カジュアルウェア
ブレザー人気が再燃。なかでもエルメスとブルックス ブラザーズ、
ラルフのビンテージものは争奪戦が激アツ!
ファッショントレンドスナップ206
2024.11.21
「リバイバルファッション20年説」とか「トレンドは20年周期で繰り返される」とよく言われます。
その説のとおりの現象をSNSで目の当たりにしたのが、昨今のブレザーのブレイク。レディースでは1〜2年前から人気が出ていて、その勢いはいまだに収束する兆しはありません。メンズは昨年末くらいから人気が徐々に出はじめ、今年冬から来年春がピーク!?といった感じです。
押しも押されもせぬブレザー人気ですが、改めて約20年ごとにどんなことがあったかを調べてみると、なんと60年以上も昔にさかのぼりました。
1960年前半にアイビーファッションが流行しVANのシングルブレザーがマストアイテムになったのが日本での幕開け。1964年には東京オリンピックが開催され、日本選手団の赤いブレザーが話題に。(注)デザイナーの望月靖之と大同毛織との特別チームがオーダーで製作。
1980年後半には渋カジブームが起こり、ラルフ ローレンのダブルのブレザーに人気が集中。当時はダブルのブレザーにジーンズが鉄板コーデ。
2000年代中盤に入るとファッション誌『LEON(レオン)』などの影響でイタリアブランドのちょいワル ブレザーがブレイク。メタルボタンを定番のゴールドカラーではなくシルバーカラーにするのがモテるテクニックでした。
2007年にはアメリカ人デザイナーのトム・ブラウンが手がけたブラックフリース(ブルックスブラザーズの最高級ライン)の超ショート丈でパイピングされたブレザーが話題に。モード系のジャーナリストからは高評価を得ましたが、アメトラの愛好者の間では賛否両論が。
前回のブームから約20年後の2024年は、どうなっているかを探るべく東京の浅草橋でスナップ&インタビュー。
今回のご登場のジェントルマンは、メンズウエアのオンラインショップ「MINTENS(ミンテンズ)」の山崎享成さん。取り扱い商品は、品質にこだわった語り継がれる名品を独自のセンスでチョイス&プロデュースしていて、特に大きいサイズの方向けのものが充実。
「MINTENSで検索率がとても高いのがブレザーです。お客さまの要望もあり、ポップアップストアをやると、毎回20着近くが完売しています。お客さまのファッションの傾向は、ストリート系やトラッド系、ビンテージ系などなどさまざまなジャンルの方がお越しいただいています。ブレザーの持つコーディネートの幅広さには驚かされっぱなしです。なかでもシングルのネイビーブレザーの人気は、断トツです」と山崎さんがブレザー事情を解説。
確かに私もインスタグラムを見ていると、ブレザーの着こなし方が明らかにアップグレードし、さまざまなスタイルとミックスされているのには驚かされています。
ただ私の好みからアルゴリズムが勝手にダブルのブレザーを次々にアップしてくるので、今回のブレザーのトレンドもダブルがメインかな?と思っていたら、リアルな人気商品はシングルだったのです。ダブルのブレザーはSNS映えしますが、普段着るにはかなりハードルが高いアイテム、逆にシングルのブレザーは王道感があり、コーデが簡単というのは大切なポイント。
ただ、唯一心配なことが。シングルのブレザーは学生の制服としても定着しているので、そのイメージに寄りがち。解決策を山崎さんに尋ねると……。
「これからの季節ならインナーは、タートルネックのセーターがオススメです。パンツは、スイスのビンテージ生地を使ったオリジナルですが、このような明るめのストライプのパンツを合わせるとトレンド感が増してくると思います」
こちらはMINTENSのオリジナルブレザー。生地はビンテージのウール、仕立ては芯材を最小限にしてソフトでありながら立体的なフォルムが出るように仕立てられています。腰のポケットは、アメトラの定番仕様のパッチ&フラップで胸はウェルトポケット。フラワーホール(左襟上部にあけられたボタン穴)は日本の熟練の職人が手縫いで仕上げています。ベースのデザインはアメリカですが、着心地はイタリア的で細部には日本の職人技がちりばめられているというハイブリッド。
MINTENSのオリジナルブレザーのメタルボタンには、ビンテージのメタルボタンが付いています。ゴールドカラーの一色ではなく、縁と中心の本(イラスト)部分にネイビーが使われています。
今のブレザーブームを引っ張っているブランドのひとつが、ブルックス ブラザーズ。アメリカ最古参のこのブランドには、数々のエピソードが残っています。個人的には、昔はブレザーにはウールのグレーパンツを合わせるのが基本だったのを、コットンのチノパンに変えアメリカンスタイルを完成させたストーリーが好きですね。
ブルックス ブラザーズの王道デザインは、腰ポケットがパッチ&フラップですが、こちらはブレザー初心者になじみやすいフラップのみ。
ブルックス ブラザーズの頭文字のBBが掘り込まれたメタルボタン。ルックス ブラザーズのメタルボタンには、このほかにゴールデンフリース(金羊毛)と呼ばれているリボンでつるされた子羊のイラストが刻印されたメタルボタンもあります。どちらもアメトラ愛好者の心をくすぐるデザイン。
ブレザーのルーツを調べると、シングルはボート競技やクリケット競技の選手や応援団のユニホームに由来していて、ダブルはイギリス海軍の制服が由来というのが有名。このブレザーは胸のボタンが6個で、イギリス王室などでよく着用されているクラシックなデザイン。生地はエルメスならではの最高級のウール生地が使われています。
こちらがエルメスのダブルのブレザーに付けられているメタルボタン。エルメスの創業当時は馬具を作り販売していたことをイメージさせる絵が、ブランド名の頭文字のHと一緒にデザインされています。アンティークのコイン(古銭)のような刻み彫りも魅力。この小さなパーツからヨーロッパ的なエレガンスが香り立っていますね。
問/MINTENS https://shop.mintens-tokyo.com
<ポップアップストアのお知らせ>
期間:11月21日(木)〜11月24日(日)
ショップ:AUBA JACONELLI(アウバ ジャコネッリ)
住所:東京都台東区浅草橋3-4-8 1F
https://au-ba.com
Photograph & Text:Yoichi Onishi