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『ザ・レジデンス』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #96

2025.04.24

『ザ・レジデンス』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #96

世界的大ヒットドラマ『ブリジャートン家』を生んだションダ・ライムズ率いるshondalandから、最高に笑えて、とびきりオシャレなミステリードラマが届いた。なんと舞台は、世界一有名な家ホワイトハウス

オーストラリア首相を招き、ホワイトハウスでは盛大な晩餐会が開かれていた。そこには政治関係者や著名人が集まり、カイリー・ミノーグによるショーや専属シェフの豪華な食事を楽しみながら、優雅な時間を過ごしていた。

しかし事態は一変、ホワイトハウスを管理しているチーフアッシャーのAB・ウィンターの遺体が発見された。総勢200名ほどの人々は外出を禁じられ、FBI捜査官やワシントンDC首都警察(MPD)の署長らが集まり捜査を開始。

捜査の指揮を任されたのは、数々の難事件を解決し、世界一の探偵と言われるMPDの顧問探偵コーデリア・カップ。かつてルーズベルト大統領が記録していた、ホワイトハウスで見ることができる野鳥リストを片手に現れた彼女は、周囲が静かに見守るなか、現場をくまなく調べた。

手首に切り傷があり、遺書も残されていたことから自殺であると政府関係者は言うが、コーデリアの見立ては違った。FBI捜査官のエドウィンに監視されつつ、共に聞き込み調査をすることに――。

本作はジャーナリストが、ホワイトハウスに勤めた使用人たちにインタビューしてまとめられた書『使用人たちが見たホワイトハウス~世界一有名な「家」の知られざる裏側』から着想を得ているため、ホワイトハウスの内部事情が事細かに再現されている。

ホワイトハウスには政治とは関係なく、ホワイトハウスを運営する組織があり、料理を提供するシェフや、イベントを取り仕切るソーシャルセクレタリーや、ホワイトハウスに居住している大統領の家族のお世話や来客者への配膳、庭師、配管工など、いわゆる使用人らが大勢働いている。

それゆえに登場人物がとてつもなく多く、テンポよく会話劇が繰り広げられ、作中混乱してしまいそうなものだが、ひと癖もふた癖もあるキャラクターばかりで、すっと覚えられてしまうのだから不思議だ。

探偵コーデリア・カップというキャラクターが実に魅力的で、バードウォッチングで培ったのか、非常に洞察力に優れている切れ者探偵だ。本作が素晴らしいのは、謎解きのヒントをコーデリアが引き出し、視聴者が共に推理を楽しめるという点。明らかにこれはひっかけでは?というユーモアも交え、トンデモなエピソードも引き出しつつ、だんだんと容疑者が絞られていく快感…。これだからミステリーはやめられない!

そして、頻繁には挟んでくる小ネタにも注目してほしい。晩餐会でカイリー・ミノーグのショーが行われている様子が映るが、これはそっくりさんでもなく、本物のカイリー・ミノーグだ。思わず目を疑ったが、「大統領に招かれ、急遽代理でショーを行い、一番いい部屋に泊まらせろとごねるカイリー・ミノーグ役」で出演している。

そして、「来賓として来たが、帰れないためタップダンスをして時間をつぶしているヒュー・ジャックマン」が登場するが、後ろ姿しか映らないため、こちらは本人であるが定かではない。

特にホワイトハウスの内部事情が興味深く、占星術師によって歴史的に重大なことが決められているだとか、どこの大統領の家系にもいる問題児だとか、職権を乱用している政治家など、絶妙な「ほんとうにありそうなこと」がちりばめられている。

シャーロックホームズでいうところのワトソン的な立ち位置であるFBI捜査官のエドウィンと、コーデリアの掛け合いは、いつまでも見ていられるボケとツッコミコンビ。観終わったころにはきっと、探偵コーデリア・カップの魅力にすっかりとりつかれ、シリーズ化を熱望してしまうだろう。

『ザ・レジデンス』はNetflixにて全8話配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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