紳士の雑学

ビールの醸造工程を学ぶ
クラフトビールの楽しみ方 第2回

2018.05.02

ビールの醸造工程を学ぶ<br>クラフトビールの楽しみ方 第2回

クラフトビールの定義が伝統的な醸造法を学んだうえで、独自に進化させたものであることは第1回に記載したとおりであるが、伝統的な醸造法がいかなるものであるのか、それを知るためにはまず、ビールの一般的な醸造方法を知らなければならない。

1.麦芽の破砕
麦芽を破砕機にかけて破砕する。ちなみに、麦芽とは大麦に水を加えて少しだけ発芽させたもの。この段階で乾燥させて成長を止めたものが麦芽だ。英語ではモルトと言う。

2.糖化
湯に破砕した麦芽を加え、酵素の働く温度帯を保ち、でんぷんを糖に変える。
ちなみに、麦には発酵に必要な糖分が含まれていないのだが、麦がもつ酵素によって自らを糖分に分解することができるという特性がある(糖化という)。

3.ろ過
糖化がすんだら、澄んだ麦汁と麦芽かすに分ける。麦芽の殻を自然のフィルターとして、麦汁をこす。

4.煮沸
麦汁を煮沸し、ホップを入れて苦みや香りをつける。
ホップとは、アサ科の植物で日本では「セイヨウカラハナソウ」(学名はフルムス・ルプルス)と呼ばれる蔓性の植物。ビールの原料として使われるのは、ホップの受粉前の雌株がもつ毬花(きゅうか)。その中に眠る黄金色の粉「ルプリン」が、独特の香りや爽やかな苦味、泡立ちをビールにもたらす。

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5.酵母が活動できる温度帯に麦汁を冷却する。
このときの温度帯が16~25℃くらいのものが上面発酵、10℃以下くらいのものが下面発酵と2つのタイプに分かれる。

6.酵母添加
酵母を加え発酵させる。加える酵母の種類により、発酵の温度や時間が異なってくる。

7.発酵
発酵すると麦汁中の糖分はアルコールと炭酸ガスに分解され、約1週間で若ビールになる。
上面発酵の場合は16~24℃で3~5日程発酵させ、下面発酵の場合は10℃以下で7~10日程、発酵させる。

8.熟成、貯酒
若ビールを1~3カ月ほどタンクの中で熟成させ、味わいや清澄度を整え、瓶や缶に詰める。(酵母をろ過する場合や熱処理する場合もある)

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「以上が一般的なビールの醸造過程です。発酵の温度帯によって、ラガー(下面発酵)とエール(上面発酵)に分かれ、さらに使用する麦芽の焙煎度合いやホップの種類などによって、さまざまなタイプのビールが造られていきます。ビールというものは、そのほかの酒に比して、まずはレシピありき。最初に完璧な設計図を描いて醸造するもので、ワインや日本酒のように、自然にまかせた発酵ということはないんです。だからこそ、ビールの造りの流れを知ることは、ビールのタイプや味わい、楽しみ方を知るうえでとても重要になるんですね」と藤原さんは言う。

<<第1回はこちらから

  第3回はこちらから>>

Photograph : Reiko Masutani, Makiko Doi
Text : Hiroko Komatsu

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