週末の過ごし方

ディオールとミシュラン三つ星シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック。
大阪に誕生した美食の世界。

2026.07.09

ディオールとミシュラン三つ星シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック。<br>大阪に誕生した美食の世界。
アンヌ=ソフィー・ピック氏。©LAORA QUEYRAS

現在世界で最も多くのミシュランの星を獲得している女性シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック氏が手掛ける『ムッシュ ディオール 大阪』。20265月にオープンした『ハウス オブ ディオール 心斎橋』の最上階にあり、同氏による本格コース料理を堪能できる。大阪随一のファッションエリアに誕生した、美食の世界とは。来日中のアンヌ=ソフィー・ピック氏に話を伺った。

35年越しの夢がかなった国内初のレストラン

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『ムッシュ ディオール 大阪』は『ハウス オブ ディオール 心斎橋』の4階。路面に設けられた専用エントランスからエレベーターで直接アクセスできる。鮮やかなフォトアートが入り口の目印だ。©DEN NIWA

アンヌ=ソフィー・ピック氏にインタビューをしたのは、ランチタイムを過ぎたころ。同氏は「大好きな日本茶をカップに10杯以上も飲みました。日本人より日本茶を飲んでいると思います」とユーモアを交えながら、和やかな雰囲気で質問に答えてくれた。その日は早朝から大阪の市場を訪れていたという。

「新鮮な魚が揃っていて、どれもこれも食べてみたいと思いました。あとは滞在中にたこ焼きも食べたいです」

市場の魚から大阪のソウルフードまで。そんな言葉の端々からは、アンヌ=ソフィー・ピック氏の尽きることのない食への探究心がうかがえた。そして、日本の食文化は長きにわたり、同氏の創作を支える特別なインスピレーションの源となってきた。

「父が1980年代に辻調理師専門学校で講師を務めていて。そのご縁もあり、過去には創業者・辻静雄さんのご子息が『メゾン・ピック』に研修にいらっしゃるなど、日本にも家族のように親しい友人がいます。日本はもちろん異国ではありますが、私にとってはとても身近な存在なのです。父のレストランを継いだ際には、食材や文化をはじめ、日本のさまざまな要素を創作に取り入れていこうと心に決めました」

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アンヌ=ソフィー・ピック氏/1969年、フランス南東部の都市ヴァランスで代々続く料理人一家に生まれる。1997年にレストラン『メゾン・ピック』を父から受け継ぐ。2007年にミシュラン三つ星を獲得。現在はヨーロッパとアジアを舞台に、自身の感性を映し出したレストランを数多く手掛けている。©TAITO ITATEYAMA

日本進出は、アンヌ=ソフィー・ピック氏が長年温めてきた夢。それを実現へと導いたのが、ディオールとの深い信頼関係である。

日本においての両者の協業は、2023年の関西国際空港を起点に、銀座や代官山の『カフェ ディオール』へと広がりを見せてきた。その歩みの先に誕生した『ムッシュ ディオール 大阪』は、同氏にとって国内初となるレストラン。今回のオープンについて、同氏は「ご褒美のような出来事」と表現した。

「初めて日本を訪れたのは21歳のとき。その日から私は日本に恋して、いつか自分のレストランをオープンする夢を抱き続けてきました。今回、その夢をフランスのエレガンスを象徴するディオールのメゾンと共に実現できたことは、私にとって大きな誇りであり、何よりの幸運です」

ディオールの世界感を表現したフルコース

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「レトワール ドゥ メール(LʼÉtoile de Mer)」。ウニのババロアのなめらかな舌ざわりと、そばの実のクリスピーな食感が印象的。磯の香りと、ピック氏が「初来日の際に印象に残ったそば茶の香り」が重なり合い、豊かな余韻を生み出す。©LARA GILIBERTO

夢の舞台のために、アンヌ=ソフィー・ピック氏が準備したのは、ランチに3品またはスペシャリテを含む4品、ディナーに5品のコース。前菜、メインディッシュ、デザートにはそれぞれ選択肢が設けられている。では、そのラインアップは、どのように構築されたのか。

「ディオールの世界観を理解するため、パリにあるアーカイブへ何度も足を運びました。そこにはオートクチュールをはじめ、ディオール氏の活動を物語る数々の資料が残されています。その世界観は、一度訪れただけで理解できるようなものではありませんでした。そこで得たあらゆる気づきが、レシピのアイデアになっています」

「ディオール氏が海の生き物に興味を示していたことがわかったので、ヒトデをイメージした料理を作ったんです」と続ける、アンヌ=ソフィー・ピック氏。

そのメニューの名は、ディナーの前菜「レトワール ドゥ メール(LʼÉtoile de Mer)」。そばの実やみかん、ディルなどがトッピングされた、そば茶とウニのババロアだ。クリスチャン・ディオール氏が愛したグランヴィルのビーチをイメージしたヒトデ形の盛り付けが、ゲストの高揚感を自然に引き上げる。コースの序章を飾る料理としてふさわしい、創造性豊かなひと皿だ。

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    ピンセットを使い繊細に盛り付けられる料理には、見た目からもディオールに通じる美意識が宿る。©LARA GILIBERTO
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    メインの「ル カレ(Le Carré)」。ボロネギのコンプレッションの上に、直火で焼き上げたサバ、キャビア、エディブルフラワーなどが美しく重ねられている。©LARA GILIBERTO
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    アンヌ=ソフィー・ピック氏のアイコニックな料理「レ ベルランゴ レオパード(Les Berlingots Léopards)」。イタリア料理のラビオリをフレンチの視点から再解釈したひと皿。パスタにプリントされたレオパードは、クリスチャン・ディオールの永遠のミューズ、ミッツァ・ブリカールへの美食のオマージュ。©LARA GILIBERTO
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    デザートの「ル ミルフィーユ ブラン(Le Millefeuille Blanc)」は、サクサクした生地とジャスミンのジュレ、ヨーグルトのクリームを重ねた7層仕立て。一番上の層には、アイコンのパフューム「ミス ディオール」の千鳥格子柄を採用。©LARA GILIBERTO

「レ ベルランゴ レオパード(Les Berlingots Léopards)」と「ル ミルフィーユ ブラン(Le Millefeuille Blanc)」の二品は、アンヌ=ソフィー・ピック氏の代表作をアレンジした料理。同氏によると、クリスチャン・ディオール氏も『メゾン・ピック』に足を運んでいたといい、その縁に思いを馳せながら味わうことで、一皿に込められた物語がより深く感じられる。

「私の祖父とディオール氏は同世代で親交がありました。『メゾン・ピック』にもお食事にいらしたことがあります。フランスならではのガストロノミーを深く理解し、愛してくださる、大変な美食家だったんですよ」と、アンヌ=ソフィー・ピック氏は思い出を振り変える。

フランス料理の伝統技法に、ディオールの世界観、そして日本の食文化。その三つの要素が見事に響き合うコースは、フランスの庭園を表現したエレガントな空間のなかで味わうことができるのも魅力だ。

庭園のような空間が味わいを引き立てる。

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『ハウス オブ ディオール 心斎橋』のデザインを務めた建築家ピーター・マリノ氏が、レストランの内観も担当。©DEN NIWA
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『ムッシュ ディオール 大阪』のために用意された白いラウンドプレートなどのテーブルウェアも、空間全体の世界観を構成する重要な要素。©DEN NIWA

レストランは、クリスチャン・ディオール氏が愛した庭園へのオマージュとして構想されたエレガントな内装。メインルームのほか、2つの個室も備えておりプライベートな食事にも対応する。ワインセラールームには、フランス産のワインとシャンパーニュを中心に、アルコールが約400種類、1400本も取りそろえられている。

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調理風景を間近に見ながら食事をできるシェフズルーム。©DEN NIWA
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壁一面にボトルが並べられたワインセラールーム。©DEN NIWA

そうした空間演出とドリンクのセレクトは、アンヌ=ソフィー・ピック氏の芸術的な料理芸術的な料理を引き立て、食体験にさらなる奥行きをもたらす。

「私はディオールの美的なクリエイションを尊重しながら、この絆やつながりを築いてきました。ディオールのために創作した料理の数々ではありますが、同時に私らしさも感じていただけるはずです。⽇本との出会いがあったからこそ、今の私が、そして、今の私の料理があるのだと思います」

アンヌ=ソフィー・ピック氏の言葉通り、『ムッシュ ディオール 大阪』のコースからは、日本との出会いを糧に育まれてきた同氏によるSuffusion(浸透)の哲学と感性が伝わってくる。美食を知る大人たちをも魅了する唯一無二のレストランとして、『ムッシュ ディオール 大阪』は、旅の特別な目的地となる一軒に違いない。

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『ハウス オブ ディオール 心斎橋』外観。©DEN NIWA

ハウス オブ ディオール 心斎橋 レストラン『ムッシュ ディオール 大阪』
所在地:大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-9-17
営業時間:ランチ 11:3015:00L.O. 13:30)、
ディナー 18:0022:30L.O. 20:00
定休日:月曜日・火曜日
予約:https://www.tablecheck.com/ja/monsieur-dior-osaka/reserve/landing
URL:https://www.dior.com/ja_jp/fashion/boutique/house-of-dior-shinsaibashi

Text:AERA STYLE MAGAZINE

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