週末の過ごし方
グラムロックのスターが求心した太極拳の道とは
【センスの因数分解】
2026.07.09
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
1960年代のカリスマ的ロックバンド、ベルベッド・アンダーグラウンドのルー・リードと太極拳の組み合わせを、すんなり受け入れる人はいないのではないでしょうか? 実は彼は長年太極拳を探求。本書は没後10年以上を経て、「太極拳の素晴らしさを世間に知ってもらうための本を出したい」という願いが結実した一冊です。
編纂(へんさん)したのは、20年以上のパートナー。ルー・リード自身の言葉だけでなく、書籍化に向けての大学教授とのやりとりや、彼の師、レン・グゥアンイーの教えに太極拳指導者たちの言葉、公私の近しい人物の(まるで証言のような)回想によるルー・リードと太極拳の関わりなどがまとめられています。
彼の体に、太極拳は革命を起こしました。体だけではありません。内面の平安や創造性ももたらしてくれたことを、本書は伝えています。晩年はなんと週に7日太極拳と向き合い、指導もしていたというルー・リード。「身体を使って宇宙と調和することができるもの」が太極拳だという言葉は、どれほどの力と癒やしを受け取ってきたかの表れのようです。
現代の都市生活者は、利便性を求めすぎるゆえに、体を動かすことで得られる知恵といった身体性を手放すケースが多くあります。そして不調になって初めて、自身の体との対話や体の内にある奥深い世界に注目するきらいがあるのではないでしょうか。ロックレジェンドが実践した太極拳の、その向こうの大いなる可能性が伝わる一冊です。