旅と暮らし
やはりパーク ハイアットの洗練度は格別!
バンコクの私的トップ3に入るアートなホテル
2018.05.11
![やはりパーク ハイアットの洗練度は格別!<br>バンコクの私的トップ3に入るアートなホテル](http://p.potaufeu.asahi.com/78c7-p/picture/12517606/286168d2f85557552ca3a75ed7616a7b.jpg)
Park Hyatt Bangkok(パーク ハイアット バンコク)
タイ/バンコク
昨年の5月12日、「パーク ハイアット バンコク」が満を持してオープンした。私もミーハー心がくすぐられ、翌6月に予約を入れようとすると連日満室。仕方なく、10階のバーにだけ行ったところ、その印象は「意外と小ぢんまりしてておとなしいな」というもの。ところが半年後に実際に泊まってみると、そのひと握りの印象が大きく覆されたのだった。
端的に言うと、「パーク ハイアット バンコク」はレセプションを通ってから深みを増していく。進むごとに盛り上がるホテルだ。それでは、さっそくその概要を紹介する。
![2](http://p.potaufeu.asahi.com/26fe-p/picture/12517643/156005c5baf40ff51a327f1c34f2975b.jpg)
ホテルが入るのは、バンコクで最も豪華な複合ビルのひとつ「セントラル・エンバシー」の上層階。面白い形をしたビルで、パゴダ(仏塔)をイメージしているため屋根は三角。ビル自体がアシンメトリーで、ねじったような構造となっている。さらに膨大な数のアルミパネルがビルを覆い、かなり近未来的。バンコクの奔放さを感じる攻めたデザインだ。
そしてとても便利なのが、このビルがバンコク・スカイトレインのプルンチット駅に直通していること。渋滞がすさまじいバンコクでは、駅直通のホテルはそれだけでメリットがかなり大きい。プルンチット駅のあるスクムウィット線は、グルメどころの多い駅と1本でつながっており、ディナーにもすんなりと行くことができる。
ビル内には高級ブランドのショップや飲食店が多数入り、ホテルの構成は下記のとおり。
1階 エントランス
9階 ラウンジ「Living Room」、ダイニング「Embassy Room」
10階 レセプション、「The Bar」
12~33階 ゲストルーム(計222室)
34~36階 「Penthouse Bar+Grill」
![3](http://p.potaufeu.asahi.com/80f5-p/picture/12517644/799bad5a3b514f096e69bbc4a7896cd9.jpg)
高い天井の豪華絢爛なホテルのロビーと違い、1階のエントランスも10階のレセプションも比較的コンパクト。それが奥に進むほど広くなり、意図的にそういう造りにしていると、同ホテル広報のステファニーさんは話す。
「入り口やレセプションをこのようなサイズにしているのは、ゲストのみなさんに家に着いたときのような、ほっとした気持ちになっていただきたいからです。ホテルではあるけれど、距離感の近さや温かさを意識しています」
![4](http://p.potaufeu.asahi.com/461b-p/picture/12517645/d0096ec6c83575373e3a21d129ff8fef.jpg)
実際にレセプションを通ると、スタッフとの距離は必然的に3mくらいとなる。そのほうがあいさつもしやすいし、あいさつを交わしているうちに、バンコクについてのちょっとした世間話もしやすくなったりする。それに、何か用件があったとき、こちらから声をかけなくても目で察して「どうしましたか?」と反応が早い。
また、レセプションのカウンターの後ろにあるアートがとても美しい。花のペイントの上にビジューの蝶が舞い、同じ作家の作品が反対側の壁にもしつらえられている。そんなレセプションを進むと、突き当りにはタイの現代彫刻家による白いブッダを思わせる彫刻が鎮座。メディテーションをテーマにしたこの像は、静かながらも存在感が強かった。
それらを筆頭に、「パーク ハイアット バンコク」では歩くごとにさまざまなアートに出合うことができる。アートに力を入れているホテルは数あれど、ここは次元が違う。ギャラリーを目指しているのかと思えるほどに、ダイナミックで印象的な作品が勢ぞろいし、猛烈にひかれて時間を忘れて見入ったものもあった。人それぞれに、忘れられない作品がひとつは見つかるだろう。
![7](http://p.potaufeu.asahi.com/e989-p/picture/12517648/fe5df232cafa4c4e0f1a0294418e5660.jpg)
![8](http://p.potaufeu.asahi.com/79e4-p/picture/12517649/8cda81fc7ad906927144235dda5fdf15.jpg)
作家の国籍はさまざまで、世界で活躍する日本人アーティスト・澤田広俊氏のインスタレーションはホテルのアイコンとしてメディアやSNSに多く登場している。圧巻なのが、1階から地下にかけて伸びる“Pagoda Mirage”という作品。数百もの円錐状の銅板が渦を巻くようにつるされ、上から見るのと下から見上げるのでとは表情がまったく違う。
同じく澤田氏による“Naga”も大作だ。こちらは9階の天井広範囲にまたがるインスタレーションで、その名はメコン川に伝わる幻のドラゴンを意味している。不規則な組み方なため躍動感があり、ドラゴンと聞くとそう見えなくもない。と、少し情報が入るだけでよりアートを楽しめるので、ぜひホテルに着いたらアートツアーのお願いを。解説があるかないかで充実度がだいぶ変わるはずだ。
話を昨年のバーに立ち寄った日に戻すと、そのときは帰国直前で滞在時間は1時間ほど。エントランス、10階の「The Bar」、レセプションを見たのみで、さらっと帰ってしまった。時間に追われ、アートを落ち着いて見る余裕も解説もなかった。再訪して改めて、エントランスにある2点の作品とカウンターの美しさにも気がついた。
部屋に泊まり、お風呂でリラックスして、手ぶらで楽しむアート鑑賞は特別な時間だ。その余韻からか、10階から9階に下りる階段もまた、アートに見えるほどドラマチックなものだった。時間帯により光の差し込み方が変わり、白い石壁にはタイの国花である蓮が彫られている。なんとその蓮は水圧で彫ったといい、部屋のバスルームの石壁にも同じ蓮があり、とてもぜいたく!
バスルームの窓からはルンピニー公園の緑を望み、アメニティはニューヨークの香水ブランドであるLE LABO。いい香りに包まれながら、ベッドに寝転ぶと、寝室の窓の外にも同じ景色が広がっている。部屋はシンプルで洗練されたなかにタイを感じさせるしつらえが細部にあり、安定のパーク ハイアット クオリティー。ただの無音とは違う、さらなる静けさがこの部屋にはあった。
![11](http://p.potaufeu.asahi.com/ca72-p/picture/12517652/62bf1edb36141f114521ec4bb4175579.jpg)
![12](http://p.potaufeu.asahi.com/3c4c-p/picture/12517656/8df7b73a7820f4aef47864f2a6c5fccf.jpg)
そして、部屋の静けさとは対照的に、34〜36階のダイニングフロアはきちんとイケイケ! バンコクに行ったら必須なルーフトップバーも設け、バーに行くまでの廊下には昔の飛行機やバイクのツールがショーケースに飾られている。古きよき時代の男のロマンと、現在の遊び人たちが出合っている雰囲気で、華やかながら品がある。バンコクの夜はやっぱり楽しいと実感する空間だ。
![14](http://p.potaufeu.asahi.com/261f-p/picture/12517659/edab7ba7e203cd7576d1200465194ea8.jpg)
チェックアウト直前、最初に行った10階の「The Bar」に行くと、やっぱりここも初回を上回る魅力があった。タイのフレーバーが効いたカクテルを飲みながら、ひと息ついたり、友人とゆっくりしゃべるには最適なバーだ。もちろん、ここもアートにあふれ、そのうちいくつかはレセプションにかけられた作品と同じ作家のもので、どうやら私はこの作家が好きらしい。前出のステファニーさんが言うように、家にいるような穏やかな気持ちをバーでも感じられた。
![16](http://p.potaufeu.asahi.com/123e-p/picture/12517663/85b6f89b41cae26786ac72365fff771b.jpg)
これまでバンコクのホテルには20軒以上泊まっているけれど、「パーク ハイアット バンコク」はトップ3に入るお気に入りだ。価格は1泊約3万円(Hotels.comによる5月中旬の価格)で、あの洗練された空間をこの価格で満喫できるとはお得に感じる。また寒くなったころに、2泊くらいおこもりしに行きたいと思っている。
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。
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