スーツ
AOKI銀座本店で体験する、
イタリア生地の至宝「REDA」
2025.12.02
AOKI×REDA、極上生地を体験できる空間
銀座と京橋をつなぐ中央通り沿い、首都高が走る高架下にあるAOKI銀座本店。この秋、ライフスタイルとワークスタイルの“街の総合洋品店”としてフルリニューアルしたばかりである。コンセプトムービーが上映されるエントランスから店奥へといざなうレッドカーペット。店内はビジネスカジュアル、レディスも豊富な品ぞろえで、ビジネス4、カジュアル3、レディス3という商品構成は、AOKIが目指す次世代の店舗構成を体現したものとなっている。
店奥にあるロイヤルコーナーは、銀座本店だけのインポート素材のスーツや革小物など、素材にこだわったアイテムを取りそろえた特別な空間だ。ここではイタリアの老舗テキスタイルメーカー、REDA社との協業を深めたコレクションが展開されている。エクスクルーシヴテキスタイル「MOVIMENTO(モビメント)」は、AOKI×REDAを象徴する限定生地のコレクション。既成スーツにREDA最高峰のスーパー150'sウール「MAIOR(マイヨール)」を展開するなど、同社も積極的な姿勢をみせている。
この日、REDA社CEO、エルコレ・ボット・ポアラ氏が視察に来日したことは、両社の関係が密であることを物語っている。
エルコレ氏はこう語る。
「銀座本店のリニューアルは、モダンなデザインがとても印象的です。AOKIとはすでに30年以上のパートナーシップがあり、今回の新しいコーナーは、そうした長い信頼関係の延長線上にあるもの。来店者が温かく歓迎される空間を意識したと聞いています。お客さまがドレスクローズを通して唯一無二の体験ができることは、今の時代にとても大切なことだと思っています」
160年の歴史を更新しつづけるREDAのイノベーション
エルコレ氏は創業家系の5代目である。老舗、名門のミルが競合するイタリアで160年を誇る企業。「REDA社が独自のポジションを確立しているのは、エルコレ氏の手腕ですか?」と尋ねると、謙遜気味にこう話してくれた。
「私たちは伝統に安住せず、常にアップデートを続けていますが、それは私の代に特別なことではありません。私は技術的な進歩と共にテキスタイルに新しい価値を生み出すことで、ドレスクローズに新たな価値を生み出していきたいと思っていますが、それはREDA社にとって特別なことではないと考えています。前の世代では新しい機械を導入することで革新を起こしてきたでしょうし、そのさらに前の代も同じように何かしら進化をしてきたはずなのです」
牧場運営から紡績、仕上げ、販売までを自社で一貫管理する「シープ・トゥ・ショップ」という、REDA社の哲学を受け継ぎながら、サステナビリティにも取り組むイタリアの生地メーカー。社会的・環境的パフォーマンスの最高基準となるB Corp認証をイタリア国内の繊維メーカーとして初めて取得したことは、同社の指針を示すものだ。
「品質」「革新」「持続可能性」という3つの価値をベースに、クラシックなテキスタイルに機能性を融合させた「REDA ACTIVE」や「REDA FLEXO」などのコレクションを次々に発表してきた先進的な姿勢は、たしかにエルコレ氏の代の功績だろう。しかし彼にとって「REDA社の革新」とは、自身の特別な手腕ではなく歴史のなかの一章にすぎないという。
進化するドレスクローズのグローバル市場に対応
世界的なカジュアル化が進むなかで、日本市場をどう見ているのかを尋ねると、エルコレ氏は少し笑みを浮かべた。
「多くの国では女性がファッションの主役ですが、日本の男性はスーツやドレスを深く理解していますね。日本とイタリアは、世界でも数少ない男性が装う文化を持つ国だと思います。だからこそ、カジュアルでさえも洗練されたスタイルになっています。REDAはその流れを後追いするのではなく、リードする存在でありたいと考えています」
そう話すエルコレ氏は、足元にスニーカーを合わせてさっそうとクラシックなスーツを着こなしている。その現代的で自然な着こなしは、REDA社が新しい時代のドレスクローズをけん引していることを示している。それは、ここAOKI銀座本店が、スーツとカジュアル、レディスまで全方位のスタイルを取りそろえていることにも通じるかのようだ。
「AOKIは日本のビジネススタイルを理解していて、同時にモダンな提案を行うことができるブランドです。それは私たちの理念と共鳴するもの。私たちはAOKIと共に、これからも日本のお客さまに、上質でありながらデイリーに寄り添える服を届けたいと思っています」
そう話すエルコレ氏は、伝統ある企業の継承者だが、その言動には茶目っ気もあることで知られる。「私は、そんなに特別な人間じゃないですよ」と笑いながらも、その自由で前向きで遊び心にあふれるエルコレ氏の発想こそが、REDA社の革新の源であることは疑いないと確信した。
Photograph:Takashi Sakamoto
Text:Yasuyuki Ikeda