスペンスやミステリーの要素まで取り入れた、涙と笑いが交差したトラジックコメディ(悲喜劇)だ。

まさかこんなに泣かされることになるなんて、誰が予想しただろうか?

ジェンは、夫を交通事故で亡くしたばかりだった。まだ甘えたがりな年頃の息子と、思春期真っただ中の息子の世話をしながら、不動産業界で働いている。夫をひき逃げした犯人はまだ捕まっておらず、怒りの矛先をどこに向けていいかわからないジェンは、「フレンズ・オブ・ヘブン」という遺族セラピーを受けることにした。

集会の場に着くと、同じく夫を亡くしたジュディに声をかけられ、「眠れない夜には電話して」と、連絡先を渡された。会ったばかりの人に自分の弱さを見せることに抵抗を感じてはいたが、時間を持て余していたジェンは電話をしてみることに。

世代も近い2人はすぐに打ち解け合い、いつの間にか毎晩のように話す仲になった。そんなある日ジェンがサプライズでジュディの家を訪ねると、そこには亡くなったはずの夫スティーヴが……。

ジェンは喜怒哀楽が激しく、一日の大半は“怒”でできている。Fワードをこれでもかと連発しまくり、他人には嫌味や皮肉ばかり、ストレス発散方法は車での移動時に、ヘビーメタルを大音量でかけて絶叫&ヘッドバンキング、息子たちには優しいが、上の子に対しては頭ごなしに否定しがちである。警察は当てにならないとやみくもに捜査活動をしたり、こんなことする奴はろくな人間じゃないと否定したり、元から固定観念が強く、被害者意識が強い傾向があるのだろう。

しかし無理もない、夫の音楽活動を支えながら、一家の大黒柱として強くいなければと必死に頑張ってきたのだ。私が強くいなければ、終わってしまう!といつも全力でなければならなかった。

対してジュディは、ミステリアスだ。他人の優れているところを素直に褒め、弱者に寄り添ってくれる、良い人間で在りたい、人に好かれたいと強く願うせいか、依存しやすい性格でもある。マイペースではあるが、自分の意見を持つというよりは、他人の幸せを願うタイプ。

遺族セラピーで出会ったとはいえ、こんな正反対な2人がなぜ親友のようになれたのか?

それには意図的な理由があったのだ。なりたくなくとも強くならざるを得なかったジェンが、自分の意見など言えず、他人に依存しながら生きてきたジュディが、ある“悲劇”をきっかけに、皮肉にも初めてお互いに支えながら生きていると実感することとなる。

痛快なコメディー調で物語は進みながらも、身近な問題など感情移入しやすく、重いテーマでありながらも、強く生き抜くジェンとジュディに励まされる。ジェンを演じたクリスティナ・アップルゲイトは、最終シーズン撮影中に多発性硬化症を発症したのにもかかわらず、最終話まで見事に演じきった。そんな状況下だと視聴者に気づかせない彼女の素晴らしい演技力に、ただただ敬服するばかりだ。

80パーセント笑えて、20パーセント泣ける、ありとあらゆる要素が融合したヒューマンドラマ。ジェンの毒舌にはなぜか人を爽快な気分にさせてしまう効果があり、1話20分〜30分とテンポ良く観られてしまうのも、忙しい毎日を生き抜く現代人にとってはありがたい。

ありとあらゆるちょうどいいを突いた名作『デッド・トゥ・ミー 〜さよならの裏に〜』は、Netflixにてシーズン3(完結済み)まで配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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