週末の過ごし方

数寄屋の名匠が選んだ北欧家具。

2026.02.18

数寄屋の名匠が選んだ北欧家具。

京都の中心街から北へ車を走らせた大徳寺エリア、禅宗の大本山が鎮座する紫野に、マニア垂涎のヴィンテージ・デンマーク家具のショールームがある。出張の合間に訪れたその空間は完全に貸し切り状態だった。「座りたい椅子があったら、おっしゃってください」という言葉に促され、まず腰掛けたのが、フィン・ユールによるラウンジチェア「No.45」。

フィン・ユールは、20世紀中期の北欧家具黄金期を代表するデンマークの家具デザイナーだ。「世界一美しいアームを持つ椅子」と評されるこの傑作は、優雅に湾曲した木製のアームと脚部が流れるようにつながっているのが特徴だ。その曲線的なフレームに包まれて座面が軽やかに浮いているように見える。座ってみるとアームが自然と腕を受け止めてくれて、木と呼吸が合ってくるような感覚を覚える。ここにあるプロダクトは「木」という生命への尊敬から生まれた卓越したクラフトマンシップの賜物なのだ。

ショールームを運営する興石(こうせき)の母体は、数寄屋大工、中村外二工務店だ。伊勢神宮の茶室、京都迎賓館、俵屋旅館や菊乃井など、錚々(そうそう)たる名所の普請を手がけてきた工務店である。1973年に建築家・吉村順三と共にロックフェラー副大統領の住宅を手がけ、家具担当のジョージ・ナカシマの仕事に触れたのが二代目・中村義明。この経験がきっかけとなり、自分たちが作る「本物の空間」に合う家具を探求し、デンマークを中心とした木製北欧家具の輸入と、オリジナルの和のあかりを製作する興石を1984年に創業した。

初代・中村外二は、建築や家具と共に生まれた空間について「つくって半分、育てて半分」と話していたという。人が何を思い、どう使い、手入れをするかで、空間は息吹いていくのだ。良い家具は持つ人にそれを問いかけてくる。その真価が発現するには、私たちが目と感性を磨くことが不可欠だ。所有には相応の決断を要する投資かもしれないが、まず良いものに触れ、体験をしてみよう。そして、気に入ったものは所有してみること。そこから数寄屋の名匠が見いだした「本物」とは何か、見えてくるはずだ。

株式会社 興石
家具部 ショールーム/ 京都オフィス
京都府京都市北区紫野西御所田町15
075-415-2818 ※予約制

「アエラスタイルマガジンVOL.59 AUTUMN / WINTER 2025」より転載

Text: Sayaka Umezawa(KAFUN INC.)

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